第12話 和解
※前話の話の後半部分を変えています。
やっほー!エフィミアちゃんだよー!元金玉持ちの16歳!クソ領主をぶち殺す為に迷宮都市来たけどパーティーの一人がサイコ野郎だった!その上カス共に襲われた恐怖で吐きそう!これからどうなっちゃうの〜!
クソみたいな自己紹介してる場合じゃないな
恐怖で思考回路がガバガバになった頭で銀髪青年の部屋に向かう。
今思えばとにかく一人でいるのが怖かったのだろう。
馬小屋みたいなボロ宿の部屋に入るなり銀髪青年が駆け寄ってくる。〝何かあったのか?泣きそうな顔してるぞ〟
こいつの共感能力はもはや特殊能力の域に達している。
路地裏であった事を話そう。盗賊青年がサイコパスであることだけはぼかすつもりだが。
それからのこいつのセリフは対応も四流小説家の書く善人像のようなテンプレそのものの良い人対応であったが本当に本当に救われた。
あったかい甘い飲み物を差しだしてきて黙って話を聞いてくれるだけだ。
別に上手いことを言って慰めてくれる事は一切無い。それでもこちらが辛い事を話すときには辛そうになり恐怖で怯えながら話せばそれ以上に辛そうな顔をして話を聞いてくれる。しかしなんで俺よりも泣きそうな顔をしてるんだよ。
最終的に泣き出した俺の頭を膝の上に乗せ3時間ほど頭を撫でてくれた。
男に対して母性を感じるのも変な話だがもう今は串刺しになってしまった母さんに抱いてもらった時と同じ様な温もりだ。
四時間程経って大分落ち着いた。
もう大丈夫だ。
お礼を言って立ち上がる。
まだサイコパスという懸念材料は残っているがそれでも実質ホモセックスをやらされそうになった傷は癒えた。
***
そういやストレッチの時からもそうだったが頭にあたる服の上から探ったこいつの腹の感覚が変だったな。めくってみっぺ。
見えたのは悪意だ。全身に刺され、切られ、焼かれた後がある。焼かれながらも必死で身をよじったかのようなみみず腫れ。ナイフで肉体に彫ったと思わしき卑猥な文、埋め込まれて肉体と一体化してしまっている釘。
〝単なる虐待〟だそうだがどう考えても単なるなんて枕詞がつくような生易しいものじゃないだろ。
何があったんだかまくしたてる様に聞いてみる。
大したことないとかのらりくらりかわして銀髪青年は答えない。
まあ言いたくないなら無理に聞き出すことはない、いつかは話してくれるだろう。
そう思って部屋を出ると
〝エフィミアちゃん、探してたんだ、誤解を解きたくてさ〟
そして俺の顔を見つめる。
〝ああ、あれか、兄さんの傷でも見たのか〟
なんで分かるんだよ、キモすぎる。
サイコパス特有の共感性がないゆえの人心察知能力か?キモすぎる。
恐怖で動けなくなっている俺を盗賊青年は優しくエスコートする。
軽く引っ張られてるだけなのに何一つ抵抗できない
馬小屋同然のボロ小屋には似つかわしくない金がかかってこそいるが下品さは皆無な調度品が並ぶ盗賊青年の部屋に連れ込まれる。
人をだめにしそうな椅子に俺を座らせ盗賊青年は続けた。
〝いきなりだが俺みたいなのは容易く嘘をつく、自分の利益のためならなんでもする人間だと言うことをもう君は既に知ってるだろ〟
その通り、高二病のバイブル、〝悪の◯典〟を散々読み込んだからお前らの思考パターンはいやというほど知っている。
〝というわけでこれは誠意だ〟
盗賊青年が盗賊青年自身の眼球に指を突っ込む、引きずり出す、握り潰す。
何やってんだお前!反射的に回復魔術をかけようとするが盗賊青年が拷問用具のはんだごてもどきでくり抜かれた眼窩を更に焼く。回復魔術の治癒力を相殺するダメージが盗賊青年の目に入る。
俺が更に治癒を唱える。しかし更に焼かれる。焼かれる焼かれる焼かれる。盗賊青年の目は相当高位の白魔術で無ければ直せない程度に破壊された。
その状態で盗賊青年は語る。
クッソ下らねえジョークが入っていたものの盗賊青年の話を纏めればこうなる。
〝お察しの通り俺はサイコパスと呼ばれる人種〟
〝他人如きの痛みも苦しみも全く理解できなかった、他人を不必要に傷つける奴の事も理解できなかったが〟
〝チンピラ連中をああした時も別に楽しくもなんともなかった、脅しと再発防止を兼ねた結果ああなっただけだ〟
〝話は変わるが他人の気持ちが分からない俺にとって兄さんは他人の気持ちを理解するための最高の教材だった。〟
〝他人に必要以上に感情移入して無駄に苦しむ。ある程度ならまだ理解できるがもはやあそこまで行くと生物として欠陥品だ〟
〝欠陥品に触れあったり庇われた結果俺も欠陥が感染したらしい、兄さんみたいに他人の気持ちに共感して共に喜び共に苦しめる人間になりたいと思った、思ってしまった。〟
〝兄さんに対してすら善意すら持てず執着しかない俺がだぜ、笑えるだろ〟
盗賊青年は自らの暗器が大量に仕込まれた服を脱ぎ始める、自身のもう一つの目を潰す、両腕をセルフで刈り取る。
〝お願いだ、君やあの竜人に対しては本当は執着すらない、正直どうなっても良い。それでも兄さんに死んでほしくないのは本当だ、兄さんに害なすものだと思っているのならここで殺しても構わない〟
〝今なら確実に俺を殺せる、これをするのが俺なりの誠意だ。これしかできないのだ〟
それに対する俺の対応は決まっている。
君主くんー!!!!すぐ来てー!!!!治してー!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます