12話 辛釜焼き
グラヌフィオレのサラダに舌鼓を打ちながらお互いの近況などを話していると、扉が開き、
「
お皿に乗っていたのは、鼻を刺すような匂いがして、ジューッと音を立てている、真っ赤な塊だった。
トウガラシと泡立てた卵白を混ぜ、お肉を包んだものを窯で焼き、仕上げに高温の油を掛けて表面をカリッと香ばしくした有名なレオディヌエ料理。
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本当に懐かしい。
幼い頃のユキは病弱という理由を付けられ、公の場に姿を見せることは無かった。そんなユキが初めて自らの意思を貫いて、会談に参加した日。初めて強さを見せた日だ。
今思えばあの瞬間、ユキは帝王として開花したのだろう。
「……
俺はスプーンの背で割れ目を入れ、トウガラシを付けたままナイフで切り、口に運んだ。
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この料理は、外側のトウガラシを全て取り除けば少しの辛さしか感じない一方で、そのまま食べれば刺激的な辛さを味わえる。
衝撃的な見た目や美味しさもさることながら、各自で辛さを調整出来るところが有名な料理になった理由なのだろう。
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特にユキは外見を含め大きく変わったと思うけど、内面は昔と全く変わっていないからな。
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やっぱりか。
今のは遠回しではあるが、もっとレオディヌエ
レオディヌエ
しかし、食料供給。この一点においては大きな影響力を持っている。なんせ調理をこよなく愛する
永久凍土や塩害に悩まされている2つの国にとって、
「
なので、断る。
俺は世界平和を目指しているし、
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俺の返事に、ユキは大人しく引き下がった。
今回の会談は新しく大統領に就任した俺の顔合わせという名目なので、踏み込んだ内容を話すことは基本的に無い。
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じゃがいものポタージュから始まり、グラヌフィオレのサラダ、
ほぼ全ての料理にトウガラシが入っていて、身体を芯から温めてくれる。レオディヌエ
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お互いに首脳としての仮面を被って話していたので、煩わしさは感じた。しかし、久しぶりに話せて嬉しかったのも事実だ。
俺はココアを飲もうと、スプーンの半量ほどのトウガラシでココアを飾る。一方でユキは、二杯分のトウガラシで真っ赤に染め上げていた。
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「
この後は、記者達の前に出て会見を行う予定だ。……と言っても、具体的な内容は兵士がまとめ、両国で確認をしてから翌日に発表するので、会談の内容を軽く話して撮影を行うだけの簡易的なものだ。
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