第5話 婚約者が会いにくる

「アルフォンス様、今日はレギーネ様が来る日です」


 レギーネ・オルセン。


 侯爵令嬢で、アルフォンスの婚約者だ。


 シナリオでは学園編で、アルフォンスが主人公にボコられた後、アルフォンスと婚約破棄する。


 婚約破棄した後、レギーネは主人公の攻略対象となるわけだが。


「会いたくな……今日は風邪だから会えないと言ってくれないか?」

「えっ? レギーネ様は婚約者ですよ? お会いしないわけには行きません」


 レギーネとの婚約は、完全な政略結婚だ。


 オルセン家は、現国王の親戚に当たる王族に連なる家系。


 だが先代が領地経営に失敗し、財産の多くを失った。


 それで、王国一の金持ちであるヴァリエ家と結びつくことで、領地の財政基盤を建て直すつもりだ。


 アルフォンスの悪評も相まって、二人は愛し合っていなかった。


 もう会わないことが、一番安全なのだが……


「最近のアルフォンス様は、前とは違います! とってもカッコよくなったのですから、きっとレギーネ様も……」

「いや、でも——」

「でも、じゃありませんっ! さあ早く支度してくださいっ!」


 リコに無理矢理、背中を押されて会うことに。


 ★


「…………」

「…………」


 中庭で、レギーネとお茶会。


 話すことがなくて、めっちゃくちゃ気まずい……


 金髪の巻き髪に、青い瞳。


 紅茶を飲む仕草は、美しく優雅で。


 本物の貴族って感じだ。


 (俺も貴族だけど……)


「最近……魔法の鍛錬をされてるとか」


 ずっと黙っていたレギーネが、初めて話し始めた。



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