第15話 二人のお姉さん
一度来ているけど、やっぱり
「あら、いらっしゃい。由紋呼ぶから待っててね」
「はい。あ、あの、これ」
手元の紙袋を差し出す。モンブランやパンプキンケーキなどのハロウィンを意識したケーキにショートケーキやティラミスなんかの定番ケーキ。由紋ちゃん家向けに6個入りのケーキを買ってきた。
「みなさんで、召し上がってください」
「ケーキ!? うわぁ。買ってきてくれたの?」
財布は激寒だがこの対応をとるしかなかった。ネットを調べてもこの時間からハロウィンパーティーをするのは明らかに早い。だから、昼から何か騒ぐことになるのだろうと思って買ってきたのだ。
「えへへ。ありがとう。どうぞ上がってお
照れて顔をそっぽにやると何か言われる気がして素直に由紋ちゃんの差し出す手に自分の手をのせる。
「ありがとう。由紋ちゃん!」
「しずく~、さすがだね。香くんの髪完璧。服持ってきた?」
「もち!」
由紋ちゃんは自分の部屋に案内してくれた。相変わらず広い。中も客間とダイニングともに大きく、8人が窮屈なく入れるだろう。少し話をして、すぐに着付けタイムに入る。お姉ちゃんと買いにいったとき、服をうちに置いとくのは難しくて雫の家に置いといてもらっていた。今朝雫の家に呼び出されたので、そこで着替えるんだと思っていたが、家にあがると雫はすぐに僕の髪を
「みんなは?」
僕は素朴な疑問を二人に投げかける。
「へ? 午後からだけど雫伝えてないの?」
どうやら不自然な早さは僕のお着替えのためだったらしい。そう考えると、手土産を持ってきたのは大正解だったようだ。
「あはは。伝えてなかったなあ。まあ、着替えようか」
二人は当たり前のように僕の服を脱がしたり、『ばんざーい』と言ってみたり、とにかく子供扱いしてくる。前にも由紋ちゃん家に連れてこられたときも、この二人に着替えさせられたからもう
「なーに座ってんのよ? ここからが私たちの力の見せ所でしょう。ほら立って!」
雫が意地悪く、そう言い、僕の衣装が入っていた紙袋から白いエプロンのようなものを取り出した。
「それ、なーに?」
「まーま。落ち着け香くん。終わったらわかるよ」
雫ではなく、由紋ちゃんが僕から答えをさし伸ばしにするように言う。諦めて着さされることにした。なんだか、見覚えのある感じ……。
「3人ともー、ご飯にするわよ。って、なーに? 可愛いメイドさんがいるじゃないの。私も高校の頃文化祭で……」
「ちょっ、ちょっと、やめてよ、ママ」
由紋ちゃんの必死な姿に笑ってしまった。
「ちょっと香くん!」
「あ。えっと、お母さん、ご飯用意してもらっちゃったんですか?」
「そうよ。あーあー、気にしない、気にしない。ケーキも頂いちゃったしさ、娘と仲良くしてもらって何よりだもの」
ケーキにピクッと反応した由紋ちゃんにまたも笑いを誘われる。
「私はいただきますよ! 由紋ちゃんのお母さん、ありがとう」
雫…。
「あらやだ。こういう子の方が人生得なのよ、香くん」
「い、いただきます」
食べないわけにはいかないか。
4人で食卓を囲むのは異様だ。さっきので断るわけにもいかない。でも、断っておいたらよかったと思ったのは、『ケーキ出すわね』とお母さんが言い出したときだ。
『6人も家族いないわ。私たち家族で3つ。で残りは3つでぴったりだから』
なんだかはめられた気がした。そのあと、集合時間の5時に向けて、2人のお着替えとハロウィンメイクなるものをした。由紋ちゃんはドラキュラの衣装、雫は
「にひひ。良いのが撮れた」
「朝からありがとね。由紋ちゃん」
「あら、いいのよ、香ちゃん。私たちもケーキもらっちゃったから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます