第14話 覚醒
魔術の原理とは何であろうか。
星の莫大なエネルギーを使っているだとか神の作り出したインフラにタダ乗りしているだとか色々とあるが有力視されている説はあるがそのうちの一つに強く思い込んだ事を現実に起こす現象を利用して魔術を発動しているのでは?という説がある。
〝想像力こそが世界を変える〟って奴だ。
ものすごく雑に言うなら自分は神!なんでも叶う!と思えば魔術の達人になれるという説だ。
それなら傲慢な人間は無敵じゃね?と思うかもしれない。
しかしどんなに傲慢な愚か者でも他人からの評価、自らの民族、宗教、といった何らかの拠り所に頼って始めて自らに価値があると思うのだ。
頼らずとも自身の価値を保証できるほど人間は傲慢になれないから、どう足掻いても心の奥底での自身に対する本音は拭うことができねえからだ。
ただし脳が破壊され人間の思考の軛から解き放たれた私は別だ。
どんな現実が突きつけられようと世界の全てから拒絶されようと何一つ自らの優秀さを示す拠り所がなかったとしても自らは偉大であり世界の全てが思うがままであると言う意思は決して砕けない。
自身が自身である故に自身に価値があり世界の全てが自分のためにあるにあると信じて疑わない究極の傲慢。
それが今の私の状態だ。
そして思う事を現実に変えるのが本質の魔術と究極の傲慢が合わさったらどうなるのか。
■□■□
脳内にある黒い箱と白い箱、お互い一つずつだったそれが六つ増えていくような感覚。
新たに呼び出されたグレーターデーモンから吹雪が放たれる。
それに対して唱えるのは黒系統第三位階、〝結界魔術〟魔術を無力化する魔術結界を展開する魔術。
人の身であっても対魔術結界を纏えるようになる数少ない手段
ここで思う。
なんで魔術は口で唱えるだけなんだ?
指で宙に文字を書いて発動すれば良い。できるだろう、できるに違いない、できた。
両手と口で同時に影響する
大悪魔の上位凍結魔術、系統内攻撃系黒魔術の中でも上から二番目に位置する魔術、直撃すれば俺を即座に氷像に変える。流れてくる死だ。
しかしそれは結界に阻まれ消失する。
こちらも上位凍結魔術を打ち返したが弾かれる
グレーターデーモンの結界は厄介だ。
位階に関係無く9割以上の確率で俺の魔術を弾き返す。
対抗策であるのは第三位階〝破界魔術〟
対魔術結界に干渉し、歪ませ、狂わせ結界強度を下げる魔術。それを三重詠唱しようと思ったがこれじゃない、お前は楽しく無い。
手の形になるようにする、なるようになる、なる。
右の見えざる手で結界を握る、今の私なら見れる。グレーターデーモンを守る魔力の力場に薄氷の様に亀裂が走る。
見えざる手が結界に食い込む。
迷宮内最強の性能を誇るグレーターデーモンの対魔術結界がギリギリゴリゴリと擬音を立てるように握りつぶされている
結界が潰れた、ほら終わりだ。
結界が剥ぎ取られたが大悪魔本体はなお無傷
しかしなにが起きたのか理解すらできていない大悪魔に対して放たれたのは
第七位階〝核撃魔術〟
系統内魔術最高の攻撃力、攻撃範囲を持つ魔術。
核融合により小型戦術核に匹敵する爆炎を呼び出す魔術と空間に干渉し対象と世界を切り離す魔術の融合魔術。
迷宮の王、魔術師ワルドナの切り札。
系統魔術の頂点。
魔術結界を持たぬ者を即座に生物を即座に灰と塵に変えるこの魔術が魔術結界を失った大悪魔をこの世から消失させた。あまりの熱と明度で影が地面に張り付いている。
君主くんを殺した大悪魔に見えざる手を伸ばす。
この世に影しか残していない同種を見て最大限の警戒を始めた大悪魔はいかなる手段かこちらの見えざる手を認識し始めた。
音を置き去りにする超身体能力にて音速で動き回る見えざる右手を回避しつつ上位凍結魔術を詠唱する。
魔術結界を破壊すること以外に糞の役にも立たない見えざる右手を通り抜け上位凍結魔術が飛ぶ。
再び結界魔術を唱える。
本来なら強度が低く魔術に押し負け敵の魔術を通す事も多い魔術だがこれを三重詠唱し強度を補強。手の形に変え魔術を握りつぶした。
それと同時に二回目の核撃魔術を叩き込む。
大悪魔は魔力の収束を探知しレッサーデーモンの死体を掴み核撃魔術の発生地点に投げ入れた。
レッサーデーモンの対魔術結界により核撃は阻まれたものの余波だけでグレーターデーモンの片腕を吹き飛ばした。
見えざる左手と名付けようか。
魔術結界を破壊する見えざる右手、魔術を破壊する見えざる左手を持つ私に対して魔術で対抗するのも非効率的だと判断したグレーターデーモンが物理攻撃で仕留めようと跳ねてくる
物理攻撃はヤバいな。
三重詠唱で上位硬化魔術、を三段階重ねがけする。
威力の大部分は殺せたものの詠唱の間に大悪魔のアッパーカットを喰らったおかげで舌を自分で盛大に噛んでしまい舌がちぎれる。もう完全な言葉は発せない、呪文は唱えられない。でも腕があるだろう。
腕で文字を書く方針に切り替える。
グレーターデーモンの手刀が振るわれる。硬化を貫通して俺の両腕が中を舞った
しかしなんも問題ないのだ。手で書く必要も完全な言葉を発する必要もないのだ。教えてやるよ、大悪魔様。
魔術とは、魂の喝采!
両手を失った私が自信たっぷりに魔力を収束させる。一点に収束した魔力は空気を震わせる、私を中心にして蒼いプラズマが漏れ出す。
大悪魔は一瞬後ろに飛び退く様な動きを見せたものの魔力は収束させたところでしっかりと詠唱するか文字にして打ち出さないとなんの効力も及ぼさない。いかに強大な魔力であろうとも。
それを思い出し私の自信はブラフだと認識した大悪魔が俺に飛びかかる。
その瞬間発動したのが核撃魔術。
足で言葉を書き込み核撃魔術を発動させたのだ。
大悪魔は小型戦術核に突っ込み消滅した。
流石グレーターデーモン。全ての位階の魔術を使えるような私ですら死にかけた。それでも生きているのは私だ。
白系統第六位階〝快癒魔術〟
死を除いた全ての外傷、病気を取り除く最強の白魔術。
死んでいない限り強制的に五体満足健康体に変えるもはや呪いの域に達した究極の回復魔術。
この大陸には使い手が片手の指で足りる程しかいないものの今の私なら問題なく使える。
ほい、完治
破壊された脳が修復されていく、あれ、ちょっ、待って、脳が修復されたせいでもどっちまう。覚醒モードが解除されちまう!!
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