【第二章:坂井かなえ(2)】
T大学はB市の中に三つのキャンパスがあり、今回の
この二棟は主に
坂井かなえが
田畑太一郎たちが東棟の入り口に
「あ、ごめんごめん。
「これ、座談会のときにみんなで食べようかなと思って買ってきたんだけど、もしかしてドーナツはあんまり好きじゃなかったりする?」
「いえ、私ドーナツ大好きです!」
「良かった」と言いながら、坂井かなえは田畑太一郎の方を向く。
「えっと・・・田畑先生でしたよね。はじめまして。」
「あ、初めまして。田畑太一郎と言います。今日は土曜日なのに座談会への参加を
「そっか。ここら辺に研究で留学してくれる日本人ってお医者さんが多いから、ついつい先生って言っちゃうんだよね。」
「わかります。僕も留学して最初のころ、日本人研究者の集まりに出たときに、みんなが『先生』とつけて呼び合ってるのを聞いてちょっとびっくりしちゃいました。」
「だよね。じゃあ、君のことは田畑君と呼んでいいのかな。それともアメリカらしく太一郎君と下の名前で呼んでもいいのかな?」
「どちらでも大丈夫です。」
「じゃあ、太一郎君で決まりね。私のことも下の名前で呼んでいいからね。」
「あ、はい。じゃあ、かなえさんと呼ばせていただきますね!」
田畑太一郎はこれまで日本人の女性に下の名前で呼ばれたことはなく、女性を下の名前で呼んだこともなかった。しかも、田畑太一郎にとって坂井かなえは、真中しずえが言っていたように可愛らしく
「あれ?田畑さん、もしかして少し照れてます?顔赤いですよ?」
「な、何を言ってるの真中さん。お、俺、別に照れてないよ。」
「私のことは
田畑太一郎の顔がさらに赤くなり、何かを言おうとしたが言葉にならなかった。それを見て坂井かなえが「はは、若いっていいね。とりあえず中に入ろうか。今日は暑いからね」と、その場を軽く
「ハロー!」と明るい大きな声で坂井かなえが守衛に話しかける。この守衛はガタイの良い黒人だった。
坂井かなえは、その守衛とは
二人はそのスティッカーを
田畑太一郎も同じようにしたかったが、うまく言葉が出てこずに小さな声で「サ、サンキュー」としか言えなかった。その言葉は聞き取られなかったのか、その守衛は田畑太一郎の方は
***
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