第3話 大人の嗜み

逃げた僕ら。

スナックの2回の部屋。

下のビールは飲んで良いよ、と言われていた。

あたりめを湿らせてから焼く事。

えいひれに七味マヨネーズ。

僕らは少しずつ、大人になって行った。

それでも、酒は単にある場面を彩るアイテムでしかなかった。

ふたりして都会へ。

別れ。

会社での酒盛り。

社会の洗礼。

いつしか肉体疲労が、ビールをうまくした。

合コン、ナンパ、知りもしない女と会うために、酒は欠かせない。

バンドメンバーとスタジオ明けに。

ライヴの打ち上げに。

いろんな用途に使える便利なやつだ。

そのころになると、酒のまずさが半額腐りかけの輸入牛肉のレアステーキには赤ワイン、とか、やはり色がくすんだ半額のお刺し身には日本酒とか、それぞれに料理の旨さを引き立てる事を知った。

けれど若かった頃。

眠る体力もあったんだ。

別に酒なんかなくても、こてん、と眠り、泥の様に眠り続けられた。

主にコミュニケーションツールとして重宝していた酒は、そんな風にこっそりと、いつのまにか僕のひとりの時間に寄り添い始めていた様に思う。

即ちファッションとしての「酒が飲める」から、趣味や実用性としての「酒が好き」へ。

そうしてみんな、大人になるんだ、と思っていた。

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