第30話 主人公の代わりにハーレム展開が

「あたしがアルフォンスの隣に座るっ!」

「ヤダっ! あたしがアル様の隣がいい!」


 アムザックの店に、俺たち3人(俺、レギーネ、リーセリア)は入った。


 こじんまりした店で、テーブルは4つしかない。


 髭もじゃの年老いたドワーフが店主だ。


 で、今は。


 誰がどこに座るかで2人(レギーネ、リーセリア)が揉めているわけで。


「これはね、リーセリアのためなの。アルフォンスみたいな女に飢えている奴が隣にいたら大変なことに……」

「あたしはアル様の信じているから大丈夫……っ!」


 リーセリアは俺の腕を掴んで、俺を自分の隣に座らせた。


「アルフォンスっ! あたしの隣に座りなさいっ!」

「いいえ。アル様はあたしの隣に座ります。だってあたしとのデートだもの」


 バチバチバチバチ「…………!」

 

 原作だと、レギーネとリーセリアは、ジークを取り合うのだが、


 (もしかして、モブのアルフォンスを取り合ってる……?)


 話の流れが、原作のレギーネ√そっくりだ。


 取り合う男がジークじゃないだけで。


 このままじゃ、原作にまた介入してしまう。


 俺は余計なことに、巻き込まれたくない。


 2人から自然と離れていかないとな……


 ★


「すごい量ね……」


 目を丸くするレギーネ。

 

 皿いっぱいに、アムザックが盛られる。


 香ばしいパイの匂いがする。


「せっかくだからアル様にたくさん食べほしいと思って……」


 リーセリアが不安そうに言う。


「うん。ありがとう。腹減っていたから助かる」


 実際、俺はアムザックを食べてみたかった。


 肉もけっこう好きだし。


「ふんっ! またデブになるわよっ!」

「あら。アル様はカッコいいです」

「リーセリア、ありがとう」

「ぐぬぬぬ……っ! ふーんだっ!」


 ぷいっと、レギーネは顔を背ける。


 (よかった。やっぱりレギーネからは嫌われてる)


「アル様、あーんして?」


 リーセリアはアムザックを手に掴んで、俺の口元に近づける。


 原作でもあったシーン。


 ここで選択肢が出てくる。つまり、あーんを断るか断らないか。


 あーんすれば、リーセリア√に入る。


 逆にあーんしなければ、レギーネ√のままだ。


 レギーネの好感度は低いから、レギーネ√に入ればこのまま婚約破棄して終了だ。


 それからレギーネは、ジークの元に行くだろう……


「いや、いいよ。自分で食べられるから」


 原作のジークのセリフを言う。


 (これでリーセリア√は回避だな……)


 と、思っていたが、


「ダメです。アル様に絶対に食べてもらうために誘ったんですから。さ、あーんしてください」


 ぐいっと、さらにアムザックを近づけてくる。


 原作だと、ジークが断れば諦めるはずなのに。


 (これは原作にない展開だぞ……?)


「アルフォンス、あーんしなさい。リーセリアに食べさせてもらうなんて、アンタには勿体無いわ。幼馴染のあたしが代わりに食べさせるから」


 レギーネも、アムザックを近づけてくる。


「「さあ、あーんして!」」


 (こんな展開、原作になかった……っ!)




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