11話 黒龍族の帝王様

 “朝日と氷と金の雲”を食べ終えた俺達が仮眠を取り、軽食の清湯スープ出汁茶漬けを食べ終えると、無事にレオディヌエ龍帝りゅうていに着いた。


 そしてバタバタバタ……と独特のエンジン音を響かせる車に一時間以揺られながら、要塞であり帝王様の住まいでもあるグラファルア城に移動して、秘書達と別れた俺は、応接間でユキを待っている。

 今回の会談は記者を入れずに非公開で行うので、前回の会場とは違い落ち着いた雰囲気の個室だ。




 ――バタンッッ!


𐎊𐎎𐎘𐎎𐎈𐎟𐎘𐎋𐎇𐎎……!」


 勢いよく扉が開け放たれる。漆黒のロングコートとスカートを身に纏い、純白の翼を大きく広げたユキが入ってきた。

 兵士が居るので威厳のあるように振る舞っているが、匂いからは久しぶりに会えて喜んでいるのが分かる。外面と内面の差が激しいな。


𐎟𐎋𐎘𐎎𐎘𐎎𐎌𐎟𐎂𐎎𐎘𐎎𐎊𐎂𐎟𐎌𐎇𐎕𐎍𐎕𐎂𐎔𐎕𐎃𐎍𐎎𐎟𐎕𐎑𐎎𐎌𐎕𐎊𐎔𐎕𐎎𐎟𐎊𐎎𐎘𐎎𐎊𐎇𐎃𐎇𐎎𐎕𐎘𐎊𐎟𐎁𐎕𐎃𐎇𐎎𐎂𐎎𐎍𐎟72𐎟𐎊𐎕𐎍𐎎𐎏𐎌𐎟𐎊𐎕𐎁𐎟𐎘𐎇𐎟𐎁𐎕𐎓𐎎𐎍𐎎𐎉𐎋𐎉𐎎𐎉𐎋


𐎕𐎎𐎊𐎎𐎘𐎎𐎝𐎋𐎏𐎕𐎋𐎙𐎋𐎉𐎕𐎑𐎌𐎃𐎘𐎋……!𐎖𐎋𐎘𐎓𐎎𐎕𐎖𐎍𐎕𐎎𐎃𐎖𐎖𐎟𐎃𐎇𐎎……!」


𐎟𐎏𐎃𐎊𐎊𐎍𐎎𐎖𐎇𐎎𐎇𐎟𐎍𐎏𐎎𐎊𐎎𐎘𐎎𐎍𐎎𐎖𐎇𐎎𐎒𐎟𐎖𐎕𐎂𐎟𐎁𐎕𐎏𐎎𐎇𐎟𐎌𐎇𐎕𐎕𐎘𐎂𐎎𐎘𐎇𐎌𐎃𐎌𐎟𐎁𐎕𐎘𐎋𐎎𐎈𐎎


𐎃𐎘𐎂𐎔𐎟𐎕𐎎……!」


 立ち上がって挨拶すると、ユキが親密な関係を強調するような言葉と共に手袋を外し、手を伸ばしてきたので、俺は肯定しつつ握手をする。


𐎊𐎕𐎏𐎃𐎌𐎖𐎃𐎁𐎕𐎃𐎂𐎂𐎋𐎍𐎋𐎖𐎎𐎍𐎃𐎒𐎃𐎂𐎂𐎕𐎃𐎍𐎎𐎖𐎎𐎓𐎎𐎁𐎟𐎘𐎁𐎎𐎂𐎕𐎕𐎖𐎏𐎃𐎊𐎇𐎎……!」


 ユキの言葉を合図に兵士が扉を数回叩くと、扉が開き、メイド服を着た女性の黒龍族アルピヌが入ってきた。


𐎐𐎋𐎟𐎊𐎇𐎃𐎟𐎋𐎘𐎃𐎆𐎋𐎏𐎏𐎃𐎁𐎕𐎏𐎃𐎇𐎃𐎇𐎟


 今回はコース料理らしい。

 まず机に並べられたのは、緑のパセリに飾られた、乳白色のポタージュだ。


𐎕𐎖𐎊𐎃𐎏𐎎𐎌𐎟 𐎁𐎟𐎖𐎖𐎟 𐎏𐎃𐎇𐎃𐎇𐎟𐎟𐎈𐎕𐎈𐎃𐎂𐎟𐎟𐎁𐎟𐎁𐎃𐎈𐎈𐎟𐎌𐎎𐎁𐎟𐎖𐎕𐎆𐎕𐎎𐎊𐎎


 レオディヌエ龍帝りゅうていのコース料理の開幕を告げるポタージュには、冷えた身体を温め、この後に続く辛い料理に備えて胃を保護する役割もあるので、とても優しい味だ。舌触りも滑らかでとても美味しい。


𐎃𐎘𐎂𐎔𐎟𐎊𐎟𐎖𐎎𐎟……!𐎟𐎊𐎇𐎃𐎇𐎎𐎌𐎟𐎃𐎖𐎕𐎆𐎆𐎃𐎇𐎎調𐎁𐎃𐎋𐎘𐎎𐎁𐎟𐎕𐎍𐎕𐎓𐎖𐎕𐎎𐎌𐎕𐎂𐎔𐎟𐎒𐎁𐎟𐎖𐎘𐎎𐎊𐎇𐎌𐎎𐎏𐎃𐎟𐎊𐎟……!」


𐎔𐎎𐎓𐎌𐎃𐎘𐎁𐎕𐎃𐎊𐎏𐎟𐎇𐎇𐎃𐎇𐎕𐎈𐎟𐎏𐎟𐎌𐎕𐎏𐎕𐎃𐎇𐎇𐎕𐎂𐎔𐎟𐎊𐎟𐎓𐎋𐎎𐎘𐎎


𐎏𐎟𐎌𐎒𐎃𐎈𐎎𐎌𐎟𐎒𐎃𐎖𐎖𐎎……!」


 伍木国ごもくこくとの外交においては料理の美味しさが重要視されるので、政府関係者は気を遣っているのだろう。

 過去には軽食が不味いと言って、会談前に帰国してしまった大統領さえ居るくらいだからな。


「……𐎌𐎕𐎊𐎔𐎕𐎎𐎇𐎕𐎌𐎕𐎂𐎎𐎌𐎁𐎕……!𐎐𐎋𐎃𐎘𐎁𐎎𐎟𐎌𐎕𐎓𐎕殿𐎎𐎈𐎃𐎘𐎟𐎁𐎕𐎂𐎟𐎈𐎕𐎂𐎔𐎟𐎕𐎍𐎕𐎟𐎕𐎂𐎃𐎏𐎟𐎖𐎖𐎕𐎟𐎌𐎃𐎘𐎎𐎄𐎟𐎖𐎖𐎕𐎊𐎊𐎕𐎍𐎕……!」


 ユキはポタージュを一口飲むと、静かにカップを置き、話し始めた。


𐎍𐎟𐎖𐎎𐎌𐎕𐎂𐎎𐎌𐎁𐎎𐎟𐎏𐎟𐎘𐎊𐎎𐎃𐎘𐎂𐎎𐎌𐎃𐎂𐎔𐎟𐎊𐎕𐎃𐎄𐎟𐎖𐎖𐎕𐎊𐎊𐎕𐎍𐎎


 多くの黒龍族アルピヌが黒髪の中で、ユキの髪は純白だ。それは、黒龍族アルピヌの象徴である角と尻尾と翼も同様であり、漆黒こそ美しいとする黒龍族アルピヌにとっては異質な存在。過去には髪や翼が白いというだけでことさえあったそうだ。

 帝族に生まれたユキに対しても世間の常識は牙を剥き、国民どころか実の母親からも疎まれていた。

 しかし、そんな他種族の常識に疎い当時の俺にとっては綺麗な髪だったのだ。


𐎟𐎊𐎏𐎌𐎕𐎍𐎕𐎃𐎍𐎎𐎖𐎃𐎘𐎎𐎊𐎇𐎌𐎃𐎓𐎌𐎃𐎇𐎕𐎇𐎋𐎁𐎕𐎘𐎟……!𐎐𐎋𐎟𐎖𐎖𐎟𐎏𐎃𐎌𐎎𐎖𐎟 𐎍𐎕𐎔𐎃𐎘𐎘𐎎𐎒𐎃𐎇𐎇𐎎𐎂𐎃𐎍𐎄𐎕𐎃𐎌𐎟𐎕𐎁𐎟𐎃……!𐎏𐎌𐎎𐎄𐎃𐎄𐎕𐎖𐎍𐎟𐎘𐎇𐎟𐎟𐎓𐎌𐎃𐎆𐎕𐎟𐎃𐎖𐎖𐎟𐎇𐎋𐎟𐎏𐎃𐎌𐎎𐎖𐎟𐎊𐎟𐎊殿𐎎𐎘𐎎𐎊𐎟𐎁𐎋𐎇𐎎𐎂𐎎𐎊𐎕𐎊𐎋𐎖𐎇𐎌𐎎𐎘𐎎……!」


𐎇𐎕𐎊𐎇𐎎𐎊𐎟𐎍𐎏𐎖𐎕𐎂𐎟𐎍𐎟𐎘𐎇𐎟𐎌𐎃𐎂𐎂𐎎𐎘𐎇𐎃𐎘𐎁𐎎𐎕𐎒𐎃𐎇𐎇𐎕𐎁𐎃𐎖𐎍𐎕𐎎𐎏𐎋𐎘𐎇𐎎𐎁𐎕𐎈𐎕𐎊𐎇𐎃𐎊𐎎𐎓𐎓𐎟𐎇𐎇𐎕𐎈𐎎𐎕𐎘𐎎𐎖𐎇𐎌𐎟𐎑𐎌𐎃𐎘𐎋𐎒𐎋𐎘𐎎𐎍𐎕𐎘𐎃𐎇𐎎𐎕𐎍𐎏𐎟𐎌𐎃𐎇𐎎𐎌𐎟𐎏𐎟𐎌𐎖𐎃𐎊𐎋𐎃𐎃𐎄𐎕𐎖𐎕𐎇𐎃


 ユキの本心からの言葉に、俺も同じように返す。

 実際、帝王の選定には決闘の結果が重視される。他の帝族に圧勝したからこそ、ユキが帝王の座に着いているのだ。


𐎌𐎕𐎊𐎔𐎕𐎎𐎁𐎕𐎌𐎟𐎄𐎄𐎟𐎂𐎎𐎊𐎕……!𐎍𐎃𐎟𐎈𐎟𐎌𐎎𐎂𐎔𐎟𐎇𐎕𐎊𐎎𐎘𐎎𐎓𐎌𐎃𐎇𐎎……!𐎘𐎎𐎘𐎖𐎎𐎁𐎕𐎍𐎟𐎘𐎇𐎕𐎂𐎔𐎟𐎌𐎎𐎍𐎃𐎕……!」


𐎐𐎋𐎃𐎘𐎁𐎎𐎖𐎔𐎎𐎒𐎃𐎇𐎇𐎎𐎔𐎎𐎂𐎃𐎏𐎕𐎇𐎎


𐎕𐎘𐎎𐎖𐎇𐎌𐎟,𐎏𐎋𐎎𐎕𐎂𐎔𐎕𐎃𐎍𐎃𐎌𐎍𐎕𐎙𐎋𐎉𐎕𐎂𐎎𐎍𐎟𐎋𐎘𐎃𐎈𐎎𐎖𐎇𐎃……!𐎕𐎍𐎍𐎃𐎓𐎕𐎘𐎎𐎂𐎔𐎟𐎘𐎎𐎘𐎊𐎕𐎃𐎍𐎎𐎕𐎖 𐎇𐎕𐎏𐎎𐎁𐎕𐎏𐎟𐎌𐎊𐎎𐎘𐎟𐎂𐎔𐎟𐎊𐎕𐎂𐎔𐎕𐎃𐎍𐎃𐎘𐎎𐎕𐎘𐎐𐎋𐎟𐎖𐎍𐎎𐎁𐎎……?!」


「…𐎄𐎟𐎘𐎟𐎃𐎖𐎖𐎎𐎌𐎃𐎖𐎃𐎊𐎂𐎕𐎃𐎍𐎟𐎖𐎎𐎒𐎃𐎌𐎟𐎙𐎋𐎉𐎕


 今回の会談ではユキと俺の関係を適度に見せる予定なので、少し迷った素振りを見せてから従った。

 事前の打ち合わせはほとんど出来なかったけど、予定通りに進めてくれているな。


𐎐𐎋𐎟𐎊𐎇𐎃𐎊𐎃𐎌𐎃𐎋𐎘𐎕𐎘𐎊𐎃𐎖𐎃𐎇𐎃𐎁𐎕𐎑𐎌𐎃𐎘𐎋𐎒𐎕𐎎𐎌𐎟


 続いて黒龍族アルピヌの女性が持ってきたのは、グラヌフィオレを含む数種類の野菜に赤いソースが添えられた、刺激的な匂いがするサラダだ。あのソースには大量のトウガラシが入っているのだろう。


𐎂𐎎𐎍𐎟𐎏𐎌𐎎𐎄𐎃𐎄𐎕𐎖𐎍𐎟𐎘𐎇𐎟𐎊𐎃𐎏𐎌𐎃𐎕𐎐𐎋𐎟𐎊𐎇𐎃𐎈𐎟𐎌𐎁𐎋𐎌𐎃𐎟𐎖𐎃𐎍𐎕𐎃𐎏𐎌𐎟𐎒𐎟𐎌𐎕𐎇𐎃……!𐎓𐎎𐎁𐎟𐎇𐎟𐎈𐎕𐎃𐎏𐎏𐎕𐎟𐎘𐎎……!」


𐎊𐎕𐎃𐎁𐎕𐎌𐎟 𐎕𐎖𐎈𐎟𐎌𐎎𐎘𐎎𐎘𐎖𐎔𐎎𐎃𐎘𐎂𐎎𐎌𐎃𐎍𐎃𐎘𐎓𐎕𐎃𐎇𐎎𐎐𐎋𐎕𐎘𐎁𐎕𐎊𐎟𐎓𐎌𐎟𐎇𐎃𐎍𐎟𐎘𐎇𐎟𐎘𐎎𐎘𐎈𐎟𐎁𐎟𐎈𐎎𐎖𐎎𐎌𐎃𐎂𐎔𐎈𐎟𐎘𐎕𐎊𐎊𐎟𐎊𐎟𐎌𐎈𐎕𐎇𐎎𐎃𐎐𐎋𐎟𐎊𐎇𐎎𐎕𐎘𐎂𐎎𐎘𐎇𐎌𐎎


 ブロッコリーを白くしたような見た目をしているこの野菜は、レオディヌエ龍帝りゅうていでしか栽培されていない上に、ユキの人気や影響力を象徴する高級食材なので、近年の外交の場では頻繁に目にする。

 なんせ、それまでは見向きもされていなかった野菜を視察の際にユキが気に入り、その名を冠したことで需要が増え、高級食材と言われるまでに至ったのだから。

 それ程までにユキは国民からの人気があり、愛されている。常に俯き、怯えていた昔のユキを知っている身からすると、本当に凄いことだと思う。


「……𐎕𐎖𐎓𐎋𐎊𐎇𐎎𐎖𐎟𐎓𐎓𐎟𐎌𐎎𐎔𐎃𐎋𐎘𐎃𐎁𐎎𐎖𐎂𐎟𐎆𐎆𐎃𐎁𐎟𐎖𐎕𐎂𐎃𐎇𐎃𐎟𐎊𐎎𐎏𐎌𐎃𐎇𐎇𐎋𐎇𐎇𐎎𐎖𐎃𐎂𐎎𐎘𐎊𐎕𐎊𐎇𐎟𐎘𐎆𐎃𐎓𐎎𐎍𐎍𐎎𐎊𐎃𐎟𐎍𐎎𐎖𐎇𐎎𐎏𐎕𐎃𐎂𐎟𐎈𐎎𐎖𐎟𐎊𐎕𐎃𐎄𐎄𐎕𐎘𐎃𐎃𐎖𐎖𐎃𐎏𐎕𐎂𐎂𐎃𐎘𐎇𐎟𐎆𐎆𐎃𐎁𐎟𐎖𐎖𐎃𐎊𐎃𐎖𐎊𐎃𐎟𐎁𐎟𐎁𐎃𐎈𐎈𐎟𐎌𐎎𐎁𐎟𐎖𐎕𐎆𐎕𐎎𐎊𐎎


𐎊𐎎𐎏𐎌𐎃𐎇𐎇𐎋𐎇𐎇𐎎𐎊𐎟𐎍𐎄𐎌𐎃𐎊𐎎𐎁𐎁𐎕𐎊𐎒𐎃𐎌𐎟𐎕𐎍𐎕𐎟𐎕𐎓𐎋𐎊𐎇𐎕……!」


 本当は食べたことも、調理したこともあるが、感想は本物だ。

 味もさることながら、他の野菜には無い特徴的な食感は俺も気に入っている。






ⓡⓡⓡ


1ヶ月間こうして3日毎の予定通りに投稿できて嬉しいです。(既に日付が変わっている気がするのは気のせい)

ストックが切れたり、遅筆だったり、……などの諸事情により次話から毎週曜日22:05投稿になります。なお、それ以外の時間に突発投稿する可能性もあります。

更新は途切れないのでご安心を。

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