第5話

そうこうしているうちに、五月も終わりに近づいてきました。

六月に入ったら、今度はチョケキラオへ行くことになっています。

チョケキラオ…なんだそれは? と思われそうな固有名詞ですが、遺跡の名前です。

第二のマチュピチュとも言われているようですが、山の奥にあって、アクセスがとても不便な場所にあります。

ということで、数日間テント泊をすることになりました。

ホットソークどころか、石鹼で洗うことすらできそうにありません。

山の中では、都会にいないような菌がうようよしているかもしれません。

さあ、不安定なピアスホールはどうなってしまうのでしょうか!?


チョケキラオへ行くためには、まずクスコに滞在する必要があります。

高標高地域で酸素の薄い環境に慣れておきたいこともあり、数日前からクスコ入りすることにしました。

滞在日数が伸びるにつれて、買うピアスの量も増えるのが世の常です。

特に、今回の南米滞在でクスコに来るのは最後かもしれないと思うと、気に入ったものはとりあえず買っておかなければという気にってきます。

使わなかったらメルカリで売ればいいだろうなどと思いながら、またまたピアスは増えていくのでした。


「ピエドラ・デ・ラ・ルナ」という石を発見、つまり「ムーンストーン」とのことですが、スペイン語にするとまた違う石に思えてくるから不思議です。

「天然ものよ」

99%うそだろうとは思いましたが、ペルーのムーンストーンなんて、例え偽物だとしても日本にはないはずです。思わず記念に(?)買ってしまいました。

このピアスには、もう一つ重要な点がありました。後ろについている丸いキャッチャーです。

子供用のピアスには、たびたびこういった丸いキャッチャーがついているのです。

このピアスなら安心してつけられるかも、という思いもあったのでした。



山の中へ行くと、普段とは違う回復力が働くのでしょうか。

チョケキラオでは、一度も洗浄しなかったのにも関わらず、傷口に支障が出ることはありませんでした。

四日にわたる徒歩の旅を終えると、せわしなくクスコへ戻り、次はプーノ、タキーレへと旅立ったのでした。


タキーレ、というのもまた、比較的ワイルドな場所です。

一応有名な観光地ではありますが、チチカカ湖にある島で、陸のプーノからモーターボートで三時間かかります。発電所もなく、電力はソーラーパネルに頼るのみ。

車もなく、重機が入れそうな様子もありません。

歩道が舗装されていたり、広場には大きな建物があったりしているのですが、どうやって工事しているのか、気になるところではあります。


というわけで、宿ではシャワーのようなものは特に見当たりませんでした。

宿の娘さんは、濡らしたタオルで手足を拭いているようでした。

(翌月に会ったドイツ人の青年たちは、9℃の湖で水浴びしたそうですが、まあ、思い出づくりだったそうです)。

トイレのある部屋で水を浴びたりはできそうでしたが、暖房もなくひたすら寒いので、風邪をひくこと前提でないと水浴びはできなさそうでした。

ちょっと耳裏を拭きたいなという気もしたので、ついでに今までの逆さピアスをはずし、買ったばかりのピエドラ・デ・ラ・ルナピアスに付け替えました。

キャッチャーを差し込むのは慣れるまでは大変な作業で、おそらく五分以上かかったものと思われます。

もしかすると、今回穴をあけてから、初めて自分で行った付け替えだったかもしれません。

(大学生の頃開けたことがあったので、人生初の付け替えではありませんでしたが)。

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