第13話
首に縄をうたれ、回廊を肩を
背後につくのはバドリという雑種身分だ。
私の左腕は欠損しており、肩下から縛られている。無論、その姿は偽装であり、その縄などは噛み破ることは造作もない。
目的はそのヴィナマの格納庫へ接近することだ。
バドリという男は、雑種とはいえ技術者として優秀だったのだろう。かつアラム語さえも解することで、虜囚となったアーリア人に対する通詞としての役割もあったようだ。
我らは純潔を尊ぶ。
雑種身分など唾棄の極みである。
この白い肌を焦がすのは、日輪の他は許容できない。
己に褐色のシャリーラでも混じれば、自らその素っ首を叩き折るだろう。そう考えていた時期もあった。蛇の化身となった今後は、宗旨替えをする。この肉体をして、復讐に費やしてくれる。
ふと舌の奥に、苦い悔恨が蘇ってくる。
ごくりとそれを唾液とともに流し込む。
ここで粗暴な情動は抑えないとならぬ。
「してそのヴィナマというのはどういうものだ」
回廊の人気のない場所でバドリに詰問した。
それを簡潔に
ヴィナマというのは神々の乗り物だということでございます。
神々が天上界より降臨されるときに使われました。
クリタ紀よりも遥かな昔、天空に月のなかった悠久の大昔のことです。
神々はこの地にまず厚い雲を割って、光を
次に大地を捧げ上げ、海を沈め天空から雨を注ぎます。
大地には野草と花と樹々を、さらに海と大河には魚と蟹と海老と海月を。さらに大地には獣と鳥と虫を天空より解き放ちました。
そして神々は天上界へとお戻りになりました。
大地に命が満ち溢れる途方もない、時間を待つことにしたのです。
そも神々はご長命であらせました。彼らは天上界に座している限り、年を重ねることがなかったのです。
ですのでその間に何度も、ヴィナマで大地を検分にご降臨されました。
ある日、我らと同じく二足歩行をする獣が、大地にありました。その獣を詳しく調べますと、かなりシャリーラが近いとわかりました。
神々の息子たちは、自らの妻らを欲していました。
そこで息子たちは我らの祖先のシャリーラに功徳を施しました。それは神々が禁じていたことです。
功徳を受けた獣から何世代かを経て、美しい娘たちが生まれました。
そこに至り神々の息子たちが、それらを娶りました。息子たちとの交合で生まれた子らが半身半神のリシ人にございます。
息子たちの浅ましさに神々は失望され、再び天空の星に昇天されたのです。そして二度と再び現れず、姿をお隠しになったのです。
リシ人は長命でございました。
彼らもまた神々の息子たちのヴィナマの坐乗を許諾され、天上界でお過ごしになることがありました。
そうそのリシ人が地上でお過ごしになる宮殿を、そもそもランカと呼び、それが都市へと発展していくのです。ランカは代々そのリシ人によって、静謐が保たれていたのです。
話の腰を折った。
「その神々の息子とやら、それは今どこに在るのか」
「・・それが・・行末は分かりませぬ。かの十王戦争が大地を熱波と熱線に
それがヴィナマがこの地にある理由であるのか。
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