第0話 幕間

少女が笑っている。


爆音の中心で、怒号と悲鳴の中で。

彼女の手のひらで炎が爆ぜ、周囲の空気を燃焼する。

それを止めようと放たれた老魔法使いの拘束呪文が、少女をすんなりと捕らえる。


爆炎に揺られ、少女の顔が赤く照らされる。

口元は、まだ笑みを浮かべているように見えた。

彼女が笑っている理由は、誰にも分からなかった。


そのまま、少女はどこかへ連れていかれた。

牢獄のようなその場所を、一人ゆっくりと歩いていく。


さらに進む。進む──。


そうして行き着いた先で出会ったのは、この地に昔から住む精霊だった。幾度かの言葉を交わす二人。

会話の途中で、精霊は両目から涙を流しはじめた。

そんな彼女に、少女は笑いながら何かを告げる。


「………」


精霊は泣きながら首を振る。



少女が笑っている。


罰により魔力は制限され、残された道は少なくとも。

仮に、少女の生命を失うことになろうとも。


「クロネ…」


意識が、薄れていく──。


そして───

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