13話 ドレスアップ
会見は本当に何事もなく終えることが出来た。
ユキが俺のことを盟友と呼んで親密さを強調すると、レオディヌエ
やはり、現時点では国民の多くが
俺はグラファルア城内に用意された部屋に入ると、スーツを掛けて、ベッドに腰掛けた。
目立った装飾こそ無いものの、敷かれている絨毯やカーテンからは高級感を感じる。レオディヌエ
――コンコン
「莅塩大統領、入っても宜しいですか?」
「いいけど、何かあったのか?」
扉の外から
しかし、会談と会見が終わったし、連絡事項は先程スマホで済ませた。パーティーまで用事は無い筈だ。
――ガチャっ
「いいえ。グラヌ様との関係がどうなったのか、個人的に気になっただけです」
閒夜は部屋に入ると、鍵を閉めてから口を開いた。態度からも、匂いからも心配してくれていることは伝わってくる。
祖父の任期が終わった時の俺は、もう二度とユキに会えなくなると思って、周囲に伝わってしまうほど落胆していた。そして、それは俺が明確に大統領を目指し始めた時期とも重なる。
周囲には大統領を目指す理由を祖父の姿に感銘を受けたからと言っているが、閒夜はユキのことが理由だと気付いているのだろう。
だから、もしユキが俺のことを忘れていたり、嫌っていたら……と心配してくれているのだ。
「閒夜。心配してくれて本当にありがとう。でも、そのことは本当に気にしてないよ。外交上とはいえ親密さを強調してくれたし、閒夜も気にしないでくれ」
しかし、事実を話すつもりは無い。
閒夜のことは信用してるけど、俺の夢や各国首脳との関係は、首脳以外に話さないと決めている。
「本当ですか?」
「ああ」
疑っているようだが、たとえ閒夜が相手だろうと胸の内は悟らせない。
「……そうですか。何か話したいことがあれば、何でもおっしゃって下さいね。秘書としてでも、家政婦としてでも、それ以外としてでも、相談に乗りますから」
「ありがとう。本当に感謝してるよ」
「当然のことをしているだけですよ」
閒夜は本心で言っているようで、優しい笑みを浮かべた。ここまで尽くしてくれている相手を騙す罪悪感は、頭の片隅に置いておく。
表に出すことも、忘れることも許されない。
「そうだ。七岷は平気そう?」
「ええ。食事も楽しんでいましたし、先程もベッドの触り心地がいいと喜んでいましたよ」
「なら良かった。わざわざ言う必要は無いだろうけど、文化の違いに戸惑うこともあるだろうから、フォローは頼んだよ」
「分かりました」
事前に教えられることは教えたし、俺も気に掛けているけど、同性の閒夜の方が適任だろう。
少し仮眠を取るとパーティーの準備をする時間になったので、部屋を出た。三人で兵士の指示に従い、会場裏の更衣室に移動する。
「
「
閒夜と七岷と別れて個室に入ると、革靴からシャツまで黒で統一されたパーティースーツが用意されていた。光沢のあるシャツと蝶ネクタイが特徴的だ。
「
「
燕尾服を着た男性の
スーツ自体は着慣れてるけど、普段のものとは生地やフィット感が大きく変わるし、なるべくシワを付けないようにしたい。
「いかがですか?莅塩大統領」
俺が着替え終えて少しすると、個室から閒夜が出てきて、その場で華麗に回った。
黄色のドレスは胸元と背中が大きくV字に開き、太腿の辺りまで深いスリットが入っている。上からショールを羽織っているが、生地はとても薄く、肌は透けている。体を隠す用途では無さそうだ。
今回の衣装は事前に採寸、打ち合わせをした上でレオディヌエ
この国ではよく見かけるデザインだが、普段の閒夜はスーツかメイド服しか着ないので、本当に意外だ。
「似合ってるし、綺麗だよ」
少し驚いてしまったけど、本当に綺麗だと思う。スタイルがいいから、体のラインを強調するようなドレスがとてもよく似合っている。
「ありがとうございます。莅塩大統領も似合っていて、とても格好いいですよ」
「良かった。ありがとう」
昼間の会話や、本心で言われていると分かることもあり、少し気恥ずかしい。
「その、どう、です?」
続いて、七岷が個室から出てきた。
スカートを飾るフリルと、ウエストのリボンが特徴的な赤いドレスを着ている。肌の露出が控えめで、可愛らしい雰囲気が七岷にぴったりだ。
「七岷らしくて、可愛いと思う」
「はい。とても似合ってますよ」
人によっては捉え方が変わるので少し言葉に迷ったものの、思ったままの感想を伝えた。
「えへへ、嬉しいです。二人もすっごい素敵と思う、です。莅塩大統領はかっこいいし、閒夜さんは大人の女性って感じがして憧れちゃうです」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
顔を赤くして照れているけど、可愛いと言われて喜んでいる。変に気を遣わなくて良かったみたいだな
「あとどのくらいで始まるです?」
「大体15分後かな」
「楽しみです」
「ええ、そうですね」
閒夜はもちろん、七岷も緊張していないようで何よりだ。二人には秘書としての仕事も忘れて、存分にパーティーを楽しんで欲しいからな。
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