15. 光り輝く広場

シャーリンが堂々と歩いてくるその後ろで、

通路ではシャーリンと私を見てどうするか分からずに戸惑っているフレアの姿があった。


私の魔法で跳ね返されたドラウグは、よろめきながら体を起こして周りを見回した。


そして、ドラウグは獣のように四つ足でうつ伏せになり、近くにいるシャーリンに向かって走り始めた。

ヘルはそれに気づいて走り出したが、ドラウグの方が速かった。


全身を飛ばしたドラウグが鉤のように鋭い爪でシャーリンを攻撃するその瞬間、

シャーリンの頭上で輝く何かがそれよりも早くドラウグを斬り裂いた。


全身が半分に切断されたドラウグは、短い悲鳴をあげながら黒いほこりとなって空中に舞い散りながら消えた。


「はぁ、はぁー、さー、先の光は、あれは何だ?

シャーリン!大丈夫?」


私とヘルに攻撃しようとしていたドラウグたちは一斉に立ち止まり、シャーリンに顔を向けた。

彼らは耳障りな悲鳴を上げながら体をひねり、悲鳴を止めるとシャーリンに向かって素早く動き始めた。


「シャーリン、逃げろ!フレアの方に帰れよ!」


しかし、シャーリンは揺るぎない表情で私たちに向かって歩き続けた。

周りから自分に向かってくるドラウグは見向きもしないで、視線は常に私たちに向けられていた。

シャーリンが私たちに近づくほど、彼女の体からは明るい光が漏れ、彼女を包み込んだ。

そして、シャーリンに飛びかかったドラウグは輝く剣に斬られ、黒いほこりとなって消えた。


通路に立っていたフレアも、いつの間にか自分の剣を持ち、

大声を上げながら私たちに向かって走ってきた。

フレアはドラウグたちを突き抜けて、私たちの側にたどり着いた。


フレアは震える手でやっと剣を握り、笑いながら話した。


「はぁー、はぁー、最初の一歩が怖かったけど、二歩、三歩と進むうちに思わず走っていたよ。

ごー、ごめん、とても怖かった。でも、今は違う。

みんなと一緒に戦うよ。 わ、私も、もう立派な冒険家なのかな?」


シャーリンはフレアを見ながら話した。


「フレアは初めて会った時から、人を助けるために先頭に立っていた立派な冒険家でしたよ」


私は疲れ切った表情でフレアを見ながら話した。


「ふぅー、そうだね。嘘をついて冒険はせず、逃げる冒険家がもっと多いからね。

立派だよ。立派!」


私はシャーリンを見ながら話した。


「シャーリン、武器も持たずに冒険をした理由がこれなの? 一体どんな魔法なの?

私が知っているバルダーの魔法には、そんなものはなかったよ」


シャーリンは微笑みながら話した。


「そうですね。信じてただ歩くだけです。

あ、でもどんなことがあっても両手を合わせて祈る気持ちで歩き続けなければなりませんね。

私を守ってくれる力を信じることです。それは私の力ではなく神の力で戦う事です。

そちらの方が絶対強いですからね。簡単ですよね?」


私は想像してみて、あきれたように言った。


「はぁーは、そんなの、私はできない気がするな」


攻撃される恐怖で自分も知らずに、自ら何か手を出すと思った。


私は周りを見ながら話した。


「そして、あまり、減ってないな」


あるドラウグは体が壊れたが、少しずつ修復されていた。

切り落とされた自分の頭を拾い上げて再びこちらを見ながら動き始めるドラウグも見えた。

回復して動き出そうとしているドラウグの悲鳴が広場を覆った。


ヘルがドラウグに剣を向けながら話した。


「やっぱり、この剣では死なないみたいた。私の力では時間稼ぎしか出来ない。

しかし、私はいつまでもできる。ローレン、考えるんだ」


シャーリンは私たちに向かって話した。


「ここで止まっているわけにはいきません。 進みましょう。

黒岩の中を歩いていた人たちが大きな光を見て、

死の陰の地に住む人たちに光が…」


シャーリンは目を閉じてその場にひざまずき、呪文を唱えた。

そして、彼女の体から漏れた光は消えてシャーリンの手が光り始めた。


ドラウグは苦しそうにもがき始め、

四つん這いになったり走ったりして私たちに向かってきた。


私は本能的にシャーリンを守らなければならないと考えだ。

私も風の魔法でドラウグを吹き飛ばして言った。


「この、シャーリンを狙ってる!」


ヘルが言った。


「動きが早くなってる」


ヘルは以前よりもっと素早く、こちらに来るドラウグを押しのけていた。

しばらくためらったフレアは、左腰につけていた革の袋に手を突っ込み、

赤い石を取り出して剣の剣身と柄の間に挟み込んだ。


フレアは深呼吸をして、震える声でゆっくりと話した。


「はぁー、は、果てしない火炎。 果てしなー」


フレアは目を閉じて深呼吸をしてから目を開けて叫んだ。


「果てしない火炎、ひげの熱い懐から広がり、

私の敵の前で、彼らを炎の舞に引き入れ」


フレアが話し始めた瞬間から石が燃えるように輝き始めた。

そして、ドラウグに向かっていた剣の刃は赤く染まり、小さな炎が起き始めた。

フレアの言葉が終わると、小さかった炎は剣の先から伸びながら巨大になり、

近づいてくるドラウグたちを襲って燃やした。


(ドラウグを燃やしてる。燃やせるんだ)


その力に引かれるようにフレアの体もふらついた。

ドラウグを炎が襲うたびに、悲鳴と燃える音が混ざり合い、緑色の壁が赤く染まった。


ドラウグは燃える木のように、その場で崩れ落ちていった。


「燃えてる」


フレアは剣をドラウグに向けて振り回しながら、かろうじて話した。


「へ、へぇーへ、こ、これが私の最後の冒険、かもしれないからねーー。

これが私の最後の最後だよ!」


フレアの剣から出る炎は蛇のように踊りながらドラウグを燃やした。

その力に耐えるためにフレアは歯を食いしばって全身で耐えた。


ヘルは自分の剣でドラウグを倒せないことを知ってからは、

私たちに近づこうとするドラウグを順番に押し出していた。


ヘルはドラウグの頭を切ったり、足を切ったりして、

彼らが再び動き出すまでの時間を稼いでいた。



私は目を閉じて深くため息をつき、

両手を組んでから両腕を持ち上げ、そして両手を広げた。


その瞬間、私たちを取り囲んでいたドラウグの足元から赤い火炎がうごめき、広場の天井まで覆った。

ドラウグは火炎に押し流されたり、その中で動けなくなった。


フレアはやっとのことで剣を握り、ぼんやりと私を見つめた。


私はフレアを見ながら言った。


「ふーう、これで少し時間が稼げるよ」


遅いが徐々に火の壁を通過して歩いてくるドラウグはヘルが再び火の壁の外に押し出したり、フレアの剣によって燃えて消えた。


しかし、ドラウグは遅いが徐々に火の壁を通過して歩いて来た。


(ふー、やっぱり、燃やせないのかー)


火の壁を通過したドラウグはヘルが再び火の壁の外に押し出したり、フレアの炎で燃えて消えた。


フレアが息を切らしながら話した。


「はぁ、はぁ、もう近づかないなーー。

ん?うっ!何してる」


ドラウグは火の壁に近づくことができず、悲鳴を上げ始めた。

そして、一斉にすべてのドラウグが口から闇の煙を吐き出し、火の壁を押し出そうとした。


(うっっ)


闇の煙は火の壁を押しのけ、火は消えつつあった。


(ふーう、やれる。大きい、強い火を想像しよう)


しかし、闇の煙は火の壁を越えて弱った壁を通って再びドラウグが入って来た。


「はぁ!させるか!」


フレアは剣を振り回しながらドラウグを燃やした。

しかし、フレアの炎も弱まり、徐々に炎が消え始めた。


「また戦える!」


フレアは炎が消えてしまった自分を剣を振り回しながらドラウグを攻撃した。

ヘルもドラウグを攻撃してできる限り、火の壁の外に押し出そうとした。

死の煙にめまいを感じた瞬間、私は燃え上がる巨大な渦巻きを想像した。


(やってみる。今回はやれるよ)


震える両腕にさらに力を入れて空に持ち上げた。


消えかけた火は闇の煙を巻き上げながら再び大きくなっていった。

そしてすぐに、巨大で渦巻く火炎の壁がドラウグも飲み込み始めた。

息が喉まで上がり、熱い火炎で全身から汗が出た。

火炎の壁に飲み込まれ燃えるのを見たドラウグたちは、再び闇の煙を吐き出した。


(ふーう、今回はそう簡単に破れないよ)


火炎の壁に飲み込まれて燃えるのを見たドラウグたちは、再び闇の煙を吐き出した。


(ふーう、今回はそう簡単には破れないよ)


戦いの終わりが見えず、続くドラウグとの戦いに周囲の音が急に重く聞こえ、

すべてがゆっくりと動いているように感じられた。

そして私も思わず目を閉じてしまった。


全てが止まり、音も聞こえなくなり、暗闇の中、重たいまぶたの向こうから光が差し込んでくるのを感じた。


目を開けた時、今までここで起こったすべてのことが夢だったかのように、広場には私たち4人以外には誰もいなかった。

熱い空気とまだ消えつつある光のほこりと火花が、それが夢ではなかったことを物語っていた。


(ノーブル、私、できたよ)


私はいつの間に倒れていた。


「いたたぁー」


地面に手をついて起き上がろうとしたら痛かった。

床に横たわりながら震える手を持ち上げると、指先には血が滲んでいた。

体を起こそうとしたが動かず、あちこちが痛かった。

しかし、心はまるで興奮してこの広場を駆け回っているかのようだった。

周りを見回すと、みんなその場に座り込んでいた。

みんな無口だったが、顔は穏やかで目が輝いていた。


「ふーう」


少し時間が経って私はカバンを開けて小さな金属製の入れ物を取り出した。

そして金属筒のふたを開けて残っていた飴を取り出して皆に配った。

震える手で私が渡した飴を受け取ったフレアは、

初めて食べる味に幸せな笑みを浮かべながら石板の上に横になった。


シャーリンはかろうじて体を起こし、飴を受け取って口に入れた瞬間、

目を輝かせて初めて大声を出し、幸せそうだった。


いつものようにヘルにも勧めたが、

彼は初めて黙って飴を受け取り、何も言わずに食べ始めた。


私は座っていた赤黒い石板を触りながら言った。


「これ、血が固まったみたいだけど? だよね?」


ヘルは石板をよく見ながら話した。


「まるで供え物を置く祭壇のようだな。 ずいぶん前から使われていたのだろう」


フレアは驚いて立ち上がり、再び座った。


「ここで誰が死んだの?」


シャーリンは話した。


「まさか、ここでヒルダも供え物になったとか?」


ヘルがシャーリンを見て話した。


「古い血の跡だ。そんなことはなかったと思うね」


私は誰も答えられないことは知っていたが、気になってぼんやりと独り言のように話した。


「このすべてが何の関係があるんだ?

なぜこんなところにドラウグがいたんだ?

ふー、ここを通り過ぎたら、次は何が私たちを待っているのかな?」



私たちは体を落ち着かせた後、広場を見回った。

そして、通路を通って上に上がる螺旋階段を発見した。

私たちは注意深く階段を上ったが、驚いたことに階段の端には何もなかった。

しかし、そこで私たちはもう一つの黒い門を見つけることができた。


みんな覚悟ができたかのように、みんな黙って一歩踏み出して門に入った。


私は門に入って、これがどれほど繰り返されるのか、次はまたどんなことが待っているのか気になった。

昔、ノーブルが言ってた【冒険の興奮】について思い出した。


『私たちは冒険が終わらないことを願う。しかし、冒険は終わらなければならない。

そうしてこそ、また新しく、もっと成熟した冒険が私たちに近づいてくるんだ。

そうでなければ、いつの間にか【冒険】はうんざりして大変な【日常】になってしまうだろう』


永遠にこれを繰り返すことはできないだろう。

しかし、今はこれがずっと繰り返され、この【冒険の興奮】が消えるのが少し怖かった。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか別の場所に立っていて、

今までとは違う強い光で目を開けることができなかった。


何も見ることができなかったが、

空気の暖かさがこれまでとは異なるのは分かった。


そして、ざわめく音が聞こえて以前、どこかで嗅いだ美味しい香りが私の鼻をくすぐった。

光に慣れて目が見え始めると、どこかで見たことがあるような場所に立っていて、

遠くには見覚えのある黒い塔が見えた。

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