第14話 魔力測定で実力を隠す

「セプテリオン魔法学園へようこそ。入学式の前に、皆さんの魔力測定をします」


 黒い帽子を被った、いかにも魔法使いぽっいお姉さんが言う。


 新入生は、中央講堂に集められた。


 これから次のイベント、魔力測定が行われる。


「持っている魔力量によって、クラス分けを行います」


 魔法学園では、AクラスからFクラスまで、魔力量によってクラスが分けられる。


 Aクラスは一番魔力量が多く、Fクラスは一番魔力量か少ない。


 保有魔力量は、魔術師の【才能】を示す。


 魔力量が多ければ多いほど、強力な魔法を使うことができるからだ。


 Aクラスに入った者は卒業後は待遇のいい仕事に就けるが、Fクラスの者は全員退学することになる。


「さすが完全実力主義の学園だ……」


 もちろん在学中に魔力量が上がれば、クラスアップできる。


 ただ——そんなことはめったにないらしい。


 魔力量はほぼ血統で決まってるからだ。


 実際、Aクラスは王族や王族に近い貴族が多く、Fクラスは下級貴族や平民が多い。  

 

 一度、下のクラスに入ったら最後、卒業までずっとそのクラスにいるのだ。


「おい。平民がいるぞ」

「平民のくせに生意気だ」

「どうせFクラスだろ」


 と、主人公ジークをバカにする声が聞こえる。

 

 普通、平民で魔力持ちだったとしても、その魔力は少ないことが多い。


 だから、当然Fクラスに割り振られる。


 しかし——ジークは勇者の生まれ変わり。規格外の魔力を持つ。

 

 見下していた貴族たちを圧倒的に上回る魔力を見せつけて、平民でありながらAクラスに入る。


「きゃあーっ! ユリウス王子殿下よっ!」

「カッコイイ……。尊いわ」

「お抱きくださいー♡」


 ユリウス・ファン・アルトリア——


 アルトリア王国の第一王子だ。


 王位継承順位第一位で、魔力も多い。


 歴代の王族の中でも、魔法の才があるらしく。


 高身長に、青い目と金髪。

 

 典型的な王子様キャラだ。


 しかし。


「ざまぁ対象なんだよな。あいつ……」

 

 スペックは完璧だが、中身は最悪だ。


 人を駒としか見ていない、クソ野郎。


「しかも、アルフォンスはユリウスの手下だったわけで……」


 王族でありながら、平民のジークと親しいオリビィアにムカついたユリウスは、アルフォンスをけしかける。


 アルフォンスにオリビィアを襲わせるわけだ。


 ジークに倒されたアルフォンスを、ユリウスは平然と切り捨てる。


 アルフォンスはキモデブで性格も最悪だったから、学園では孤立していた。


 一応、侯爵家だから取り巻きの下級貴族はいたが、友達と言える存在じゃない。


 そんな孤独なアルフォンスを、ユリウスが利用する。


 最後は卒業間近に、ユリウスはジークと決闘して、ジークにボコられることになるのだか……


「次は、ユリウス殿下の番でございます」


 さすが次期国王。教師たちも敬語を使う。


 ユリウスが壇上に上がる。


「この水晶玉の上に、て、手を置いてください……っ」

「わかりました」


 緊張する教師に、優しく微笑えむユリウス。


 王族だけあって外面はいいようだ。


 ユリウスが手を置くと、水晶玉が緑色に光って、


「……ユリウス殿下の魔力量は、150ですっ!」

「ふ。まあこんなものだろう」


 魔力量の平均は50だ。


 つまり、ユリウスは平均の3倍の魔力があるということで。


「さすがですわっ! ユリウス様ぁ!」

「カッコイイです! 天才!」

「ユリウス殿下、バンザイですぅーっ!」


 令嬢たちが大げさに褒めまくる。


 学園は単に勉強するだけの場所じゃない。


 令嬢たちにとっては、婚活の場所でもある。


 少しでもユリウスとお近づきになりたいらしく。


「さすがユリウス殿下です……。次は、ジーク・マインド。さっさと来なさい」

 

 ユリウスに対する態度と真逆。


 平民のジークに、教師は冷たい。


「おい。今度は平民かよ」

「水晶玉が汚れるわ」

「どうせ魔力はほぼ0だろ」


 みんながジークをバカにする。


 平民の魔力はよくて10だ。


 最初から、誰も期待などしないが——


「ジーク・マインドの魔力は……900っ!」


 そう。ジークの魔力は桁違い。


 平均の16倍の魔力。


 そして、ユリウスの6倍の魔力。


 「化け物」としか言いようがない。


「平民なのに嘘だろ」

「あり得ない……」

「ユリウス様より上だなんて」


 度肝を抜かれる貴族たち。


「魔力量は900で間違いない……。ジーク・マインドは、Aクラスに配属とするっ!」


 完全実力主義の学園だから、平民であろうと魔力があればAクラスに入れるしかない。


「平民がAクラスかよ」

「インチキに違いない」

「どうせすぐ、Fクラス行きだ」


 平民がAクラスに入ったことで、生徒たちはざわつく。


 罵声を浴びせられながら、ジークが俺の側を通る。


【ふふっ。やっぱり俺こそ主人公だ……】


 (……えっ?)


 何か言ったような気がしたが、


「次は、ヴァリエ侯爵の令息、アルフォンス・フォン・ヴァリエです!」  


 俺の名前が呼ばれる。 


「誰だあのイケメン?」

「ヴァリエ侯爵令息ってキモデブだったはず……」

「豚じゃないじゃん」


 散々な言われようだ。


 貴族の社交界で、アルフォンスの悪評はすでに広まってるらしい。


 (さて、なんとか誤魔化さないと……)


 俺の魔力量は、1800はある。


 平均の36倍。


 ユリウスの12倍。


 ジークの2倍。


 ちょっと多いどころじゃない。


 完全にチートレベルだ。


 転生してから毎日、魔法の鍛錬を続けたせいで、あり得ない魔力量になってしまった……


 このまま測定すれば、Aクラス行きは確実。


 Aクラスには、メインキャラが集まっている。


 メインキャラから離れるためには、なんとしてもAクラス行きは回避しなければ……


「魔力操作で、少なく見せよう」


 ロゼリア先生と一緒にやった、魔力操作。


 一日中ぶっ倒れるまで魔力を操った結果、俺は自分の魔力量を正確にコントロールできるようになった。

 

「さあ、水晶玉に手を……」


 (よし。魔力操作——)


「アルフォンス・フォン・ヴァリエの魔力は……50です!」


 (よかった。ちょうど平均を出せた)


「アルフォンスさんは、Cクラスですね」


 ちょうど真ん中のCクラス。


 うん。モブにふさわしいクラスだ。


「侯爵家のくせに50かよ」

「ダサw」

「無能やん」


 普通、侯爵家なら魔力80はある。


 だから「侯爵家のくせに」とバカにされるのも仕方ない。


 ……まあこれでいい。


 俺はモブとして平穏に生きたいからな。


 ★


「全員の魔力測定が終わりました。では、それぞれのクラスへ移動してください」


 新入生全員の魔力測定とクラス分けが終わった。


 (俺はCクラスで平凡に生きる……っ!)


 Cクラスの教室へ向かおうとするが——


「アルフォンス・フォン・ヴァリエ侯爵令息、呼び出しです。今すぐ教員室へ来てください——」



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