第2話:ルシルと言う小悪魔。

好人よしとの目の前にいる顔色の悪い女は自分のことを小悪魔だと言った。


「なに珍しそうに見てんだよ」

「顔色が悪いなんて言うなよ・・・これが普通なんだから」


ほんとに顔色がやたら悪いし、改めて見ると頭に小さな角らしき物が生えてるし、

しかも、その角の色はピンク色で・・・ 左のほほにタトゥーなのか星型のマーク

が入っていた。

おまけにお尻から尻尾が生えて、猫の尻尾みたいに不規則に動いてるし、

尻尾のトン先が矢印になっているのは、なんか意味があるのかな・・・。


「で・・・私の名前はルシル・・・ル・シ・ル・・・」

「ルシル・エライシャって言うの」


「ルシルって呼んで・・・分かった?」


「ルシルね・・・分かった・・・あ、分かりました」


「タメでいいよ・・・タメグチで・・・」


「分かった・・・僕もカタっ苦しいの嫌いだから・・・」


「あんたは? 名前」

「あるんでしょ、名前」


「あ、うん・・・あの僕は里中 好人さとなか よしと


「里中の里は、ふる里の里で、中は、真ん中の中で・・・好人のよしは・・・」


「私にそんなこと言っても分かんないよ」

「だから〜ヨシトだね・・・よろしくね、ヨシト・・・」


「ヨシト、あんたは当分はここで暮らすことになると思うからね」

「だから、この部屋使っていいよ」


「好人、悲しいことが、あったんじゃないの?」

「嫌な出来事は早く忘れることだね」

「じゃないと、いつまでもこの世界に閉じ込められたまま永久に人間界に

帰れなくなっちゃうよ」


「そんなあ・・・・それは困るな・・・」

「帰れなかったら、どうやって生活すればいいんだよ・・・たちまち食って

いけないし・・・」


「現実的だな・・・ヨシトは」


でも好人は、自分は人間界とは別の世界に飛ばされたらしいことをようやく

実感し認めた。


「僕はこれからどうなるのかな?」

「とうぶん家には帰れないの・・・?」


「帰れるかもしれないし、帰れないかもしれない・・・」

「まあ、それについてはひとつだけ方法がないこともないけど・・・」


「え?帰れる方法あるの?」


「絶対とは言い切れないけどね」


ルシルは、ここが「コシュマールヴィル・悪夢の街」だと言った。

(悪夢の街・・・コシュマールヴィル・・・横文字すると洒落てるけど、日本語に

すると最悪な街か・・・)


すべて、その原因はサラダが亡くなったいきさつと、その悲しみに囚われた

好人のせいだった。


「それよりさ、ヨシト・・・あんたイケメンだよね」


「えっ・・・そう?・・・って、そんなこと今関係ないだろ?」


「いいじゃん・・・とうぶん帰れないんだからさ、仲良くしようよ」

「でも、そこまでね・・・もしヨシトが万が一向こうに帰っちゃったら、せっかく

仲良くなりすぎると、別れる時悲しいもんね。


つづく。

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