第4話 どんどんイケメンになっていきます//// リコ視点

 あたしはリコ・フリーレ。


 ヴァリエ侯爵家のメイドです。


 今年で18歳になります。


 アルフォンス様の専属メイドで——


 最近、アルフォンス様は別人のごとく変わりました。


 食事の時に「あーん」をしなくなったのです。


 以前なら、毎日の食事の時にあたしに「あーん」することを強要していました。


 ——貴族は自分で飯を食わない。


 という謎の理論で、毎回、ご飯を食べさせるように要求するのです。


 もう15歳だというのに……


 でも、最近は普通に食事を取るのです。


 それどころか、あたしに一緒に食事を取るようにまでおっしゃります。


 貴族と平民の身分差は絶対。


 普通、貴族は平民と食事を取らないはず。 


 この国の貴族は平民相手にイキり散らすのが「デフォルト」なのに、アルフォンス様は対等に接してくれるのです……


 他にも大きな変化があって。


 ——ボクちんは野菜は食べないもん!


 と、おっしゃって、野菜があると泣き出すアルファンス様でしたが、


 野菜も残さず食べます。


 そのせいか、最近はどんどん痩せてきています。


 魔法の鍛錬も、熱心にされています。


 毎日、毎日、夜遅くまで水玉を浮かせています。


 お屋敷の庭で、倒れるまで頑張っています。


 魔力操作はとてもお疲れになるらしく、


 汗だくだくで、庭で倒れています。


 浮かせられる水玉は毎日増えていき、今では同時に二十個も浮かせられます。


 家庭教師のロゼリア先生も、驚くほどの成長ぶりです。


「アルフォンス様は、きっと才能があるのよね……」


 あたしは平民で魔法を使えません。


 だけど、アルフォンス様に才能があるのはわかります。


 今まではきっと「本気を出していなかっただけ」なのでしょう。


 夜は、魔法の本に齧りついています。


 お夜食にも手をつけないほどの集中ぶりです。


 ロゼリア先生曰く、かなり高度な魔法理論まで理解されているとのこと。


「この手紙はどうしたらいいか……」


 最近、あたしの元にラブレターが届くようになりました。


 あたしへのラブレターではなく、アルフォンス様へのラブレターです。


 貴族のご令嬢から、アルフォンス様へラブレターを渡してほしいと。

 

 お庭でアルフォンス様を見かけて、「一目惚れ」されたとのこと。


 アルフォンス様への熱烈に愛しているようで。


「でも、アルフォンス様にはまだ早いですよね……」


 あたしはラブレターを隠しておくことにしました。


 うん。これは、専属メイドの務めです。


 アルフォンス様を悪い虫からお守りしないと。



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