第2話 ノンアル中学生

サクさんがいた中学校は、両親の離婚で転校した。

次の中学校。

そこで出来た親友は、柔道部の、いかつい、でも何処か暗い陰を纏った優しいやつだった。

一度そいつの家に行った事がある。

ああ、いけない。

そう思った。

弟がなにやら。

親がどうやら。

あいつはなんか言ってた。

けれど、ひとつも覚えてない。

いや、覚えちゃいけないと感じた。

おんなじ。

違うけど、おんなじ。

僕は女にもモテる人気者。

あいつは、その気になれば不良なんて伸せる力持ち。

けれど、ふたりとも、暗くて優しい。

身の程を、知らされていたんだ。

暮らしのなか。

毎日の、生活の中で。

細かい事は話さなかった。

それより、好きなアイドルのこと。

そして、秘密の、あのコの事。

3年生。

部活も引退。

僕ら、自転車2台並べて、お互いの家を何往復もしながら、語り合った。

語り尽くせる筈もない想いに、お互い蓋を被せながら。

夕暮れ、田舎の自動販売機。

ガコン。

ノンアルコールビールの小さい缶を一缶ずつ。

まずい。

それでも、儀式。

乾杯。

気付いてなかった。

その時から僕ら、いや、少なくとも僕はもう、立派なアル中だった。

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