第24話 俺のおっぱいが持って行かれる ジーク視点

【ジーク視点】


「マジかよ……ヴァリエ侯爵が勝った」

「あり得ないだろ」

「俺の金があぁぁっ!」


 アルフォンスが勝ってしまった……


 学園のほとんどの連中がガベイジに賭けていたから、金を失ったヤツラの恨み節が聞こえる。


 俺もガベイジに賭けていた。


 アルフォンスは負けることになっていた。


 俺のライトニング・アローを足に受けて、ヤツは動けなくなるはずだった……


 (なんでだ……っ! なんで俺の攻撃が効かない……っ!)


 完璧な偽装魔法で、姿を隠し、音もなく、ライトニング・アローを放った。


 誰にも気づかれるはずがない。


 なのに、スライムごときに俺の攻撃は防がれた……


「アル様、イケメン……っ!」

「ヴァリエ侯爵って強いんだな」

「マジですげよ!」


 たくさんの学園生が、アルフォンスのところへ集まる。


 (クソ……っ! みんながアイツをチヤホヤする……)


 「クソ雑魚」だと思われていたアルフォンスが、Aランク冒険者のガベイジに勝ったんだ。


 新入生の中では、一番強い魔術師であることは間違い。


 (たぶん、学園で一番強いかも……)


 最強は、ジーク。

 

 最強は、主人公のポジション。


 そうだったはず。


 アイツは、俺から「最強」を奪った……


「ヴァリエ侯爵、クズ呼ばわりしてすまなかった」

「本当にヴァリエ侯爵はお強いのね……今までごめんなさいっ!」

「これからはお友達になりたいですうっ!」


 今までアルフォンスをバカにしていたヤツラが、手のひらを返したように、アルフォンスに媚び始める。


 みんなこぞって、アルフォンスと仲良くなろうとしている。


「ヴァリエ侯爵……。キミは本当にすごかった。キミを雑魚と言ったこと謝る。今まで非礼を許してくれ」


 ガベイジが、アルフォンスに深く頭を下げた。


 (な……っ! ガベイジがアルフォンスに謝っただと……っ!)


 プライドの高いガベイジが謝るなんて、あり得ない。


 ガベイジは、そんなキャラじゃないはずなのに……


「……別にいいよ。気にしてない」

「ありがとう……っ! キミはなんていい人なんだ!」


 (寛大に、許しただと……っ!)


 「クソ雑魚」「クズ貴族」「無能」――


 散々、罵ってきたガベイジを、許すとは……


 原作では、アルフォンスは執念深く相手を恨む。


 自分を侮辱したヤツを、絶対に許さないキャラだ。


「ヴァリエ侯爵……。優しすぎる……」

「なんて器の大きい人なんでしょうっ!」

「かっこいい……抱かれたいわっ!」


 アルフォンスの評価が、急上昇している……


 (クソ……っ! 本当ならジークが……)


 原作のイベントでは、ジークが決闘でガベイジを倒した後、ガベイジを寛大に許す。


 それでジークの株がどんどん上がっていくはずだった……


「みなさん。これでヴァリエ侯爵がギルド派遣に選ればれたことに、異議はありませんね?」


 ロゼリア先生が、Aクラスのヤツラに問いかける。


 (ロゼリアはアルフォンスのせいで自殺するキャラのはず……。どうしてこの学園にいるんだ?)


 そうだ。そもそも、ロゼリアが学園に登場している時点でおかしい。


 しかも、アルフォンスの都合が良いように話を運びやがる。


「うん。ヴァリエ侯爵が適任だ」

「アル様がAクラスで一番強いんですもの」

「ヴァリエ侯爵、頑張ってっ!」


 全員が、アルフォンスをギルド派遣に推す。


 (本当ならあんなヤツいないのに……っ!)


 俺は血が出るほど、強く拳を握りしめる。


「アルフォンス。クラス全員があなたの実力を認めました。あたし……。めっちゃくちゃ嬉しいですっ!」


 オリビィアがアルフォンスに抱き着く。


 たわわな胸が、アルフォンスに当たりまくる。


 (クソ……っ! あのおっぱいは俺のものだったのに……っ!)


 オリヴィアは、原作のメインヒロインで、俺の推しのヒロイン。


 なぜ「推し」なのか?


 それは、オリヴィアが巨乳だからだ……っ!


 母性溢れるあの豊満な胸……。まさに俺の求めていたもの。


 このゲームは、18禁のエロゲだ。


 だから好感度の高いヒロインとの、エッチシーンがある。


 (あのおっぱいで、いろいろしてくるんだよな……)


 ジークに転生した時、まっさきに思い浮かべたのは、オリヴィアとのそれ。


 ゲームのエッチシーンだけ見る設定で、何度も見て、俺の遺伝子をティッシュにぶちまけた。


 (やっと本物オリヴィアと繋がれると思ったのに……)


 全部、全部、全部、アルフォンスに持って行かれる……っ!


「今度こそ、殺してやる……っ! 絶対に!」


 

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