第6話

「中原、今日だったよな、引っ越し!」


 麻里が玄関から出るなり、康太は自転車から降りながらそう尋ねてきた。


「そうだけど?」

「お前っ、早く中原のとこ行けっ!あいつ電車で行くって言ってたから、駅行けば会えるかも」

「ちょ、ちょっと待ってよ康太!なんで?なんで私が中原くんに会いに」

「中原だったんだよ、あの栞っ!そんで、あの栞の意味は……意味はなぁっ」


 一瞬言葉を切って麻里を見ると、康太は少しだけ顔を赤くして言った。


「大好き、だ!」


 理由がわからず、麻里はポカンとして康太を見る。すると、康太はじれったそうな顔をして言った。


「俺もさっきようやく気づいたんだけどな。たんぽぽは英語で『ダンデライオン』なんだよ!花の頭文字入れ替えて繋げてみろ。ダイスキに、なるだろ?」


 康太に言われて、麻里もようやく栞の意味に気付いた。だが、その贈り主が何故中原なのだろうかと、小首をかしげる。

 と、康太は更に苛ついた表情で告げた。


「花言葉だよ、花言葉!」

「花言葉?」

「どうにも気になって調べてみたんだ。そうしたら、どう考えてもあいつしかいないんだよ」


 そう言って、康太はポケットから小さなメモを取り出し、麻里の目の前に突き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る