14話 異国の宴
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パーティーの時間が近付くと、ユキが来た。
着ているのは裾の広がったスカートにドレープが流れている、漆黒のドレス。首元と背中がレースになっていて、散りばめられた大小のクリスタルガラスが結晶みたいだ。本当に美しい。
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普段は厚着をしているので分かりにくいけど、ユキは意外と胸が大きい。真っ白な肌が透けるレースや、紅く色付いた唇も相まって、少し興奮してしまっている自分がいる。
そして、それはユキも同じみたいだ。微かに発情の匂いがする。パーティー中に感情を表に出すことは無いだろうけど、その後が少し不安だな。
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ユキの言うとおりだ。俺には要職に就いている者の意向を確認する目的もあるが、閒夜と七岷は普通に楽しんでくれればいい。
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パーティーが始まった。
先に舞台に上がったユキの紹介に合わせて、閒夜と七岷と共に舞台袖から出る。
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俺は代表として挨拶をしながら、参加者を観察する。広い会場に大勢が居るので感情の嗅ぎ分けは不可能だけど、全員が歓迎してくれている訳では無いことは分かる。
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会場に響く声の中、眩い光に照らされながらユキとグラスを鳴らす。左目に掛かっていた前髪がはらりと舞い、一瞬だけ交わされる視線。胸が熱くなる。
閒夜には言わなかったけど、こうして正式な手段でユキと会うことが出来た事実は俺にとって大きい。大統領になり、ようやくここまで来た。それを今更ながら実感した。
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舞台から下りてテーブルの前に立つと、早くも話し掛けられた。ユキの祖母であり、当代の龍主。レイラス・ファリアだ。既に年は70を越えている筈だが、その振る舞いからは老いを全く感じない。
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ファリア様はそれだけ言い残すと、すぐに離れていった。予想通り会話も事務的で、友好的では無いな。
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続いて話しかけたきたのは帝族では無いにも関わらず、巧みな戦闘技術から選帝戦第三位という戦績を残し、帝国軍の総大将を担っている若い男性。ラン・ロマイオ・ギウスだ。
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ギウスさんは選帝戦での決闘をきっかけにユキとも意気投合していて、
実際に接してみても、それは変わらないみたいだ。
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……初対面の相手に対して、秘書の容姿に言及することから始めたこの中年男性は、ルク・キムス・ダンエ。国会の議長を務めている男だ。
二人のどちらかとは言われていないが、恐らく閒夜のことだろう。閒夜が着ているドレスは背中を大胆に露出している、この国で人気のデザインだ。普段は厚着をする分、こういった場ではここぞとばかりに肌を見せる傾向にあるからな。
綺麗な背中や翼をアピールポイントとしていることもあり、
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ダンエさんは閒夜に値踏みするような嫌な視線を向けながら、グラス片手に去っていった。この男は他種族を見下していて、その言動から世間を騒がせることもある。しかし、本人はそれが当然だと思っているので悪気は一切無く、反省することもない。俺が大嫌いなタイプだ。
まあ、この国における国会は帝王の独裁政治を防ぐ役割でしかなく、権力も弱い。この男には影響力も大して無いので脅威には感じないな。
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……続いて話しかけてきたレシス様の言葉に割り込んできたこの少女は、ネイディン・ラウカ。まだ角も生え途中という幼い体でありながら、選帝戦において決勝まで勝ち上り、今は特攻隊の隊長?を任されている生粋の戦闘狂だ。
決勝で戦ったユキは、戦闘に楽しさを求めるあまり動きが雑になっているものの、純粋な力はユキよりもあると言っていた。
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ラウカ様がそれだけで止まるのか?という疑問もあるが、仮にそれだけで終わったとしても、彼女に本気で押されたら確実に骨折するだろう。少なくとも、今は応じない。しかし、問題は納得してくれるかどうかだ。
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……と思っていたら、救世主が現れた。
慌てて走ってきて、息を切れさせているのは、ラウカ様の姉であるダクア・メイラだ。明確に決まっている訳では無いものの、パーティーの主役に話し掛けるにも順番があるので、そのことを言っているのだろう。
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メイラ様はラウカ様を強引に説得すると、謝罪をしてきた。彼女は妹を止められる唯一の存在なので、早くも軍の補佐をしている苦労人でもある。
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この姉妹の間には呆れや恐怖といった感情も交わされているが、姉妹愛はあるみたいで何よりだ。
……というか、それより後ろにいるレシス様のことも気に掛けてあげて欲しい。
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閒夜と七岷の苗字にルビを振れませんでしたが、読み方はいつか出てくると思います。すぐに知りたい方は解読して下さい。
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