第7話

 イカリソウ 旅立ち

 ダンデライオン 別離

 キキョウ 変わらぬ愛

 スズラン 再び幸せが訪れる


「あいつ絶対に、お前のこと待ってる。だから、早く行け!これ貸してやるから!次の電車まであと10分ちょっとしか無いぞっ」


 そう言うと、康太は麻里に自転車を押し付ける。


「えっ……あ、うん!」


 言われるままに、麻里は自転車に乗って駅への道を急いだ。


 自転車を漕ぎながら、康太のメモした花言葉を思い返す。

 確かに、中原かもしれない。

 いや、きっと中原だ。

 中原に違いない。

 だって。

 今旅立ってしまうのは、中原しかいないのだ。

 それに、心のどこかで麻里は、栞の贈り主が中原だったらいいなと思っていた。


「待ってて、中原くん、あともう少しだからっ」


 麻里は焦っていた。

 ほんの少しのつもりで家を出てきてしまったから、スマホも腕時計も持っていない。

 康太はあと10分ちょっとしか無いと言っていた。

 必死で自転車を漕ぎながら、麻里は考えた。自分は何故こんなに必死になっているのだろうかと。

 そして、やっと思い至ったのだった。

 自分の気持ちに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る