6. 暗いもの、黒い影

「小さな光りあり、消える針。

舞い上がる黒い埃、落ちる人の誇り。


気の遠くなる、勝鬨は悲鳴に変わる。

長引く戦いに疲れ、空に願う声に応え。

非力な手に持たれた奇跡の暴、新芽ミスティルテイン

会心の一撃で沈む葉っぱの泥陰でいいん


黄金の髪が靡き、

崩れない敵を崩す。

誰しもが、彼女をもう見くびらない。


その先に見える黄昏に染まる空。

落ちる太陽を背中に昇る火炎の影。

果てのない戦いに終わりを告げる、巨人の炎斧えんぷ

世界が終わる時に聞いた泣き声が響き、止まった闇の鼓動。


赤い髪が輝き、

燃えさない敵を燃やす。

誰しもが、彼女をもうからかわない。


あ!勇猛な..」


「違う、違うよ!バグナ!

なんで斧なんだよ!私は剣を使ったよ!なんで!」


バグナは私の方を振り向いて言った。


「ハハハ、でもみんなそう見えたと話していました。

私の目で見れたのは遠くから上がってくる火炎だけでしたね。

あ、それを実際見れなかったのは、本当に残念です。

しかし、このように語られる話があるのはいいことですよね」


バグナは自分の木樽ジョッキを持ち上げて言った。

依頼に参加していた冒険家たちも木樽ジョッキを手にし、大きな声で話しながら飲んでいた。

シャーリンは色んな人々に囲まれて楽しく食事をしていた。

その時、後片付けを終えた冒険家たちが旅館に入ってきた。


バグナは彼らを見て、再び木樽ジョッキを持ち上げて言った。


「ハイハイ、 お疲れ様でした!

さあ!自分のジョッキを持って、今日の勝利を喜びましょう。

生きていることに感謝し、使者シャーリンと炎斧フレアに!」


私は疲れた声で独り言を言った。


「あぁ、違うってば!もぅー!いいよ!」


騒がしい場所を抜け出してローレンのテーブルの方に行った。

ローレンはテーブルにもたれかかり、リンゴソーダをじっと見つめていた。


私はそんなローレンを見て言った。


「ローレン、塔の試験はどうだった?」


「あぁー、疲れたよ」


「でも一日で行ってきたんだね」


「聞いて、フレア。相手はリントンとその弟子が出てきたんだけどね。

あ、リントンはノーブルをライバルだと思っている魔法使いの一人なんだよ。

ノーブルは全くそう思っていないのに、自分たちで勝手にノーブルのライバルだと言い張る愚かな奴らがいるの。

とにかく、向こうの弟子は見た目は弱そうで、へなへなしてたの。

最初は私にぺこぺこ笑いながら挨拶してきたから、いいやつかなと思ったのに。

さすがその師匠にその弟子だよ!どんなに卑劣だったか!

うっ!考えるだけでまた頭にくるな!」


ノーブルは食べ残った長い骨を立てて見せながら言った。


「あの塔は不思議な事に、最後の階に辿り着くほど、聞こえなくなるんだね。

魔法使いとしては辛くなる。だから魔法道具に頼る人も出るよ。

それが卑劣とは言えないよ、ローレン。

それがその人の生き方だからね。みんな自分と同じだと思うな。

でも君はよくやったね。そんな環境でも自分に負けず、新しい魔法も作ったしね」


「 ふん!それより、そんな無茶なことを言ってきて、本当にざまあみろだよな。

ハーグビルクとアルダフォードが戦うのに、ハーグビルクの側につくなんて。

シードホートの魔法使いがいつ誰のの立場を支持した…」


「ローレン、その話はこの場でするものではないね。

それより、ラウペイを派手に倒したのを見られなかったのは残念です、フレア。

火の魔法なら私も少しは自信がありますが、どんな魔法だったのか気になりますね。

今日皆さんが持ってきた金属を明日から見なければならないので、私は早く帰らなければなりませんね。

そして、トニー先生がみんなに贈り物を用意していると言っていたので、

ローレン、明日トニー先生の所に行ってみてね」


ローレンはテーブルにうつ伏せになって手を挙げて話した。


「はい、はぃー」


私も眠くて徐々に目が閉じていった。


「そういえば、あの金属は以前は出てこなかったらしいね。

ラウペイを倒したら他のヨツンも消えて、ラウペイがいた場所は黒くなったんだ。

魔法使いたちもそれが不思議で、全部持って帰ると言ってさ。

はぁー、それらを採集するのがもっと大変だったよ。

いや、休むこともできずに暗くなるまで動いたんだよ。

はぁー、それに帰りながら…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シードホートは大きな円の形をしているけど、魔法使いの塔を囲んでいる断崖によって分かれているんだ。

実際に魔法使いじゃない人たちが住んでいるところは三日月の形をしている。

そして両端に行けば行くほど暗くなるよ」


私は何か聞き間違えたかなと思い、聞いた。


「暗いって? それはどういう意味?

はぁー、まだ眠いなー」


ローレンは私たちを見て言った。


「その言葉通りだよ。シードホートの闇なんだ。

魔法使いに憧れる人たちもシードホートに集まったけど、

魔法使いに嫉妬と怒りを持つ人たちも集まっているんだ。

彼らは魔法使いの塔に入れないから、シードホートの隅に集まってきたみたいだよ」


シャーリンが話た。


「どこにもそういう場所はあるものですね」


ローレンは話た。


「そもそもこの街は勝手に作られたものだもん。

アルダフォードが嫌いで逃げてきた人たちや、

魔法使いがいらないと捨てた物を拾って売り始めた人たち、

ここが安全だと思って集まった人々がこの街を作ったんだ。

だから、魔法使いたちは関心がないんだよ」


私たちは泊まっている旅館から出て、魔法使いの塔の方向へ階段を登っていった。

すると、そこにはまた広い広場があり、そこから下町がよく見えた。

私たちはローレンの話を聞きながら、その広場を通って魔法使いの塔に向かった。

広場の真ん中には巨大な木があり、その木の裏にはいくつかのトンネルが見えてきた。


「えー、あのトンネルから魔法使いの塔に行くの?」


「そうだね。このトンネルがあるから、誰もが簡単に魔法使いの塔に入ることができないんだ」


ヘルが話た。


「強い魔法がかかっているのか?」


ローレンはトンネルの前に立っている巨大な石像を指差して言った。


「まあ、そういうことかな。あれは全部ゴーレムだよ。

魔法使いに敵意を持った人たちが近づくと動くんだ。

だから誰でも入ることができない。

トンネルの中にもずっと前に作られたゴーレムがいるらしいよ。

どこにゴーレムがいるのか、それを全部知っている人はいないらしい。

魔法使いの中でも、ゴーレム好きな人たちがマップを作っているとは言ってたけどね」


ローレンに沿ってトンネルを通りながら、私は気になって聞いた。


「でもトンネルは一つじゃないよね。 みんな違うところに繋がってるの?」


ローレンが答えた。


「いや、今は同じ場所に繋がっているね。

しかし、最初にシードホートの魔法使いたちが集まった時には、

トンネルはそれぞれの魔法使いを象徴していたんだ。


《破片のビドルフ》、《現象のビルメイド》、《応用のボルバフ》、《意味のスバトフディ》。

今はあれこれ混ざっていて、個別の研究テーマはあまりないんだよ。

トニーおじいさんだって破片の研究もするし、応用と現象も研究しているからね。

あ、もうすぐだ」


トンネルを塞いでいた木のつるが消え、明るい光がトンネルの中を照らした。


「うわぁ、眩しい」


シャーリンが言った。


「あら、綺麗ですね。花もいっぱいで、いい香りですね」


「まあ、ナンナの魔法を研究している魔法使いたちがこうやって作ったんだよ。

ここは様々な研究室がある建物だよ。

この建物を抜けてさらに中に行けば、【光の塔】に着く。

そこにトニーおじいさんの研究室があるんだ。

学校に通っていた時はよく来たよ。

この建物の東口からも繋がっていて、そこから走っていつも行ってた」


建物を通って行く時に、遠くから見たこともない何かがこちらに向かって来ていた。


「あ、あれもゴーレム?」


「ああ、あのゴーレムはここをずっと回っているんだ。

こっちから攻撃しなければ何もしてこないよ。静かだよね。

まだシードホートの魔法使いたちには早い時間だから、人があまりいないんだ」


広い空間にはいろんなものが置きっぱなしだった。

そこを通ってもっと進んだら、植物に囲まれた空間で何かをしているバーバラが見えた。


私はバーバラに挨拶した。


「ああ、バーバラだ。おはよう!何してるの?」


バーバラはクマのぬいぐるみを持ち上げながら言った。


「あ!フレア!おはよう!エイディーが昨日ケガしちゃってね。

だからもっと前より強く、可愛くしようと思ってるの。

それと、昨日君が使った魔法が気になってるんだ。

見せて欲しいんだけど。なぜラウペイがあんな金属を生み出したのか、

あなたの魔法と関係があるのかも知りたくて…」


ローレンはバーバラの話を遮って言った。


「バーバラ、私たちは今、トニーおじいさんのところに行くの。

悪いけど、忙しいからね!」


バーバラはすぐに植物の椅子に座り、植物に囲まれながら話した。


「ふん!最年少の魔法使いさん、あなたが来る前は私が最年少の魔法使いだったのよ。

まあ、いいわ。私も忙しいから!」


私はバーバラに手を振って挨拶したが、バーバラは植物を動かしてこちらを見ていなかった。


「そういえば、バーバラは魔法石を三つも持ってたよ。

それもあのクマにつけてね。

ローレン、どうやってあんなに持ってるの?

普通、一つ持つのも難しいんじゃないの?」


「バニソフスタード」


「うん?バニ、何?」


「魔法学校に入って最初のテストは、

【バニソフスタード】に行って声が聞こえる魔法石を探すことなの。

声が聞こえた魔法石に【名前を聞く魔法呪文】を使って反応があったら、その魔法石は自分のものになる。

もちろん、卒業できないと返せなければならないけどね。


そして、先代の魔法使いが認めた者たちには、

自分が持っていた魔法石を与えることができる。

もちろん、その魔法石で【名前を聞く魔法呪文】を使って反応がなかったらダメだけどね。


誰かに与えることができずに亡くなった魔法使いたちの魔法石は、バニソフスタードに戻される。


そしてもう一つのルールは、学生たちはいつでもバニソフスタードに行って音を聞ける魔法石があれば、試験を申請して通過した場合、その魔法石を所有できるようになるの」


「えぇー、分からないけどなんか凄いね」


「つまり、バーバラは三つの音が聞こえること」


「え、凄いじゃん!ローレンは?バニソフスタードに行ってみた?」


「あそこ、うるさいから嫌いなんだよね。

そして、そこに行かなくても私は三つは持ってるよ」


通路を抜けて回廊に出ると、そこには広い庭園が見えた。


ローレンが言った。


「この中庭でよく遊んだな。あの木は《グレジトレ》と呼ばれてるの。

初代シードホートの魔法使いが集まった場所なんだよ。

そこに登ると怒られるけどね。

いいの、よくあそこの上で昼寝してよ。

スバプニールもあの木の上で寝ている時に音を聞いて作ったの」


シャーリンが言った。


「ここは本当に気が楽になりますね。いい所ですね、ローレン」


ローレンが嬉しいそうに言った。


「そうでしょう?私もここが好きだったんだ。

最初はこの木の側に小さな家を建てて、それが光の塔になったらしい。

ビドルフが旅をしながら、魔法に才能のある子供たちを連れてきたけど、

ビドルフはずっと旅をしていて、子供たちの世話はスバトフディが見たんだ。

学校ができて新しい研究室が必要になり、新しい建物を作ろうとした時に、

この木を残すために光の塔を囲む形で建物を作ったらしいよ」


私たちは中庭を通って、ローレンの案内で光の塔に入った。


「え?ここは扉がないの?」


「あるよ、見えないけどね。魔法使いが持ってる《グレムニル》に反応して消えるんだ。

先に通ったトンネルも同じ方法で動いてるよ」


ローレンがもっと塔の中心に進みながら言った。


「トニーおじいさんがいる場所は、ここからまた上に上がらなければならないの」


「上? 」


周囲を見回したが、建物の中には階段は見えず、上を見上げると明るい光だけが降り注いでいた。

私は眩しくて目を細めて言った。


「ここからどうやって上に上がるの? 階段も見えないのに」


ローレンは何かを待っているように輝く空だけを見ていた。


「ふーん、時間になったと思うけどな」


「うわぁ、あれはまた何?」


腕がついている広い石の板が壁をつかんで降りてきた。


ローレンは板に乗りながら言った。


「ほら、この肩に乗って」


私は板に乗りながら聞いた。


「肩?この板を《肩》って呼ぶの?」


「これらも全部ボルバフが作ったの。理由は分からないけど、『肩に乗れ』と言ったらしい。

それ以来、みんなこれを肩と呼んでるんだ。あ、着いたよ。

トニーおじいさんが何をくれるかな!早く見たいよ!」


その時、私は私たちの前に現れた黒い影を見て驚いて叫んだ。

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