【第三章:高野恵美子(3)】
会議室は小さかったので、そこに高野恵美子がいないことは誰の目にも明らかだった。
そのときは、坂井かなえたちは何が起きたかわからず
「ハハハ、研究のしすぎで疲れてたんじゃないのか?ほら、外はいい天気だぞ。それに今年の夏は今年限りだ。遊ばないと
と、西棟一階に坂井かなえたちが
「何がどうなってるんだか・・・」と、
「えっと・・・、
「えぇ、はい。ドアを閉めたあとも、ドアノブは普通に回っていたので、カギはかかっていないと思います。ドアって普通はカギがかかっていたら、ドアノブは回らないですよね。」
「うん、そう思うよ。だって、さっき守衛さんと一緒に行ったときはドアノブは回らなかったもの。」
「ですよね。誰がカギをかけたんでしょうか。」
「あそこのエレベーターは遅いとは言っても、下に行って守衛さんと戻ってくるまでは十分もなかったはずよね。」
真中しずえが自分の腕時計を見ながら、「今は二時二十分すぎなので、たしかにそんな感じですね」と、坂井かなえの考えに同調した。
「十分か・・・。まあ、死体を移動してカギをかけるだけだから、絶対に不可能というわけでもないか・・・。あのとき犯人が近くにいたりしたのかな」と、田畑太一郎が自分の考えをまとめるかのようにつぶやいた。
「犯人・・・。」
その言葉を口にした真中しずえの顔色は、
真中しずえは『夏休み別荘事件』の生存者である。彼女はその犯人を見たわけではないが、そのときに何が起きたかは当然知っている。
その犯人は真中しずえのクラスメート一人を
いつも明るく、誰とでも
「しずえちゃん、大丈夫?」
坂井かなえは、真中しずえの
「え?あ、だ、大丈夫です。すみません。ちょっとボーっとしちゃって。」
「よかった。なんか急に顔色が真っ白になったからビックリしちゃったよ。気を失って
「すみません・・・。」
「どうしたの?」
「いや、犯人って言葉を聞いて、ちょっと怖くなっちゃって。」
と真中しずえが言ったところで、坂井かなえは田畑太一郎の方を向いて、「太一郎君、しずえちゃんを
「え、あ、すみません・・・。そんなつもりはなくて・・・」と、急に強い口調で
「かなえさん、田畑君は悪くないです。私が勝手に怖がっただけで・・・」と真中しずえが言うと、「なんちゃって。太一郎君ごめんね。びっくりした?」と、普段どおりの坂井かなえの表情と口調に戻った。
「え・・・?」と、坂井かなえの
「私もだけど、二人とも少し落ち着こうか。もしかしたら、守衛さんが言っていたように、私たちが
真中しずえは、あそこで倒れていた人間が生きていたとは信じられなかったが、坂井かなえがそう言っているのは、自分を元気づけるためだということに気がついたので、
一方で、田畑太一郎は、倒れていた人間の表情を自分の目で直接は確認していなかったので、坂井かなえが言う可能性もあるのかなと思い、「そうかもしれないですね。まだ
「とりあえず今日はここで
そして、「太一郎君?」と坂井かなえに
しかし、その予想とは異なり、坂井かなえは可愛らしい笑顔で「申し訳ないけど、今日の座談会が中止になっちゃったこと、例のWebサイトの会社に伝えてくれる?ごめんね、大変な
「あ、もちろんですよ。かなえさんも今日は大変だったと思うのでゆっくり休んでください」と、坂井かなえを
そして、その日はその場で
***
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