第35話 冒険者ギルドへ行く途中で胸を押しつけられる

 古代バルト神殿跡――難易度A級ダンジョンだ。

 このダンジョンの最深部に、主人公ジーク専用武器【神剣デュランダル】がある。

 原作のシナリオでは、冒険者ギルドと協力してダンジョンを攻略していく。


 まずその前に、冒険者ギルドへ挨拶に行く。


「ちょっと狭いな……オリヴィア」

「そうですか、ユリウス兄さま? わたしはちょうどいいのですが……?」


 俺たち4人(アルフォンス、オリヴィア、ユリウス、ジーク)は狭い馬車に乗って、迷宮都市【ロンダルディア】を目指していた。

 王都から東にある。距離は馬車で1日。

 かつて都市の中心に迷宮があって、その周りに街がある。

 名高い冒険者ギルドがたくさんある。

 あとは、犯罪組織や反体制派や邪教カルトとか……ヤバい連中が潜んでいる。

 人はロンダルディアをこう呼ぶ――「無法の都」だと。


「王族の俺を馬車の中にすし詰めにするなんて……不敬にもほどがあるぞ」

「あら? そうかしら? 私はちょうど良いと言うか……最高です」


 やけに狭い馬車だ。


 原作のシナリオでは、アルフォンスは冒険者ギルド派遣イベントに参加しない。このイベントには3人(オリヴィア、ユリウス、ジーク)が出てくる。

 本当なら、アルフォンスはすでに退場して、二度と出て来ないキャラ。

 つまり、アルフォンスはこの馬車に乗らない。もともと3人で乗る馬車だから4人では狭すぎるのだ。


「オリヴィア……兄として忠告するが、ヴァリエ侯爵と密着しすぎではないか? ヴァリエ侯爵は男子だぞ」

「ユリウス兄さま、わたしとアルフォンスは、お友達なのです。お友達なればこれぐらいの距離は普通ですよ?」


 たしかにユリウスの言う通りだ。

 俺の隣に座っているオリヴィアが、俺の身体にぴったりと密着してくる。

 オリヴィアのたわわな胸がぎゅうぎゅう当たる……!


 ふにょん! ふにょん! ふにょん!


 (めちゃくちゃ柔らかい……っ!)


「しかし……やはりくっつきすぎだ……」

「仕方ないのです。お兄さまの言う通り、この馬車は狭いのですから」


 ニコニコしながら、ユリウスに反論していくオリヴィア。

 

 ガタンっ!


 馬車の車輪が小石にぶつかったのか、大きく揺れた。


 オリヴィアの身体が、もっと強く寄りかかってくる。

 吐息がかかるくらい、オリヴィアの顔が俺に近づいてきて。


「きゃあ!(触ってもいいんですよ)」

「え……?」


 (今、何か聞こえたような……?)


「すっごく揺れましたね。アルフォンス、わたしを守ってくれてありがとう」

「え、いや……俺は何もしてないけど……?」

「そんなことないです! アルフォンスは王子様のように優しく抱き止めてくれました!」

 

 (抱き止めてないが……?)

 

 冗談で言っている……ようには見えない。

 目がガチだ。


「そうか……とにかく、オリヴィアが無事でよかったよ」

「ありがとう! アルフォンス♡」


 さらにぎゅうっと俺に密着してくるオリヴィア。

 オリヴィアの体温が伝わってきて熱い……


 (! いったいなんだ?)


 なんだか冷たい視線を感じる。


 (ジークからか……?)


 俺が気づくと、ジークは顔をそらした。



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