コシュマールヴィルの小悪魔。

猫野 尻尾

第1話:悪夢の街へようこそ。

悪魔の彼氏にさせられる男・・・里中 好人さとなか よしと


一応社会人・・・今は某外資系の会社に勤務、年齢は23才。

郊外のマンションに一人暮らし。


性格は、優しいにバカがつくくらい優しくてお人好し。


ゲームオタクで、コスプレオタク「主に鑑賞する方」


特別これと言って変わったところもなく普通のどこにでもいる男子。

彼女いない歴、三年・・・最終的恋愛はどちらからともなくフェードアウト

した形で終わっている。


まあ、それゆえ、一応女性経験はある・・・って言うか普通の男子よりは

ちょっと消極的な性格。


好人にはひとつ悩みがあった。


可愛がっていたサラダと言うミックス犬を自分の不注意で死なせてしまった

ことがストレスになって耳鳴りがし始めたことだった。


精神的苦痛により一時的にそうなったのかもしれない。

いつも耳鳴りがするわけじゃなく、時々何も手につかないくらいひどい時もあって、

モスキート音みたいなキーンと言う音に悩まされた。


その日は就職活動のため会社の面接に遅れないよう、近道をするため

公園の中を突っ切った・・・。

公園の中央あたりで横目に子犬が一匹いるのが目に入った。


(どこかの飼い犬かな)


すぐに首輪が目に入った。

どことなく亡くなったサラダに似てるって思った。


だから好人はサラダの悲しい記憶を、つい思い出してしまった。


そのまま犬をやし過ごして公園を突っ切ったあと、歩道橋の階段を駆け上がった。

歩道橋の中央あたりに来た時、突然例の耳鳴りがはじまった。


耳鳴りが静まるまでと、好人は歩道橋の真ん中で立ち止まって、欄干にもたれて

やり過ごそうとしたが耳鳴りはどんどん激しくなっていった。

気分の悪いモスキート音に我慢できなくて、その場にしゃがみこむと好人はそのまま気を失っていた。


どのくらい気を失っていただろう・・・。

好人が目をさますと見たこともない天井の柄が目に入った。


そしていつの間にか、ベッドに寝かされていて、どうやらどこかの部屋の中に

いるようだった。


「目、覚めた?」


そう言われて、好人はあわててベッドから起き上がって声がしたほうを見た。


すると、そこに顔色がめちゃ悪るい女の子が椅子に座って好人を見ていた。

青白い顔に長い髪・・・これは何色なんだろ・・・角度によって濃いブルーにも見えるし、濃いグリーンにも見えた。


その子は顔色は悪いけど、まるで好人の好みに合わせたみたいに、どストライクな

タイプの子だった。

顔色以外は、めちゃ可愛いじゃんって思った。

人間じゃないのはすぐ分かった。

で、その子は人間にはない、不思議なオーラを放っていた。


「あんた・・・人間だよね?」


「そ、そうですけど・・・」


「私がバスから降りたらさ、バスが行ったと思ったら、そのあとバスが止まってた

場所にさ、どこからともなくあんたがいきなりフって現れて・・・」

「ほうっておいて、バスに轢かれでもしたら気の毒だと思ったからさ・・・

私の家に連れて帰って来たの・・・重かったわよ、あんた」


「え?、僕を担いで来たんですか?」


「違うよ・・・両足抱えてここまでズルズルひきづってきたの・・・」

「まじで珍しんだよね、ここに人間が来るなんて・・・」


「そうなんですか、なんかお手数おかけして申しわけありませんでした」

「で・・・ここはどこなんですか?」

「あと・・・君は?・・・誰?」


「そうね・・・まずは、ここがどこかって質問・・・」


「ここはコシュマールヴィルってところ・・・悪夢の街だね」

「ってことはあんたは、悪い夢を見てるってことになるのかな?」

「悲しい思いや、嫌な経験をした人は、時々この世界に迷い込んでくる

ことがあるみたいよ」


「だから、あんたはまだ、何かの悲しみに囚われてるってことになるね」


「残りの質問・・・なんだっけ?」


「君は誰?」


「そうそう、私は誰?・・・私は悪魔・・・あ・く・ま」

「まあ・・・女だから小悪魔なのかな?」


「え?・・・悪魔さん?・・・ですか?」


「あ〜悪魔って聞いて、そんなバカなって思ってるでしょ・・・」

「言っとくけど・・・コスプレじゃないからね・・・」


「悪魔なんてまじで、いるんだ」


「イメージ悪いんだよね・・・悪魔って言うと悪いヤツとか怖いヤツとかキモい

とか言われて・・・」

「そんなの全部、うそだからね・・・みんな平和に暮らしてるんだよ」

「神に逆らって地獄に落とされたバカもいるけどね・・・」


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る