第2話 旅の始まり

この世界に降り立った俺は彩子と共にここを駆け抜ける。そう決めた俺と彩子。ボイスリアクトというアイテムはそれを可能にしてくれるのかもしれない。このアイテムは聞いたところによるとどんなモノでも生み出すことが出来るアイテムらしい。しかし、詳細は知らない。また、ボイスリアクトの上位互換、ウェーダーボイスリアクトというものも存在するらしい。数は5つでこの世界のすべてのモノを生み出すことが出来るらしい。下位互換であるボイスリアクトも生み出すことが出来るそうだが、これもまた詳細は不明である。この世界はボイスリアクトでもモノを生成でき、それを表現できることから文字通りゲームリフレクターと呼ばれている。俺の夢はボイスリアクトを使いこなし、ゲームリフレクターの世界観を構築することだ。このゲームリフレクターは仕様によると上も下も、外も中もないらしい。皆がこの世界でお互いに助け合って共生しているという。ボイスリアクトというアイテムを用い、この世界を自分で構築していきたい。上位互換であるウェーダーボイスリアクトはないが、ボイスリアクトを持っている俺なら何とかできるはずだ。


「やろうぜ、彩子!」


「何?」


「いや、何でもない」


俺はボイスリアクトを握り、モノを出す準備をした。


「クリエイト・・・・・ハウス」


「・・・・・」


「何も出ないじゃない」


彩子が俺に言いたいことがあるらしい。俺もいまだに使いこなすことが出来ないのは悔しい。


「それよりも俺の選んだ家どうよ」


「それまた聞くの?」


「あなたの選んだ家、いいなーとか思っているんだろ」


「そんなわけないじゃない」


俺たちがこの世界に来ていくらか時間がたった。ゲームリフレクターという世界は異世界というのをある程度再現できているらしい。忠実に再現されている家、窓、木、そのすべてが現実世界に近しい感じだ。だから、俺の神経を撫でてつい俺の欲望が出てきてしまう。彩子に俺の世界観というものを見せてやりたいと思っているのだ。どうせならおぼれ切ってほしいと。俺は転移する前、ゲームオタクだった。ゲームにはまりすぎていて、母親にバカにされたこともあった。ゲームプレイ時、やっぱり自分は欲が深くなっていると自覚することがある。現実世界とは反対にゲームの世界では欲を全開にして、世界を動き回った。しかし力不足になるという側面もあった。俺もこの世界に来て、それをうすうすと感じつつある。やはりこの世界のことを知らないので、どのようにボイスリアクトを使えばいいのかわからない。これまで様々な物を生み出すのに注力してきたのだが、生み出すことが出来るのは少数でできないものがほとんどなのだ。何が生み出せて生み出せないのかは把握していないが、原因はやはり自分がこの世界のことを知らず、能力も不足しているからだと考えている。


「クリエイト・・・・・リフリジェレイタ―」


やっぱり出すことはできないか。自分はこういうことすらできないと嘆くことが多いのだ。仲間が欲しい・・・。いろいろなことを考えていくうちに仲間が何の理由もなく欲しくなってくる。


「パーティー組まないか?」


「ん?」


やはり俺はせっかくこの世界に来たのだから、世界を変えていきたいと考えている。しかし俺一人の力では冷蔵庫一つも生み出すことが出来ないのだから、難しいだろう。際限のないゲームリフレクターなのだから、生み出し放題のこの世界でボイスリアクトを使わないという選択をすることはできない。どうしようもなくやりたくなってしまう。


「この家具、何処にしようか?」


「ここいいんじゃない?」


ああ、仲間が欲しい。仲間が欲しい。この世界を知りたい。そして俺の夢をかなえたい・・・。


「だからパーティー組まないか?」


「うーん。ここで過ごしていくのもいいんじゃないかな」


「俺は行きたい」


「そうなのね。いきましょう」


彩子が智也にガン詰めて忠告した。


「でも危険だと思ったら逃げてね」


「ここってそんな危険なのか?」


「危険じゃないとは言えないでしょう。世の中には予期しないことがよく起こるの」


「わかった。気を付ける」


「じゃあ支度しましょう!」


「おう!」


彩子が旅を了承してくれた。しかし俺はここでも不安なく過ごすことが出来るのに、俺自身が旅をすることを決めてしまった。自分はなぜ世界を構築したいのかわからない。現実世界では何もできなかった自分が、この世界ならなにか世界に貢献できるのかもしれないと考えたからなのか。どうしようもなく自分に襲い掛かってくる衝動が自分の中で巻き上がってくるのだ。このどうしようもない気持ちは皆に理解されるのだろうか。自分の気持ちを唯一理解してくれた彩子には十分に恩を返したいと思っている。彩子はいつでも俺の味方だった。俺はいつも自分だけで悩んでしまう性格だけど、彩子は理解していてくれているのかもしれない。だからなおさら彼女に何かしてあげたいと思っている。


「クリエイト・・・・・ジェントルマン」


「・・・・・」


智也の目のまえには何も現れなかった。智也は大きくため息をついた。


「どう、進んでる?」


「おう」


どうしようもない自分だけど、これはどうすることもできないのかもしれない。自分は機会があるのなら、やってやりたい。彩子も自分についてきてくれたらそんなにうれしいだろうか。ああ、仲間が欲しい。


「クリエイト・・・・・バッグ」


智也の目の前に大きなバッグが出現した。智也は神秘的光景に感動した。


「じゃあ、行こう彩子」


「そうね」


この先様々な困難が待ち受けるのかもしれない。しかしこの世のものを生み出すことが出来るボイスリアクトというアイテムを持ちながらこの世界に来たからにはあきらめるわけにはいかない。すばらしい仲間をつくることはできるのだろうか。できれば優秀な人がいいと思っている。いや、優秀な人がいいのだ。自分は欲が深いのでなるべく早く実現したいものがあるんだ。俺は昔、周りの人間の顔を見て物事を解釈するような人間だったのかもしれない。しかし機会を得たからにはそんな人間からは脱することが出来るのだ。何の理由もないのにも関わらず俺はこの世界の人間を幸せにしたいと考えている。世の中がおかしくなっている世界が嫌いなのだ、俺は。


「この家もずいぶんの間お別れね」


「でもきっと仲間を探して戻ってくるよ」


「そうね」


「じゃあ、行くか!」


「このままの状態で家が残ってるのかなあ」


「わからないけど、残っていてほしいわね」


「そうだな。早く帰ってこなくちゃな」


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