第3話 末恐ろしい生徒です ロゼリア視点

 私は魔法の家庭教師、ロゼリア・フォン・アインベルン。


 準男爵家の長女です。


 貴族の中では最底辺。


 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵……


 爵位は一番下です。


 当然、貴族なのに貧乏だから、家庭教師のアルバイトをするしかなくて……

 

 ヴァリエ侯爵家に出入りしてるわけですが。


 酷すぎる生徒でした。


 あたしの胸を触るし、お尻も触るし、


 無理やりキスしようとしてくるし、


 魔法の鍛錬は一切しないし……


 ただのクソガキ、エロガキ。


 そして、バカ、無能。


 ついこの間まで「辞めよう」と思っていましたが。


 今は、別の意味でそう思っています。


「す、末恐ろしい……っ!」


 私は自分の部屋で、頭を抱えていました。


「週二回の授業で、日を追うごとに成長している……」


 魔法の才能がない——能無しのアルフォンス様が、尋常ではないスピードで成長してます。

 

 今まで「本気を出していなかった」だけなのでしょうか……?


「いやいや、それにしても、もう水玉を20秒を浮かせられるなんて……」


 一人前の大人の魔術師でも、魔力で水玉を浮かせられるのは、せいぜい10秒がいいところ。


「しかも、形もキレイで、揺らぎもなくて……完璧すぎるのよね」


 正確に水玉を操ることができる。


 つまり、アルフォンス様は膨大な魔力と、それを操るセンスがあるということ。


「次の授業、何を教えたらいいんだろう……」


 生徒の才能が開花して、嬉しくないわけじゃない。


 ただ問題は、「もう教えることがない」ことだ。


「侯爵のオーダーは、初級レベルの魔法を教えること。これ以上は上級レベルに……」


 魔法は人を傷つける力がある。


 だから、魔法学園に入るまで、本当は初級レベル以上を教えてはいけない決まりだ。


「アルフォンス様なら、賢聖になれるかもしれない……」

 

 賢聖——最高の魔術師に与えられる称号。


 最高の剣士である「剣聖」と共に、世界を救うと言われている。


「あたしには……とても手に負えない」

 


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