第20話 化粧とフェミニズム
フェミニズムやジェンダー論で「化粧」というのも避けて通れない行為だと思われます。よく聞かれる意見としては、女性は男のために着飾るのではない。化粧をするのではない。自分のモチベーションのためだし、女性に見られるとみっともないのが嫌なのだという言説です。そこはどう考えるべきでしょうか。
化粧をなぜするのか?
①社会的圧力 働く女性は化粧をすべきである、という社会的な女性へのプレッシャーがある、というもの
②女性内の美的順列の地位争い 自分がどの水準にあるのか、平均や順位を気にするマインドによるもの
③仲間意識 メイクやファッションを統一することで仲間であることを確認する帰属意識
④男性からの目線の意識・経済性・投資
⑤外向きの顔・ペルソナ 仕事や外の世界、場合によっては夫に対する仮面、内発的な動機
①から⑤までで重なるような要素もあるかもしれません。
①はハイヒールやストッキング問題でよく言われます。要するに仕事のマナーとして、という話です。男性のネクタイ・スーツ・ヒゲソリにも対応してくるでしょう。
これは結構重要で金融機関などはどうか知りませんが、民間企業では比較的女性の方が服装が自由です。男がスーツやスラックス、革靴を強要されているのに比べ女性はいろんなファッションをしています。ハイヒールやストッキングなど誰も気にしません。そんな中で化粧をマナーと定義するのはわかる気がします。そうでないと規範というものが全くない状態になります。
もちろん、服装の基準として露出度というのはありますし、デニムやレギンスなどで働いている人は見ません。ただ、男性に比べてかなり緩いドレスコードになっています。
そして経験論で申し訳ないですが、化粧の有無は見ている人はむしろ女性であり、男性は出来上がりの顔の美醜で判断しているだけです。男性から「社会人なら化粧をしろ」という人は皆無ではないですが、そんなに多くないのではないでしょうか。
もちろん昭和や平成初期はどうか知りません。男でもうるさい人はいたかもしれません。が、今はほとんど見かけないと思います。つまり女性内のマナー問題です。としたときに、この社会人なら化粧をすべき的な思考はフェミニズム的な視点ではなく、女性内の階級闘争な気がします。
これを強く感じるのが例えば超高給取りのファンドマネージャー・アナリストとかITマネージャーの女性は非常に着飾ります。
ブランドもののスーツに胸の大きく開いたブラウスを着て、バッチリ化粧をして、華美なピアスをし、ネイルをキレイに整えます。つまり、経済でマウントを取ってきています。逆にそういうタイプの女性だから上に行く努力をしているのかもしれません。つまり、女性の地位向上というフェミニズムの実現をしている「できる女性」たちはかなり華美でブランド志向です。これは男性も時計や靴などにおいて共通かもしれませんけど、女性の攻撃性は化粧・アクセサリー・胸元の露出・ボディコンシャス・ヒールなどに現れる気がします。つまり、化粧は攻撃性なのかもしれません。
②③私は女性のファッションや化粧は、自分の順位と仲間であることの記号の要素が多い気がしています。女性は人間の歴史的に家を守り子供を育てる役割から、仲間外れにならないことが重要でした。
つまり、④の男性との関連はもちろんあるのですが、それは対男性というよりは女性内の順位争いの方が本質に近いのかな、という気がします。仲間にいながらその中で地位を上げるというなかなか複雑な戦いをしていると思います。
④男性へのアピールは、優秀な遺伝子の種を優先的にもらう努力をするため、近現代においては経済性のある男性、トロフィーとしてのイケメンからの選択されるアピールという側面はあるでしょう。
ただ、男性が浮気していたとき男性に怒るのではなく、浮気相手の女性に怒るというマインドから②の順位で負けることの方が女性にとってはよりダメージが大きいのかなという気があします。
⑤の内発的動機というのは、自分であることを定義するという意味があると思います。タットゥーやボディピアスなどをやるマインドに近いかもしれません。人間というのは肌というわかりやすい境界があるようでも、心理的に自分と外部との差が明確ではない不安を抱えています。それを定義するために化粧、タットゥーやボディピアスをしている気がします。
また、自分が美しいと感じると幸せになる意見もあるようですが、潜在意識としては、回りまわって自分の地位を確立するという②③のマインドにつながってくるのかなと思います。
こう考えると、①の社会的圧力というのは②③の逆転の発想で同質化圧力ととらえてもいいのかもしれません。変わったことは許さない。全員で化粧しハイヒールとストッキングを履くのだ、というマナーは女性から「はみ出し者は許さない」圧力の気がします。
ただし、成功者になると攻撃的に着飾り化粧をします。セレブを例にあげるとわかりやすいでしょう。マナーから外れた華美な化粧やドレスは勝者の証でもあります。
⑤の内発的動機は少し違うマインドも入るのでしょうか。ペルソナ・アイデンティティですね。これは男性でもおしゃれをしているマインドで気分が高揚しますから…それは深層心理・無意識ではどういう働きなのかわかりませんけど。
ということで、化粧というのは男に媚びる云々というより、遺伝子レベル女性社会のルールとして、必要とされているのではないか、という気がします。フェミニズム的にはそういうものだと受け入れて、化粧は肯定したほが男女の役割を定義しやすい気もしますが、ジェンダー論では駄目でしょうね。
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