第3話 果たせなかった父との約束

「これで、終わりだな」

自分の拠点であるアパート向かって歩きながら息を吐いた。

「明日には自首しに行こうか、もう心残りはない。」

そうだ家族も友人も知人さえいない

愛用ナイフは、レストランに刺さったままにさせた、私にはもう必要ないからだ。

ただあるのは、たくさん人を殺したことに対する償わなきゃ行けない罪だけだ。


「どうせ、死刑だろうな、この人生の最後にちょうどいいかもな。」

柄に合わないようなクサイセリフを放ち、最後の晩餐を買うためコンビニへ向かった。


「グサッ//!」


一瞬左手の感覚がなくなり胸に違和感を覚え、足を止め確認するために下を向いた。

そこには自分の左手にある真っ赤なナイフが自分の心臓を貫いてる様子があった。

「何が、うっ、」

油断した途端急に激痛が体に走る。

刃物はすべてあのレストランにすべて捨てて来たはずだ。

それにこの真っ赤なナイフは何だこれは私のものでもないし、

それに私は自分を刺せるほどの度胸はない。

少し経つと真っ赤なナイフはドロドロに溶け始めた。

「血?」

現実なのか瀕死による幻覚なのかわからなかった。

突然脳裏に自分の父親の姿が現れた、走馬灯なんだろう。

7年ぶりの父の姿に私は息を呑んだ。


〜〜〜

「永井 雅義(ながい まさよし)、」

「ん?どうした父さん、」

「俺は、雅義と一緒に過ごせて幸せだった。」

父がガンで死んだ命日の記憶だった。

人は案外いつ死ぬか理解しているものだ。

父はそれが今日だと言っていた。

「洒落にならない事言わないでよ父さん、あなたは強いんだからさ」

「は は、見た目だけさ、」

その時の自分も感づいていたのだろう、私は病院で寝ている父の手を強く握っていた。ザラザラしてて、あったかい人の温もり

私の亡くした父の温もり

「雅義、お前に頼みたいことがある。」

「何でも行ってよ、必ず叶えてあげるからさ、」

私は父に未練を残させたくなかった。

「真っ当な人生送って幸せになれよ、そんで土産話たくさん用意しておけ、」

そう行って、父はいなくなった。唯一の家族を失いさすがに悲しかったのだろう

その時赤ちゃんの頃以来の涙を数滴ほど頬に垂らした。

〜〜〜


「結局約束は守れなかったな、土産話はできやしないよ

でも最後にその声を思い出せてよかった。」

父の温もりを思い出しながら


そのまま私は、目を閉じ安らかな死を体験するはずだった。






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