音の魔法で世界を旅する
夕村奥
第1話 勇者
300年前の町のはずれに体長40メートルの黒い体で構成された化け物が出現した。そのモンスターは悪魔と呼ばれた伝説のモンスターである。
「ゴオオオオオオオォ・・・」
口から一瞬光が生じると同時に住宅街に赤黒い光線が住宅街をまっすぐに突き抜け、光線上には何一つ残らなかった。
「ドオオオオンッ」
とてつもない威力の赤黒い光線を勢いよく放たれ住宅街を火の海にした。
「ドガガガガガガ・・・」
また、腕力も桁外れていて一撃で頑丈な赤レンガの建物を木っ端みじんに粉砕した。そのモンスターは出現地点から各地に赤黒い光線を放ちながら、周辺の建物を粉々にした。街に所属する冒険者はそれぞれ100人規模のパーティーを組み応戦したのだが、防御障壁を何重にも張っても口から光が一瞬見えて誰もそれを観測できずに粉々にするほどの光線によって、パーティーを壊滅させた。大きく頑丈な腕は一撃でパーティーを半分ほど戦闘不能に陥らせた。冒険者の応戦も空しくモンスターは中心部まで確実に歩を進めていた。
「キンッ」
冒険者の一人と思われる剣士が建物から現れ、渾身の一撃をお見舞いした。
「ドカンッ」
その冒険者はまるでスコップで土がすくわれるようににあっさりとはるか遠くに弾き飛ばされた。モンスターの目の前の教会には魔導士20名が横一列に並んでいる光景が確認できた。
「ドオン」
「ドオオォン」
「バーン」
彼らは一斉にファイアボールを放ったがモンスターには傷一つつかない。
「グオオオオオオオン」
モンスターは激怒して魔導士の方に光線を放出し、彼らは防御障壁を張ったのだが圧倒的威力の光線の前にはなすすべなく住宅街ごと彼らは吹っ飛んだ。モンスターは何事もなかったかのように歩き出し、人が大勢すむ街の中心部まで向かった。
「サクサクッ」
ある冒険者の攻撃がモンスターの後ろ脚に命中し、攻撃が皮膚を貫通した。モンスターが後ろを振り返るとそこにはエルフの姿があった。エルフは突然飛び上がり、モンスターの顔に風のブレードをお見舞いした。
「キイイインッ」
モンスターはブレードを腕で木っ端みじんに吹き飛ばし、反対側の前足をエルフに向けて猛スピードで振り回した。エルフはガードできそうもなく吹き飛ばされるところエルフの前に一瞬で現れ大楯で攻撃から身を守った大楯使いがいた。大楯使いが話しかけた。
「大丈夫か?」
エルフが恥ずかしそうに答えた。
「大丈夫よ。あんな攻撃へでもないんだから」
「じゃあ今回は俺たちだけでできるか?」
「無理よ。やっぱりあの人じゃなくちゃ」
「だろ。あいつらが来るまでのもう少しの辛抱だ」
モンスターは2人にかまわず歩き出したようだ。エルフがすかさずモンスターの目の前に現れ、行く手を阻んだ。
「ブブウウウウンンッ」
モンスターはエルフを腕で弾き飛ばそうと彼女を腕を彼女の下の方に構えたのだが、エルフはぎりぎりでかわし腕の上にのり顔面に攻撃をしかけた。傷は少しついたものもそれだけではモンスターの行進を止めることはできなかった。大楯使いがエルフを援護しようとしたとき、2人の超人が彼らの前に姿を現した。
「遅くなったな、お前たち」
大楯使いが彼らをずっと待っていたかのようにうれしい気持ちで答えた。
「やっと来てくれたか。俺たちは援護するからお前はあいつに攻撃してくれ」
「わかった」
「私も忘れてませんか?私だって攻撃できますよ」
「そうだった。じゃあ君たち二人に任せる」
エルフと大楯使いが援護にまわり、その他二人が攻撃を仕掛けた。ピンクの機体と大剣を装備した者がモンスターに猛攻を仕掛けた。
「ドオオオンッ」
ピンクの機体は両腕からビームを放ち、それがモンスターに直撃した。しかしそれはけん制にしかならなかった。
「グオオオオオオン」
モンスターは突然大声で叫び、4人の感覚を麻痺させた。その時モンスターが大剣を装備した者を薙ぎ払おうとしたが大楯使いがどうにか攻撃を受けきった。モンスターが攻撃している機にエルフとピンクはモンスターに立ち向かった。
「ギインッ」
しかしもう一方の腕で攻撃を受け止めた。モンスターの口に光が一瞬垣間見え、あたりが真っ白になった。
「ドドドオオオオオンンッ」
その赤黒い光線は先ほど放ったものよりも数段上の威力だった。メンバーは大楯使いがスキルを使い何とか耐えることが出来たのだが、あたりは粉々で大楯はその場で倒れてしまい3人だけが残った。大剣を装備した人物があたりを見回し、大楯使いを見た瞬間、彼のオーラが赤く変色した。すると彼が大剣を上に振り上げ、必殺技の準備をした。剣に水色のオーラがまとわり始め街中が一瞬白く光り、モンスターのまわりを水色の光が覆った。
「ドオオオオオオオオオンンッッ!!」
とてつもなく轟音が街中を駆け抜け、モンスターに特大の必殺技が直撃した。一定時間がたちモンスターはさっぱり消えていた。それを見ていた市民は一斉に歓喜の声を上げ喜び合った。モンスターが現れる前も勇者の存在を望んだが、モンスターがその街に出現したときには大いに勇者を熱望していた。勇者はその声に応え、この地に一目散にやってきてすぐさま街を脅かすモンスターを倒してくれた。その存在はその後何十年も彼らの胸に刻まれたのだが、最近は市民の心から消えつつある。
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