第15話 強制的にAクラスに「才能ある者は、力を使う義務があります」

「いったい何だよ……」


 教師に呼び出されるようなことは、何もしていないはずだが。


「あいつ何やらかした?」

「いきなり呼び出しかよ」

「さすがクズ侯爵w」


 周りの生徒たちも、気になっているようで。


 目立ちたくなかったのに、注目を浴びてしまう。


 俺が教員室へ向かうと、


「アルフォンス様っ! お久しぶりですっ!」

「ロゼリア先生!」


 教員室で俺を待っていたのは、ロゼリア先生だった。


「ロゼリア先生……どうして学園に?」

「ヴァリエ侯爵に紹介してもらったんです。セプテリオン魔法学園の教師に」


 ロゼリア先生の話によれば……


 ロゼリア先生は俺の家庭教師を辞めたあと、


 セプテリオン魔法学園の教師に就職した。


 アルフォンスの父親、ヴァリエ侯爵が推薦して。


【キモデブのバカ息子を変えてくれたっ!】


 と、圧倒的感謝をしたからで、


「で、ロゼリア先生。俺、何かしましたか?」

「ええ。アルフォンス様は、とっても悪い子です」

「悪い子?」


 まったく身に覚えがないのだが……


「さっきの魔力測定で……アルフォンス様は実力を隠しましたね?」

「そのことですか……」


 ロゼリア先生は、俺の「実力」を知っている。


 だからさっきの魔力測定で、俺が自分の魔力を少なく見せたことに気づいた。


「どうして実力を隠したのですか? アルフォンス様の魔力は、ジーク・マインドより多いのに」

「それは……」


 メインキャラからなるべく離れたいから——


 ロゼリア先生に、本当の理由は言えない。


「Aクラスだといろいろ怠いかな……と思って」

「だ、怠い?」


 ロゼリア先生が目を丸くする。


「ほ、ほら、Aクラスは特別授業とかいろいろあるし、令嬢に声をかけられたりとか、めんどくさいかなーなんて?」

「……そうですか」


 もともと、アルフォンスは怠惰な奴だ。


 Aクラスのような「意識の高い」場所は似合わない。


 少しうつむく、ロゼリア先生。


 (ガッカリさせたかな……?)


 ロゼリア先生を失望させたのは残念だが、生き残るためには仕方ない。


「……私は、ヴァリエ侯爵家を去る時に誓いました。アルフォンス様の才能を、たくさんの人に知ってもらいたいと」

「へ……?」


 なんだかロゼリア先生の様子がおかしい。


「アルフォンス様の才能は、Aクラス……それどころかAを超えるSクラス、いえ、SSクラスでも収まりきりません……っ! それに、」


 ロゼリア先生は俺の肩を掴む。


「才能ある者は、力を使う義務があります。そして、生徒の才能を伸ばすのは、教師の義務です。ですので、」


 俺の両手をぐっと掴んで、


「アルフォンス様をAクラスに入れるよう、学園長に話を通しました。アルフォンス様は、Aクラスへ行ってください」


 (マジかよ。せっかくCクラスに入れたのに……っ!)


「でも、俺は——」


 俺は断ろうとするが、


「異論、反論、文句は一切受け付けません。私はアルフォンス様の【先生】なんですからっ!」


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