第10話 魔術師加入

 とりあえず儚い雰囲気をした美形(俺よりは下)のこの行き倒れを運んで迷宮の外にポイしようとしたが、迷宮出てポイしようとしたとこで何か食べさせてくださいと足に張り付いてくる。


 他人の必死のお願いを断れない君主くんが料理屋に連れて行ったがまあ食うわ食うわ。


 差し出した食べ物がシュレッダーみたいに吸い込まれていくのを見るのは楽しかったが支払いが俺達の共通財産から払われると考えると気が滅入る。


 その後盗賊くんの交渉によりとりあえず今回の飯代が支払われるまでパーティーでこき使うことになった。


 こいつの種族は竜人、職業は魔術師。第四位階までの魔術を使いこなせるベテランだ。


 シスター風の服をしてるくせして僧侶じゃねえのかよと思ったが、竜人魔術師曰くこれ着ていると社会的に死にづらくなるとか托鉢ごっこでおやつを調達できたりとか睡眠魔術を警戒されにくくなるとか色々とメリットがあるらしい。


 なんというか触ったら消えてしまえそうな顔つきに反してやたら強かだ。


 儚いイメージも単純に空腹でふらついて悲しげな顔をしてるだけだった。



 その次の朝起きたらやたらと体の調子が良い。

 レベルアップだ。

 それと同時に頭の中の箱の中に今まで知らなかった知識がギチギチに詰め込まれている様な感覚がある。


 新魔術だ。


 新たに覚えた魔術は2つだ。


 黒魔術系統第1位階〝硬化魔術〟


 かけた対象の体を硬化させる魔術だ。


 味方の防御力を上げられる魔術だが単体にしか効果が無いのが痛い。


 そもそもやられる前にやるのが基本にして結論となる迷宮戦闘で防御バフとかクソだ。


 相手の足とかを硬化させて転ばせる事を考えたりもしたがそれやるくらいなら睡眠魔術で良い。


 性転換と同時に失った息子がいれば股間にかけて遊んだりするくらいはできたのだろうが今は物理的に不可能だ。


 マジで使い所がない。


 もう一つは黒魔術第1位階〝探知魔術〟。登録した物体がどこにあるかを探る魔法。


 財布等の貴重品と紐づけることで物を無くすことが無くなり、盗難への対策にもなる便利な魔法。


 


 逆にターゲットにしたものがどこにあっても探知可能と言うことで、発信器代わりに使われたり盗難の補助にも使われる魔術。


 睡眠魔術とは別ベクトルでぶっ壊れた魔術だ。


 もちろん迷宮でもその便利さは遺憾なく発揮される。迷宮の入口を登録しておくことで入口の位置から逆算し、迷宮内での自分の地点を把握できるようになる。


 マッピングの心強い味方となってくれるだろう。


 ■□■□


 次の日迷宮に潜って竜人魔術師の能力を確かめる事になったがこいつもクソ有能だった。


 こいつの得意とする魔法は第三位階〝爆炎魔術〟


 攻撃魔術だが花火程度の火力しか出せない〝火炎魔術〟とは別次元の性能だ。


 手榴弾程度の火力と攻撃範囲を持つこの魔術は集団戦の要だ。


 物理攻撃ではいかに強くとも攻撃範囲の都合で剣一振りにつき一体しか倒せない。


 しかし範囲攻撃魔術であれば複数の相手を倒せる可能性が出てくる。


 君主くんの唯一の範囲攻撃、雷撃魔術で複数戦を行うのも少しつらくなってきたので範囲攻撃要因が加わったのは大きい。


 その上彼女の種族は竜人だ。

 やたらタフという種族性質に加えブレスまで吐ける。


 流石に3分につき1回という制限が付いているが敵に使われた時同様に強力だ。


 火炎魔術と組み合わせることによってそこそこ耐久力のあるゾンビの群れすら灰に還した。


 ゾンビを灰にしたあと遭遇したのは初の迷宮探索で俺が死にかけた原因、〝ボーパルバニー〟


 地上に居ても全く違和感がない可愛らしい見た目に反して性質は凶暴、狡猾。


 何よりの脅威は首はね能力。


 いかなる技術かいかに屈強な戦士であろうとこいつの噛みつきが首元に当たれば即死する。


 しかしそんな凶悪な特殊能力もやられる前にやる作戦前には無力。


 先手を取った竜人魔術師の爆炎魔術を受けてボーパルバニーの大群は焼き肉と化した。


 戦闘後焼けたボーパルバニーに近寄った魔術師の方からボリボリバリバリ聴こえちゃいけない音がしたような気がするが聞かなかったことにしよう。










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