7. みすぼらしい神殿

「はぁーー」


ギルドから出た私の口からはため息しか出なかった。

ギルドの外で待っていたヘルを見ながら話した。


「同じシードホートの魔法使いだけど本当に相手するのは難しいな」


シャーリンはまだ怒って話した。


「そうですね。

蛇と会話する気分でした。

ローレン。

ここから北の森の湖まではどのくらいかかりますか?」


私は意図してなく買ってしまった魔法道具を空に高く持って底面を見た後にカバンへ入れながら話した。


「シャーリンとフレアは行かなくてもいいよ。

もし捕まった人たちが見つかるなら連れてくるね。

《ドラウグ》が本当にいたら危険なことになるかもしれない。

悪いけど、あなたの依頼よりギルドの依頼を優先しなければならないの」


シャーリンは全く平気そうに話した。


「私はアルダフォードからここガングラードまで一人で来ました。

自分の体は自分で守ることができます。

戦う時にはちゃんと戦えます。

ヒルダを連れて行った人たちと関連した手がかりを探すこともできるし、

もしかしたらその子を探すこともできるじゃないですか?

それは私の仕事でもあります。

私も行きます」


私はびっくりして聞いた。


「え?!一人で?

騎士たちの護衛もなく ここまで一人で来たの?」


バルダーの騎士たちは初代王の強さに憧れてバルダーの魔法使いとは

また違う方法で自分たちを鍛えた人たちだ。初代王以後にアルダフォードの王は

このように自分を鍛えた者の中で推戴された者たちが競合して王が決定されて王の象徴である《ランドグリッド》を受ける。


《ランドグリッド》は初代王が使用したとされる大剣である。

その剣は白く美しい大きな大剣で多くのドラコンを倒し、勝利の象徴になってる。

騎士たちはその剣に相応しいものになる為に鍛錬をしてる。


そんなバルダーの騎士たちの任務の一つとしてバルダーの魔法使いたちを守ることがある。ところが騎士たちの護衛なしにここまで一人で来たということは理解できないことだった。


私は慎重に尋ねた。


「シャーリン、アルダフォードで何かやったの?」


シャーリンは知らないかのように首をかしげて答えた。


「どうでしょうね」


フレアは私とシャーリンを見ながら自信満々話した。


「ふむー、私も最後まで一緒に行きたい。

きっと役に立つよ。

人探しもできるし、道案内もできるよ。 北の森で湖を探すのも任せて!」


シャーリンが話した。


「はい、ありがとうございます。

フレア。ローレン。いいですよね?

みんなで一緒に行きましょう」


空は青い藍色に変わり、暗くなって空気も冷たくなり始めた。

私は空を見ながら話した。

「お腹空いたなーー、どうしよう」


フレアが話した。

「オードの家に行こう。そこなら私が知ってる冒険家に湖について聞いて見るよ」


私はよだれを垂らしながら話した。

「そうしようかな。オードの家の名物も気になってたしね」


私たちは空腹を満たすためにオードの家に戻った。

昼の出来事のせいか、私たちが再びオードの家に入った時はうるさかった人々がしばらく静かになった。しかし、すぐにまた関係ないかのように騒ぎ始めた。


昼に来た時より『リオスカシ』がもっと明るく輝いて軽快な音楽が流れていた。

昼とは違って美味しそうな匂いが私の鼻をくすぐった。


「わーいい匂い」


周りは気にする暇もなく私たちは隅っこに座って食事をするために従業員を呼んだ。

冒険家たちは村を離れるとまともな食事ができないので出る前には十分な量の食べ物を食べる。


私は従業員に聞いた。


「オードの家で有名な食べ物を食べたいですよ。

あれ、あのテーブルで食べるものは何ですか」


私たちはまるで最後の食事でもあるかのようにたくさんの食べ物を注文した。

ある人には実際に最後の食事にもなる。

そのため、より一層食べることに惜しまない冒険家が多い。


料理が出る前に他のテーブルに行ったフレアがこちらに走ってきて座りながら話した。


「知り合いの冒険家たちに聞いてみたけど、月光の湖はここで···

そうだね。森までは早ければ夜が来る前に行けるし、

湖までは何回かの夜を過ごさないと行けないんだって。

それより本当に最近は北の森が危険だと言って冒険家の間でも困っているようだね」


私は前もって頼んでおいたソーダを飲みながら話した。


「きゃあー、そうなんだ。

ギルドが話したのは本当みたいだね。

では、何日間旅する為に必要な食事の準備はどうしようか?」


従業員がちょうど私たちの料理を持ってきた。

赤く皮が焼けた鴨肉の甘い匂いが煙に乗って私の鼻を刺激して唾がたまった。

従業員が鴨肉をテーブルの真ん中に置くやいなやフレアが鴨の足を両手でつかんでちぎって口に入れて話した。


「私は森で採集したり狩りをして解決する」


私も早速鴨肉の胸の部分をちぎって口に持って行きながら答えた。


「いいね。

うわぁー、肉がすごく柔らかい!」


皮はカリカリで、中の脂っこい肉は噛むほど甘い肉汁が流れ出て口の中を埋め尽くした。最後の食事に選んだとしても満足できる味だった。


幸せな気分だったが突然闇の森からガングラードまでヘルと共にしてきた時間が思い出されてヘルを睨みながら話した。


「ヘルは食事をあまりしないの。

ここまで来る間に非協力的で大変だったよ」


私は鴨肉と一緒に出た赤いパンをちぎって食べながら話した。


「私はお腹が空いたら目から火が出るからね。

フレアだけ信じるよ!」


口に肉をいっぱい含んで食べていたフレアは何か言いたいのか

口にあった肉をごくごく飲み込んで涙ぐむ目で私を見つめて言った。


「目…目から火?!」


フレアは何かを想像するように目がほぐれて口元が上がった。


「ぜひその魔法見せてほしい!」


私は辛くて香ばしい小さな肉が入ってもちもちした赤いパンを

かじりながらフレアに話した。


「うん?!私の聞き間違えなのかな?

私を飢えさせるって??」


フレアは目の前の食べ物を再び口に入れて両手を振りながら話した。


「あ、違う。 そんなことじゃない」


いつのまにか鴨肉もほとんどなくなって残ったのは赤いシチューと赤いパンだけだった。


「さすがオードの家だな。全部赤いね」


オードが使用した《バニールの破片》はフレイヤの破片であり、

強力な火を使って全ての敵を燃やしたという。


(すべてを燃やせる火はどんなものなんだろう)


私はまだそんな強力な火を想像できない。

そう思いながらシチューを味わいながら話した。


「味がちょっと物足りないな」


私はカバンをかき回して厚いガラスの小さなビンを取り出した。

そしてビンの中に入っていた赤黒い小さな玉をシチューに入れた。

シチューに入った玉が徐々に溶けていくとシチューの色がさらに濃い赤色になった。

鼻を刺激するピリ辛の香りを嗅ぎながらシチューを一匙すくって口に入れて話した。


「うん〜、いいね。

これだよ。みんなも入れる?」


フレアが残った鴨肉を集めてパンにのせて食べながら関心を持って話した。


「え、それは何?

そんなに食べたらもっとおいしいの?」


私はスプーンを置いて笑顔でカバンから小さなビンをもっと取り出してテーブルの上に並べた。 それぞれのビンにはさまざまな味を出す玉が入っていた。


その中の一つは本当に不味いものを食べる時に使う。

これを入れるとほとんどの不味い食べ物でもおいしく食べられるようになる。


これらは魔法使いが魔法石の実験中に偶然作られたものだ。

しかし今はこれだけを研究する魔法使いもいる。

最初はシードホートの町でしか手に入らなかったが今は魔法材料店でも買える。


私の説明を聞いたフレアは赤黒いビーズをシチューに入れて慎重に一口食べた。

頭を下げていたフレアは頭を上げて口を大きく開けて叫んだ。


「うわぁーー!辛いー!

口から火が出そう。 うわぁ!」


フレアは急いでテーブルを見回して残りのパンを見つけて口に入れた。

私は久しぶりにお腹いっぱい食べて気分が良くなった。

フレアはパンとシチューも残さず全部食べてもまだ辛いのか水をごくごく飲み込んだ。


ヘルも普段よりはもう少し食べたようだがやはりシチューも残してパンと肉も少ししか食べていないようだった。それに比べてシャーリンは一言も言わなかったがお皿に残された鴨の骨を見ればフレアと似たようにたくさん食べたようだった。


輝く顔でシャーリンが私たちを見ながら話した。


「神殿に行って出発の準備をしてきます。

皆さんはどうしますか」


フレアーはお腹いっぱい食べて眠くなったのかとても大きくあくびをしながら話した。


「旅立つのはいつがいいかな?

今?それとも明日に明るくなったら出発した方がいいかな?

今も涼しくて少し疲れてはいるけどー、私は問題ないよ」


私は急に先日のことを思い出してフレアに話した。


「今からでも旅立つことができるよ。

寝ずに歩き続けるなら、魔法の力を借りればいいし。

日が昇る頃には北の森に着くね」


実際、ヘルと私は昼夜を問わず歩いてきた。

ヘルは寝なくても問題はなかった。

そんなヘルと一緒に急ぎ歩いてある所に早く行く必要があった。

仕方なく私は寝ながら歩けるように私に魔法をかけた。

もちろん変な方向に行ったらヘルが何度も方向を変えてくれたという。


目が覚めた時には全身が痛かった日もあった。

私は首を横に振りながらその時のことを忘れたかった。


私はシャーリンに話した。


「神殿に私たちが休める空間があるかな?

休んで明日、明るくなったら出発しよう」


私の言葉にフレアは安心したようでシャーリンは神殿にあると言った。


オードの家を出ると冷たくなった空気に少しは

目が覚めるようだったが再びぼうっとした私はシャーリンの後を付いて行った。

フレアは何か気になるような目で私を全身をくまなくよく見て話した。


「ローレンは魔法使いなのに杖はどこにあるの?」


私はフレアの質問に微笑みながら話した。


「フフ、私はそんな厄介なものは嫌いなの」


フレアは驚いて話した。


「うん?じゃあ、どうやって魔法を使うの?

魔法石があってこそ魔法を使うんじゃなかったの?」


「ほぉ〜、フレアは結構魔法について知ってるね?

そうだよ。魔法石さえ持っていればその形がどうであれ関係ないの」


私は左腕の袖をまいて手首のバングルを見せながら話した。


「私はこれで魔法を使うの」


フレアは不思議そうに目を輝かせながら私のバングルをじっと見ながら話した。


「あのー、この小さな宝石たちが魔法石なの?

こんなに小さな魔法石で魔法が使えるの?

いや、普通は一つの魔法石だけ使うんじゃないの?」


魔法石が大きいからといって強力な魔法を使えるわけではない。

魔法は決められた呪文を唱え、想像力という代償を払わなければならない。


どれだけ具体的に何を想像できるか?

火というイメージを考えると人によって考える火のイメージはみんな違う。

火の動きから色、どれほど熱いかを想像すること、その全てが魔法の力になる。

これを説明するのはとても面倒だった。


「フレア。あなた《フルナ》なの?」


シードホートの魔法使いたちが連れてきた人たち、

皆が魔法学校を卒業して魔法使いになるわけではなかった。

魔法使いにはなれなかったが彼らは魔法使いたちを手伝うことをした。

魔法使いたちが作った魔法道具を販売する商人ギルドで販売の仕事をしたり、

魔法石を探す採掘者になったり、魔法使いギルドを助けて

有能な冒険家たちを探して紹介することもした。


そんな人を《フヨッムナ》【音が聞こえなくなった者】と呼ばれて通称、《フルナ》と呼んだ。


フレアはぼうっとして私に尋ねた。


「ふぅ?ふぅる?なにそれ?

聞いたことあるような気もするけど、ふむ。

何なのか私はよく分からないな」


私はフレアを不審な目で見つめながら話した。


「ふーん?《フルナ》じゃないの?

それにしては魔法に付いてよく知っているんだけどな」


フレアは遠い空を眺めながら魔法について聞かなくなった。

シャーリンは振り向いて話した。


「もうすぐです。

ここが私の世話になってるバルダーの神殿です」


シャーリンが指差したところには神殿とは思えない木で建てられた小さな建物が立っていた。


オードの家があった繁華街から再び狭い地を通って歩いてくる時からおかしいと思ったがまさかこんなに陰惨で人がいないところにみすぼらしいバルダーの神殿があるとは想像もできなかった。


神殿の木の扉を開けて入ると年配の老人が椅子に座っていた。

シャーリンが近づいて彼女の耳に向かって挨拶すると老人はゆっくりと起きて横にある部屋に入った。


シャーリンは私たちを見ながら話した。


「少々お待ちください」


シャーリンは神殿の一番奥にあるテーブルに近付いて両手を合わせてしばらく頭を下げて祈っているようだった。


その間、部屋から眠そうな子供たちが集まってきた。

子供たちはいつものようにシャーリンの前に並んで立って両手を合わせた。


テーブルの上には木で雑に作られた小さなバルダーの像がテーブルに置かれてあった。

そしてテーブルの横には水が入った小さな樽があった。

シャーリンは樽から水に濡れたヤドリを取り出してバルダー像の左右に水をまき散らし、子供たちの前を通り過ぎながら子供たちの頭にも水を撒きながら祈り始めた。


「今日を守ってくださってありがとうございます。

私たちが同じ場所で一緒にいられなくても、

あなたの中で私たちは繋がっていることを知っています。

闇が押し寄せてきますが、

あなたが一緒にいることを信じています。


闇が過ぎ去り露が地を濡らして新しい生命が生まれる時、


私たちもまた、

新しい日に再び目を覚ますことができることを信じています。


その時に目を開けられず、

今日が私たちの最後だとしても感謝します。


その光に溶けて

あなたの胸に戻ることを信じます。


もし目覚めたらあなたがくれた一日を大切に

生きていける力をください」


シャーリンの祈りが終わり、眠い子供たちはあくびをしながら部屋に戻り、

眠っている子供たちはシャーリンが一人ずつ抱いて部屋に移した。

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