第3話 とある村
「この街大きいなあ」
「共成ドーム何個分?」
俺たちは家を出てちょっと歩いていくと、小さな町を見つけた。当然入ろうという話になり、町に入った。その町は商店街であふれており、大変活気のある町だった。周辺には屋台も多く、それ以外もお食事処や、異世界特有の店まで様々な物に囲まれていた。そこらには大きな人だかりが出来ていた。
「想像以上だったなあ」
「そうね」
「この世界にもともとこんなものがあったんだなあ。世界は広いんだな」
「あら、家から数キロの町だよ」
「そうだったな」
こんなにぎやかな街なので俺たちの目的が分からなくなるところだった。まずこのゲームリフレクターという世界がどうなっているのか知らないと始まらないだろう。聞き取りとかしようかな。
「ここなんてどう?」
「ギルドか?」
「入ってみましょう!」
「ノックしなくてもいいのか?」
「いいと思うよ」
「そうか。じゃあ開けるぜ」
「ガチャ」
「いらっしゃいませ」
窓を開けた俺は一目散にギルドのロビーに行った。
「お客様のご希望はいかがでしょう?」
「こちらの製品は受け付けていませんのでご注意ください」
これはボイスリアクトではないか。みんなこの世界に来た時に渡されたものだと思っていたのだが。こんなことがあろうとは思わなかった。みんなが欲しがるほどの貴重なものなんて思いはしなかった。俺は人前では緊張してしまうのだ。ましては知らない人とでは特に。どうすればいいのか。ここはひとつ。
「別の世界から来たものなのですが」
「この世界ってどうなっているのかわかりますか?」
俺は言葉選びが下手でたびたびこういうミスをすることがある。どうすることもできないものなのだろうか。
「そうですね、この世界に来たプレイヤーは皆いずれ各地のギルドにたどり着きます。そこで皆さんメンバー登録をしております。登録することでこの世界のお金を稼ぐことができます。特に異世界から人はこの世界に住む住民よりも比較的高い戦闘能力を有している場合が多いですから、ほとんどが冒険者として登録します」
「お客様のステータスを確認する装置がございます。確認していきますか?」
「はい、お願いします」
「ついでに彩子もお願いします」
「わかりました。少々お待ちください」
俺のステータスはどれくらいだろう。俺の見立てでは平均より少し上くらいだと自負している。しかし、俺にはこのボイスリアクトがある。もしステータスが低くてもこのアイテムさえ使いこなすことが出来れば物事は大きく前進する。彩子のステータスはどれくらいだろう。何気に俺よりも高いのかもしれない。
「お待たせしました。準備ができたのでこちらにどうぞ」
待ちに待ったステータスの発表会だ。俺、頼む平均以上であってくれ。
「あなたのステータスは550で平均並みです」
俺は落胆した。たとえボイスリアクトがあるとはいえ平均並みというのは少しショックである。
「彩子さんは・・・おおっ1690で平均を大きく超えています」
「はい?」
真に驚いてしまった。まさか優しい女性でもある彩子のステータスがこれほどまでに高いとは思わなかった。
「彼女はファイアドラゴンのステータスより少し劣りますが、通常のドラゴンであれば彼女一人で対処可能でしょう」
この世界の比較対象があれほどの狂暴なドラゴンというのが一番の驚きなのだが、彩子がこれほどまでのステータスを秘めているなんて。男の子の名が恥じるにもほどがある。この世界のステータスとはどうなっているのか。
「おう!」
「すごいじゃないか!」
「ステータスが高いのは少し安心するけどね」
仲間より簡単に弱いとわかってしまった。せっかく機会を与えてもらったのに、こんな感じだとは。
「ところでこの世界の詳細な情報というのはどこにあるのでしょう」
「それはギルド図書館というところの蔵書の中にその情報は書かれていると思うのですが、この図書館はレベル50以上のギルド会員しか見せられない仕組みになっていますのでご了承願います」
「そうなんですか」
この世界の情報はレベルで得ることが出来るのかできないのか決まるのだろうか。もしそうであれば情報格差につながる恐れがあるな。この世界も案外間違っているところはあるのか。やはり旅をして知ってみるべきだと感じた。
「わかりました。ありがとうございました」
「ああ、ステータス1000以上の方がパーティー参加の招待状が発行されております。このギルドなんてどうでしょう」
「いや、・・・」
ギルド職員というのはそんなにいい職業では何のかもしれない。少なくともゲームやアニメで見たギルドの華々しいものとはかけ離れているのだろう。ステータスの高さでギルドでの対応が変わってくる場合もあるらしい。この世界にはギルドはいくつあるのだろうか。各地のギルドによって対応は大きく変わってくると思うが。
「失礼します」
「ぜひ次もお越しください」
俺と彩子はギルドを出た。
「ちょっと顔色悪いんじゃない」
「大丈夫?」
「平気さ」
「そう」
俺は思い付きで彩子に提案してみた。
「それよりこの町をもう少し観察していかないか?掘り出し物とかあるのかもしれないぞ」
「賛成」
俺は自分のギルドでの対応と反対に町が繁盛しているのを見て、少し疑問が浮かんだ。
「繁盛しているとはどういうことなんだろうね」
「さあね」
「この世界に来て、考えさせられたような気がする」
「でもこの町にもいいところはたくさんあると思うわ。これまでは期待が高かったからなのかもね。ちょっとブラブラしましょう!」
「そうだな」
俺たちは繁盛している商店街から少し離れて、古臭いレトロな風景の店が並んだエリアまで足を運んだ。路地に入るとお食事処を見つけた。
「入ってみましょう!」
彩子がそう言うと、店の中に入った。
「いらっしゃい」
そういって店員がテーブルの上にコップを置いて立ち去っていった。その机は結構長く使われているようで、ところどころに傷があった。テーブルの側には大きな窓があり、街中の様子が見まもれるような配置だった。テーブルの端にメニューが立てかけられてあるのをみて、彩子はメニューを取ってテーブルの上に広げた。メニューには様々な料理が記入されていてとりどりの野菜がふんだんに使われているようでとても気分がよくなった。
「ポトフ2つ」
私たちはその中でもひときわおいしそうなポトフを頼んだ。15分ほど窓の外を眺めてはポトフがテーブルにやってきた。ポトフはメニュー通りたくさんの野菜が入っており、とても色合いもよかった。味見をしてみると、塩とコンソメの割合が絶妙で胡椒がアクセントになっていてそれに野菜をかき込みまたスープを飲む。これがとてもおいしかった。周りを見てみると客が結構店内にいるのを見て、そういうことだと実感した。この町は一概に悪くなかったのだと思った。先ほどのギルドの対応を見た感じだとこの町は悪い空気が漂っていると考えていたのだが、一概にそれだけで決めてはいけないなと感じた。期待していた風とは違っていたとはいえ、この町のことは少し悪いイメージを感じていた。しかしこの店を一通り見渡してみると違和感のある所は見つからない。これまで不振に感じていたものとは一体何だったのだろう。私は終始それについておおいに疑問に思いながらもポトフを食らった。
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