【第二章:坂井かなえ(4)】
T大学の
一つはお
「連絡通路は二階と六階にあるんだけど、今日は六階ので行こうと思ってるから、まずはエレベーターで六階に上ろうか」と、坂井かなえは二人に言って研究室を出た。そして、そのままエレベーター・ホールまで歩いてエレベーターの
エレベーターはすぐに来た。それに乗り込んで、六階のボタンを押したところで、「あっ」と坂井かなえが言った。二人が坂井かなえの方に
「どうしたんですか?」と田畑太一郎が少し
「取りに戻りますか?」と真中しずえが聞いたが、「ま、よく考えると、食べながら
そんな会話をしているうちに、エレベーターがすぐに六階に着いた。
「じゃ、私の後をついてきて」と坂井かなえが言って先を歩くと、すぐに連絡通路へと
「ここはちょっと
「わ、すごい高いですね。ガラス
「大丈夫よ。
「あそこが高速道路ね。それで、あっちがチャイナタウン。実はね、この下で
「え、ここって、そんなに
「ううん、大丈夫よ。ここら辺は道路とかがちょっと
「良かった」とホッとする田畑太一郎の横で、真中しずえが別の質問をする。
「かなえさん、この連絡通路ってよく使うんですか?」
「うーん、高野さんに会いに行くときくらいにしか使わないかな。
「ですね。それに、なんかちょっと
「こっちの建物ってどこも傾いてるよね」と、今度は田畑太一郎が会話に入ってくる。
「そうそう!」と坂井かなえは返事をして、「私が住んでるアパートも傾いてて、丸いお
「じゃ、
西棟は、坂井かなえの研究室があった東棟とは
その様子に気づいた坂井かなえが、「あ、ちょっとびっくりした?私も最初に来たとき少し驚いちゃった。ここ、全体的に
「あ、いえ、そんなことはないです」と、真中しずえがフォローしたが、その顔には少し引いている表情が見てとれた。
「あはは、そんな無理してフォローしなくていいよ。さっきも言ったけど、こっちの建物は古いんだよね。私が、『自分の留学先があっちの東棟でよかった』って言った
「は、はい・・・。同じ大学で同じ場所に
「そうね。でも、高野さんは別に気にしてないみたい。日本にいたときも、自分が通っていた研究室は古い建物にあったからって言ってたよ。」
「まあ、良い研究ができるかどうかは建物の新しさとは関係ないかもしれないですしね」と、田畑太一郎が会話に加わる。
「ええ、たしかにそうね」と坂井かなえは返事をする。
「でも、こっちの建物って向こうの建物より天井も低いんですか?」と、田畑太一郎が聞くと、「え、そうかな?廊下の幅が狭いのと全体的に照明が暗いから、そう感じるだけかも」と、坂井かなえは答えた。
「あー、そうかもしれませんね」と、田畑太一郎が返事をすると、「ま、とりあえず会議室にいこっか」と言って坂井かなえは再び歩みを進める。歩いている
「えっと、どうかな」と坂井かなえは自分の
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