第5話 武器屋

俺たちはギルドの頼りにはならない。しかし、武器や防具がなければ危険なたびになるだろうし、なければとても危険なものになるだろう。ボイスリアクトいうのはどうやら対象について詳しく知らないと一から作れないらしい。それで、武器屋を探そうという話になった。俺としてはボイスリアクトがあるので武器は必要ないと考えているのだが彩子を危険から守るための武器は必要かもしれない。とにかく、油断は禁物だ。備えあれば憂いなしというのはこのことだ。俺たちがその武器屋に入ると、剣や盾、杖や弓などが小さなものから大きなものまで売り物として店中に飾られていた。俺はゲームのことはほかの人よりは詳しいものと自負してはいるが、俺はさっきも自分のことでさえ評価できていなかったからそれについては少し自信がない。自信過剰なのかもしれんが。俺自身のことでさえ理解出来ない俺自身が世界観に影響を及ぼし得るのか。俺はあれからずっと悩んでいるがこんなことでぐずぐずしている場合ではない。それより、今は武器の話だ。俺がしたことのあるゲームは戦闘系ゲームとロールプレイングゲームで戦闘系はやりこんだものだ。俺には相棒がいて、ロングソードと腕に装備するバックラーだ。ロングソードは重くて俊敏性に欠けるが、それはバックラーで補い、ロングソードの攻撃力で一刀両断する戦法が俺のスタイルだった。たまに出現するボスがいたのだが、俺は当然何度も立ち向かった。ソロとして俺一人でボスという難攻不落の壁に立ち向かえるのだからあれほどワクワクするものは当時見当たらなかった。ボスを倒したときは大はしゃぎで喜び、よく母親に話したものだ。当時は中学生だったこともあり、母親からはよく子ども扱いされたものだ。たとえ子ども扱いを受けても俺はゲームの世界に立ち向かった。俺がもしここでゲームを何の理由なく辞めたら、あとで絶対後悔すると思ったからだ。俺は現実では毎日誰かには怒られていて、自分には価値がないとおもっていた。けれどもどんな小さなことでも途中であきらめたら、俺が俺じゃなくなると思った。俺は俺自身がなぜゲームに向き合っているのか気づくまでは、続けてもいいと思っていた。俺は現実ではこんなだけど、ゲームの世界ではこんなことができるんだ。あの現実は嘘に決まってるし、俺の価値はあんなものではない。そんなことを考えながらよくゲームをしたものだった。振り返れば、とても熱中していたのだと思う。あそこまでゲームをやりこんだのだから、絶対にこのゲームの世界でも活躍できると思っている。俺は彩子をサポートできるように早く強くなって彩子に一人前の男として認められたい。早くレベルを上げて一人前のプレーヤーにならないと俺自身に俺までの説明をできない。しかし今の俺のレベルは24だ。俺のステータスは550くらいで、少し強い敵が現れるだけで負けてしまうだろう。負けないにしても役に立たない可能性の方が高いだろう。俺はパーティーを組んだ方がいいと考えてみたことはあるが、俺は中途半端なプレイヤーは欲しくないと思っている。俺の目的は強くなるためではなく、世界観に貢献する事が叶うような存在になることだ。やはりこの目的のためになる人物パーティーを組みたいと思っている。少しわがままかもしれないが昔から俺はこんな性格だ。この武器屋の武器や防具には様々な施しをされているようだ。俺の昔使用していた白銀に輝くロングソードもここにあるんだろうか。俺の使っていたロングソードを実際にふるえればこんなに幸せなことはない。


「彩子、好みのものはあった?」


「私に似合う武器ってあるのかな?」


「俺に似合う武器はあるかなあ?武器って本当に必要なのか?」


「武器はとても重要だと思うよ。この店の品物も売れているから売り物として売られているんだと思うよ」


「そうだよな、俺そこんとこわからなくて」


「少し見ていこうか」


「そうね」


この武器屋にはロングソードはないのか?せっかく武器屋に来たのだからロングソードに一度お目にかかりたいと思う。ここは結構大きな武器屋なのだから見つかるはずと思うのだが。俺の装備していたバックルに似ているものはあったんだが、どうもロングソードがないとしっくりこない。


「すいません、ここにロングソードは置いてませんか?」


「そうですね、ここに置いてあるロングソードは高価なので奥にあります。見ていきますか?」


「お願いします」


「少しお待ちください」


「そういえば彩子手先が器用だったよな。両手剣なんてどうか?」


「私にも盾みたいなのも欲しいわ」


「そういうのは俺に任せてよ。これでもゲームの熟練だったんだぞ」


「あなたの手ばかり借りたくない。自分だけでも守れるようにならないといけないと思わない?」


「鎧だってあるぞ。できるだけ強力なものを選べばいいじゃん」


「鎧だけじゃ十分に守り切れないな」


「それよりあなた、ゲームやってたとか言ってたけど、全然詳しくないねー」


「詳しすぎて細かい知識なんて忘れちまったんだよ」


「うそでしょ、それ?」


智也はたまに嘘をつくことがある。智也はなぜゲームをしていたのかはわからないが智也はいつもゲームのことになれば人一倍熱くなって語り始める。何がそんなに熱くさせたのだろうかいまだにわからない。一度も負けたことないとかギルドの団長だとかゲームの話になると私に語る。彼の行動を見てるとそんなことはないと思うのだが、彼はたぶん私に見栄を張りたいのだと思っている。


「そういえばあなた、お金持ってるの?」


「そんなもんボイスリアクトで出せばいいだろ!」


「簡単に言うけど」


「任せろ!」


「クリエイト・・・・マネー」


彼らの目の前には突然日本円の100万円の束が出現した。彼らは驚きを隠せず、その光景に見事に心酔した。


「すげえ」


「そうね」


「でも、これって、日本円じゃん。このギルドで変えてくれるのか?」


「わからないけど、とりあえず武器屋の人が来たら聞いてみましょう」


「おう!」


「お待たせしました。これがロングソードです。全部で6本あります。ぜひご覧ください」


「こちらのロングソードは表面には龍の牙が使われており、結構な攻撃力を秘めています。最低装備レベルは44で中級冒険者用です」


「こちらはとある一流職人が作成の携わっており、攻撃力、耐久力も抜群です。ただ、一流職人が関わっているので値段がほかの5つに比べて比較的高いです」


「こちらは国のギルド戦で7位の剣豪サルトさんが愛用している通称サルトアイとよばれるロングソードです。しかし、こちらは案外量産されていて安く手に入ります。そういうこともありたくさんの冒険者に使われています」


「こちらは私特注で防御力に磨きに磨きをかけて作った防御力においては類を見ないほどの剣です。ただ、防御力を上げ過ぎたため攻撃力は通常よりも少し劣ります。しかし攻撃力は盾よりも圧倒的に高いので攻撃も防御も兼ね備えたい方によいです」


「こちらは他国から取り寄せたものですが、性能は普通で特徴がないことが挙げられます。しかし、他の5つと比べれば結構安いのでお勧めです」


俺は5つのロングソードを吟味したのだが、何かピンとこない。結構いいものぞろいだが、俺に見合う武器はないものなのかと落胆したのだった。しかし、彩子は防御力の強化された剣が好みのようで、購入したいようだ。もちろん俺も防御力も欲しいのだが、攻撃力も欲しい。そうではなく、俺の望みはそのステータスには関係ない俺専用の武器なのだ。


「こちらは初心者おすすめのロングソードです。初心者には短剣や片手剣などがおすすめなのですが、どうしてもロングソードが使いたい人の為の比較的に軽くて使いやすいものです」


「そういえば、6つ目のものはどうなんですか?」


「それなんですが、こちらは随分特殊で別の世界から来た冒険者がこの武器屋に寄付くださったもので、何か特殊なものが付与されているようで、紹介したいのですがよくわからず」


「そうなんですか。それで、この武器の特徴は?」


「この武器はある人物がボイスリアクトで創ったものらしく創造値というものをより引き上げてくれるらしいです。しかしこれはそのボイスリアクトの所持者でないとただの普通の剣でその所持者が現れないのでずっとここに残っているのです。


驚きだ。先にこの世界に来た人物の中にボイスリアクトを持っていた人物がいたなんて。それで気になるのはなぜその人物はわざわざ武器屋にボイスリアクトを寄付したのだろう。俺だったらそんな武器をつくったら絶対自分で使うものを。世の中には自分の理解できないこともあるものよ。


「またあなた、ボイスリアクトって単語が出てきたね」


「そうだな。ここでもその言葉が聞けるなんて思ってもみなかったな」


「やっぱりボイスリアクトって結構有名なのかな?」


「そうかもしれないな。今度使うときは警戒したほうがいいかもしれない」


「お待たせしました」

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