第5話 睡眠魔術
あれから3日が経過した。
この3日間で新たに覚えた魔法は二つ。
片方は白魔法一位階〝治癒魔法〟
回復量は悲惨だが貴重な回復手段だ。
どんなRPGでも回復がないとゲームが進まないのだ。
当然回復系統のこの魔術も強い。
白魔術使いの銀髪青年がいるため出番は無いと思っていたが銀髪青年の高位回復魔術の使用数を節約できるのは偉い。
「まあ、一応、とりあえず、しゃくに障るが…お前も役には立ってるよ」
とまで銀髪くんに言わせる程度には役にたっているようだ。
今までは探索中マジでやることが無く完全な足手まといとなっていたためおべっか使ったりヨイショしたりしてひたすら媚を売るしか無かったがこれで少しは貢献できる様になった。
「かっこいいよ銀髪くん!惚れ惚れしちゃう!」
「正気かお前。暴力しか取り柄の無い俺みたいなのが好きなら西のスラム街行ってこいよ、お前の好みのタイプがゴロゴロいるぜ」
「」
もう片方は黒魔法一位階〝睡眠魔法〟
第五位階までの魔術を使う悪魔と遭遇した事のある銀髪青年にすら「俺が見た事がある魔術の中で間違いなく最強の魔法」とまで言わせる魔法だ。
そんなに強いのかと思って使ってみたが明らかにこの魔術の性能は異常。
今のおれが使っても第2層の全ての敵を9割の確率で眠らせる事ができる。
その上効果範囲が広く複数の相手に有効。効果時間も長く一度眠らせてしまえばよほどの事がない限り目覚める前に永眠させることができる。
同じく第1位階の火炎魔術と比較するのが申し訳ないほどに強い、お前らどちらも本当に1位階か?
調子に乗っていたら銀髪青年に「それは強すぎて地上での使用は厳罰に処されるから絶対に使うなよ」
と警告を受けた。
なんでも習得が簡単な割に強さが異常なためこれを使う犯罪者が増えまくった結果禁忌の魔法の一つに数えられてるとか。
まあそうか、地球でも拳銃という習得の簡単な超暴力はガチガチに規制されていたから当然か。
睡眠魔術は拳銃以上の暴力だが。
リーガミンは冒険者の街のため使用しても懲役10年程度で住むようだが周辺国家では問答無用で死刑になるらしい。それでもそれぐらいやらないとダメなタイプの魔術だ。
ともかくこれでおれは戦闘でも役に立つようになった。
第二層のゾンビやガスドラゴンといった厄介な敵の群れですら一回唱えただけで無力化できるのだ、役に立たないはずが無いだろう。
銀髪曰く高位の魔物は〝結界〟で、高位の冒険者はマジックアイテムで対策しているから4層以降の戦いではそこまで役に立たないそうだが3層までは無敵の魔術だそうだ。「とにかく魔術を詠唱してくる奴がいたらこれを警戒しろ、受けたと思ったら即座に舌を噛みちぎれ、一発でも食らったら今の俺でも新米パーティーに嬲り殺しにされる」
この調子で銀髪くんの睡眠魔術教室は1時間に渡って続いた。
3日間過ごして分かった事だが銀髪青年はこちらの精神状態を察知する能力が高い。取りいるために適当におべっかを使ってもなんとなくバレてるなと感じることが多かった。
逆に喋らなくてもこちらが喜ぶようなことがあればそれを察知してるかの様な挙動を取る。
勘が鋭く気遣いができるこいつとパーティーを組んでの探索は楽しかった。
4日めの探索でなんで迷宮に潜るのか聞いてみた
「ありふれた理由だ、名誉とお金と酒池肉林。
迷宮最下層の魔術師を倒せば多額の金が王から渡される。
孤児院の先輩に助けてもらったから同じ様に誰かを助けられる様な人間になれれば良いと思った〟
要約するとこんな感じだ。
魔術師ってなんだよとか言いたいことは色々あるがなんというか良い子ちゃんのテンプレみたいな理由だな。
俺様のクソ領主ぶっ殺し作戦みたいなものが出てくるのを期待していたが。
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