5. 闇の森

闇の森ははるか昔、ラグナロクと呼ばれる戦争の影響で作られたと伝えられている。 シードホート図書館には魔法使いたちが書いた多様な本があってあちこちで集めた昔話も多かった。

特に、初代 シードホートの魔法使いの一人だった《ビルメイド》が収集した

《伝説と古い話》を見ると、そこにはラグナロクの時にどのように

闇の森が作られたかが書いていた。


今ではその名の分からない古代王国がヘーニルの最も北東にあった。

そして、ヘーニルの中心部平原の近くにはエルフたちが住む森があった。

ある日に空が赤く染まって暗くなり、エルフの森の西側にあった

赤い山脈ガイルバルドでは火が空に噴き上がり山脈に沿って降りてきたという。

そして山脈の深い闇から数多くのヨツンがあふれ出た。


ヨツンたちの姿はバラバラで明るい昼間に見ても暗くて形がよく分からなかった。

そして冷たい気運を巻いていて彼らが触るものは崩れて踏んだ草は枯れたという。

ヨツンたちは目に見えるすべてのものを破壊し始めた。

ヨツンたちに追い出されたドワーフたちが西の山脈から地上に出るようになった。

その時からドワーフたちが赤い山脈ガイルバルドで

暮らしていたことを皆が知るようになった。


古代王国の魔法使い王はヨツンの王になって

ヨツンたちを操り出して世の中を飲み込もうとした。

それに反対する魔法使いたちが集まって南に逃げた。

エルフたちの森は闇に包まれ、

ドワーフたちの洞窟は沈黙に閉じ込められた。


魔法使い王を先頭にするヨツンたちが南に進撃してきた。

それに対抗して人間、エルフ、ドワーフたちが一緒に戦った。


《ボルバプ》が書いた《バニールの伝説》という本には、

『南に逃げた魔法使いたちはバニールを作り、ヨツンたちに対抗して戦った』

と書かれてる。


《バニール》は様々な石(金属か、石なのか分からないが、ボルバプが書いた本では石と書いてる)で作られており、その本体の大きさはそれぞれで、

小さな家の大きさから、山ほど巨大な大きさもあったという。

人間とエルフ、ドワーフはバニールを先頭に立たせ、

ヨツンたちと中央部の大平原で最後の戦争、《ラグナロク》を行った。


戦いは長い時間続き、また月が赤く染まった夜、

巨大な蛇が西の山脈を切り裂いて出てきたと言われてる。

その巨大な蛇はバニールたちと戦った。

蛇は巨大なバニールと戦って体がバラバラに裂けてあちこちに散った。

蛇の引き裂かれた体の破片が闇の森を作ったと言われてる。


(蛇の話は《ビドルフ》が集めた話を整理して本にした《スノーリギル》の本の中で

見つけた話した。ラグナロクに関する話はいろいろあったが、闇の森と蛇が一緒に出てるのは《スノーリギル》が書いた《波のような昔話》だけだった)


ラグナロクが終わって残った魔法使いたちはエルフたちに《魔法書》を

預けて魔法をこれ以上使わないことに決め、魔法を使えなかったアスク族の下に入った。 魔法書を受け取ったエルフたちは荒れはてる自分たちの森に戻りった。


(ラグナロク以降の物語りや歌ではエルフたちが出ることはなかったと『スノーリギル』が書いた本では話したる )


エルフたちがこのヘーニル地域の森にまだ住んでいるなら

彼らの居場所はここ闇の森だと思った。


そしてそこには私があれほど探してる《忘れられた魔法書》も保管されているだろう。


ラグナロク以後、人々は魔法の使い方を忘れてしまった。

【剣の時代】を経て【闇の時代】になり、

再び《バニールの破片》を通じて魔法を使える【魔法の時代】になった。

シードホートの魔法使いたちは昔話を通じて知った

古代王国で使われた魔法を『忘れられた魔法』と呼び、

その魔法を再び使うために多くの研究と実験をしてきた。


私は偶然ノーブルの机に散らかされたまま

置かれていた本から《忘れられた魔法》に付いて知ることできた。


赤く染まった金属の錠が付いた本は厚かったが、

読むのにそれほど長い時間はかからなかった。


その本を読んだ後は《忘れられた魔法》に対する好奇心に駆られ、

シードホートの魔法学校を卒業してヘーニルに来て闇の森を探し始めた。


ガングラードから闇の森に向かって旅立つ時は月がとても大きく

明るく輝いていたが、どれだけ時間が経ったのか月が見えなくなり、

数多くの夜を闇の中で過ごした。 そして闇の森に到着する前夜の月は

私が描いた絵のように片方がつぶれた丸い形をしていた。


低い丘の上から眺めた闇の森は黒紫色の霧が立ち込めて森全体を覆っていた。


(ふん、付いたか。長かったな)


早く丘を飛び降りて闇の森の前に立った。

遠くから見た時に見えた霧は森の前では見られなかったが森の中はとても暗かった。 息を深く吸い込んだら私の鼻に森の匂いが入って来た。

濃い土の匂いとシードホートの魔法使いたちの部屋で

嗅ぐことができる、何か間違った時にする匂いが混じったような匂いがした。


古い詩人たちの歌やヘーニルのおとぎ話で語られてる《闇の森》は

入ると二度と戻れなくなったり、戻ってきても

恐怖の呪いにかかって自分の部屋に這い込んで二度と外に出なくなるという。


森への一歩を踏みながらこんなことを頭に浮かべた。


(《恐怖》はどこから来るのだろうか?

暗さが怖いのだろうか?

目を閉じても怖くはない。

なぜなら目を閉じても

私が踏んでいる土地がなくなったわけではなく、

私が呼吸するところがなくなったわけでもなく、

私自身が消えたわけでもないからだ。

知らないこと、

『何が私に起こっているのか』

分からないことが怖いのかな?)


少しずつ森に入るほど見えるものはなくなり、

分からない音があちこちから聞こえてくるようだった。

私は小さいけれど明瞭な声で呪文を唱えた。


「スバプニール」


目をぎゅっと閉じて後ずさりして森を出たい気がしたが、

呪文を唱えると暗くなった私の心が暖かい日差しに

照らされたように明るくなるようだった。


そして、どこに行けばいいのか分からなかった

私の足取りが行くべき方向に向かって進むようになった。


「ふぅーー」


闇に慣れた私は森の奥深くに入っていた。

いや、深く入ってきたと思っていた。

びっしりと生い茂った木々の間で前を眺めながらまっすぐ行けば森の中心に向かうという私の考えは間違っているようだった。


どこを見てもみんな似ている風景に

一体どこから来て、どこに向かっているのか分からなかった。

そんなに甘くないことは知っているが、私は諦められなかった。

《忘れられた魔法》を自分の目で直接見る夢を叶えるために数多くの時間を準備してきた。 夢の中でも私は忘れられた魔法を探す道を歩いていた。


両手を口元に集め、その中に息を吹き込んだ。

息が私の手の中で広がり、虹色の結晶のように輝き始めた。

私の手をいっぱいにした虹の光が私の顔と周りをかすかに照らした。

空に向かって手を広げると真っ白な羽をばたつかせながら

私の手を離れ、魔法の蝶がゆっくりと空に舞い上がった。


(この蝶さえうまくついていけば、エルフたちの居住地を見つけることができる)


羽ばたくたびに虹色の粉をまき散らしてゆらゆらと飛んでいく蝶を

目で追いかけながら再び一歩一歩運んだ。


<チリンチリン>


周辺の木々とは違ってねじれており、胴体に大きな傷がある、

異様に見える黒い木たちの間から小さな鈴の音が聞こえてきた。


そして蝶はその黒い木に静かに座り、その瞬間私も暗闇の中に落ちた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「お互いに違う道を歩いても、

結局は同じ目的地に到達することになるじゃないですか。


私は《忘れられた魔法》を

直接私の目で見たかっただけです。


ーーもちろん、そうです。


はぁー、本でしか見たことがない、

皆さんにこのようにお会いできて、

私は本当に興奮していますよ…」


青い光が部屋を埋め尽くした。

その明かりは《リオスカシ》と似ていたが、

もう少し暖かく、見ていると眠れそうだった。


部屋の中心には大きな円形のテーブルと繊細な彫刻が刻まれた椅子が置かれていた。


そして丁寧にも、私はその椅子の一つに縛られていた。


そうだ。


私はエルフたちに捕まってきて、

どうやって森で《恐怖》に捕らわれて逃げずに

深く入ってきたのか、何の目的なのかを話するようになった。


目を開けて初めて彼らを見た時には

まだシードホートの自分の部屋で寝ていて夢を見ていると思った。


これは夢ではないと自覚できたのは【縛られている状況】と【初めて嗅いた匂い】のおかけだ。


憧れていた存在に会った時に、

何かの魔法にかかったみたいに前後の合わない話を口にする。


(いや、もしかしたら彼らはもう私に魔法をかけたかもしれない)


実際、彼らは多くの質問をしなかった。

だけど、このようにエルフたちに思わずだらだら話してる自分がいた。


なのに、エルフたちは私に関心がなさそうだった。


彼らはテーブルから少し離れた場所で静かに互いに話してた。


私が想像した初めての出会いは

エルフ式にのっとった雅やかな挨拶をして、

とても久しぶりのお客さんとして私を迎えてくれることを期待していた。


(へーニルのおとぎ話で出る《冒険するエルフ》がしていた挨拶を

ぜひ使ってみたかった。冒険するエルフの話が本当なのかも確認してみたかったな)


こんな方法でエルフたちと初対面することになるとは思わなかった。


私は怒って叫んだ。


「ふん。私はあんたたちが《忘れられた魔法書》を保管していることくらいは知ってるよ!

その魔法書は人々があなたたち、エルフに任せたものだろう?

私は人々を代表してそれらの魔法書を見たいだけだよ!」


私の話を聞きもしなかった彼らは、

《魔法書》という単語にちょっと反応し、

目を伏せて私を見下ろして再び互いに対話を進めた。


私は何の返事もないエルフたちを見て独り言を言った。


「エルフたちの言うことは聞き取れないね。 えっとー あーー!」


<チリンチリン>


森で聞いた鈴の音が突然、鳴り響いた。


最初は穏やかな波のようだったが、

ある瞬間、すべてを飲み込むような巨大な波のように大きな音がして地面も揺れた。


エルフたちは急いで外に飛び出した。

飛び出したというより風のように消えた。

消えるのも本当に優雅だった。


「ニョルズの風の中で、

海の呼びかけに従い、

束縛は元の場所に戻れ。

マリンカル」


呪文とともにロープが緩んで私の体から抜け出した。

そして、元々いた場所を探して蛇のように這って消えた。


私を縛っていたのは【魔法のロープ】ではなく、

単なる普通のロープで解きやすかった。


「ニョルズの霧、

虹のかすかな秘密。

レインランド」


呪文を唱えると虹色の空気の泡が私を包み込んだ。


この魔法は私の姿を隠してくれるが、

どこかにぶつかると空気の泡が爆発して姿が見えるようになる。

そして空気の泡の中から出す音は外部からはよく聞こえない。


《忘れられた魔法》を見つけるための冒険を準備しながら、

私は起こりうる様々なことを考えた。そして普段は使うことがあまりなさそうな

魔法もこの冒険には必要だと思って身につけておいた。


もちろん、私が望んだ姿は丁重にエルフたちが

私をもてなしてくれて盛大な一日を過ごし、

彼らが私に《忘れられた魔法書》を持ってきて見せることだった。


(まあ、これも悪くはないか)


これも私には違う意味での好機と思ってゆっくりと部屋を出た。


(えーなに、これ)


信じられない光景が私の目に展開していた。


青い光の照明と対照的な赤い火炎。


美しく高くそびえる銀色の木と調和したエルフの建物が燃えていた。


エルフたちは誰か分からない者たちと刃を交えていて、黒い煙があちこちで渦巻いていた。 もう一方では火炎に包まれた建物を囲んで手を伸ばして何かをゆっくりと低い声で詠んでいるエルフたちが見えた。


(こめんなさい。私はここに来た理由があるの)


私はここに来た目的を思い浮かべながらエルフたちの建物を横切って高い所に向かって上がった。ノーブルが私に魔法を教えてくれた時、言っていた言葉を反芻した。


《想像力を実現させる信念が強い魔法の根源だ》


魔法は目に見える現象だけでなく、状況も作り出す。


私は《忘れられた魔法書》を見つけるという《信念》を持って

頭で考えるのではなく、信じる心に全身を任せてためらうことなく走った。

階段を上って広い広場のようなところを横切り、再び巨大な木を囲む階段を上った。

階段を上る途中、目に入ったのは階段に倒れている黒く焼けた人だった。


(人?こんな所に?)


それが誰で、なぜこんな場所に倒れているのか、

何が起こったのか、私にはそれを考える時間もなかった。

階段の先が見えて息切れしたが、幸い誰にもばれなかったようだった。


登った木の上にある広い空間には美しい建物が立派に立っていた。


一方から金属がぶつかる音が聞こえてきた。

音がするところはまるで私にこっちに来いというように

扉が開いていて明るい光が漏れていた。


(行くしかないよねーー)


私は心の準備をして慎重に入った。


高い天井から美しい木の装飾が下に降りてきており、

その装飾の間には数多くの巻物がはめ込まれていた。


ある巻物は地面に落ちて広がっていて、

その周辺ではある群れとエルフたちが戦っていた。

バレないように静かに入って一番近いところにあった巻物を

外そうとした瞬間、金属がぶつかる音が消えた。


音が消えたところを見ると皆が私を見ていた。


(見てる?私を?)


魔法が解けて慌てる私に向かってエルフと戦っていた人が私の方に走ってきた。

その後を追って灰色のエルフが追いかけながら何か分からない言葉を吐き出した。


私に向かって走ってきた人が私に触れる前、

その人は空に飛ばされて天井に刺さってしまい、

空から巻物の紙切れがゆっくりと散らばって降りてきた。

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