第3話

 翌週。


「次はなんだろな?」

「ちょっと勝手に人の靴箱空けないでよっ!」


 靴箱に手を伸ばしかけている康太の手をピシャリと叩き、麻里は自分で靴箱を開けた。


「キキョウ、か」

「可愛いお花だね」


 そこにはやはり、押し花の栞があった。


「お前、ほんとに心当たり無いのか?」

「ていうか、ほんとに康太じゃないの?」

「だから、なんで俺がお前に」

「ほんと、誰なんだろう?」


 康太の言葉を遮るように目の前に栞を持ち上げ、麻里はじっと栞を見つめる。


「なぁ、中原の連絡先とか聞いたのか?」

「……聞いてない」


 麻里は中原と連絡先の交換はしていない。ただ、学校で顔を合わせて話すだけ。


「いいのか?聞かなくて」

「……うん」

「ふうん」


 何か言いたげな康太の視線から逃れるように、麻里は栞を鞄にしまうと、そのまま歩き出した。

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