第4話 精霊王はガチホモバリ攻め

 本日は誰も立ち入らない場所、立ち入れない場所。そんな危険地域にまで突入。


 ここもハンバーガーヒルだとか、ソビエト映画の「ストーカー」みたいなゾーンで、軍隊を送り込んでも全員ミンチにされる場所。


「高いキノコだあッ!」


 スラムや孤児院のクソガキどもが、目の色を変えて周囲にある高そうなキノコや薬草に群がる。


「いいかっ! これはお前達の卒業試験でもあるっ! 周囲から襲い掛かって来る魔物魔獣からっ、採集しているガキ共を守りぬけっ! それがお前達に与えられた使命だっ!」


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」


 入学して数か月から一年程度、教育隊の中でも廃?レベルまで上がっている連中もパワーレベリング。凄まじいレベルの魔獣が襲い掛かって来る中で、新入生やクソガキを守り抜いて戦う、与えられた使命を果たそうとしている訓練生。


 移動時間が長かったので、ドラゴンの卵返還などの長話もできたが、それだけ魔の森の奥地まで入ったので、収集物も高価だが、襲い掛かって来る魔獣のレベルも段違い。


「左っ! ハイパーボアッ!(蛇)二頭っ!」


 立ち向かう人数を調整して、サッカーみたいにボールに集中しなようにする。もし陽動なら他から侵入されて、中央で採集している連中の所に入り込まれてしまう。


「続いて地獄猪っ! 三頭っ!」


「はああっ!」


 数人が姿勢を低くして足を斬り飛ばして速度を緩める、常人なら相手が頑丈すぎて手足が圧し折れるが、戦士や僧侶レベル20以上に強化されているので死なない。



 オッサンも警戒しているので、滅多な事では中央に侵入されたりしないが、万が一と言うのはある。


 最終防衛線に卒業生などを呼び、別パーティー扱い。第二列ぐらいに多少できるようになったのが待機していて、その内側の新入生もパワーレベリング、更にその内周にスラムや孤児院の子供がいる。


 今までなら魔獣に襲撃されると即死級の者達だったが、多少レベル上げしてダイハードにしてある。


 一撃を耐えられるかは怪しかったが、新入生も今までレベル上げして来たので即死は免れる。


「回収しろっ!」


 アイテムボックスが発生した者は、素早く死骸を収納して、血の匂いが充満しないように処置。


 本日の収入は恐ろしい魔獣を倒した討伐証明と、魔石と素材と教えられている。


 中央部分で高価な薬草やキノコに目の色を変えている連中よりも、最外周で魔獣を討伐している者の方が実入りが大きい。


「オーガ、四頭っ!」


 次々に血祭りにあげられて行く魔獣達。僧侶職や魔法使いを一度極めた、レベル20~30の戦士なので、その上の二次職になれれば安泰。


 これが最後のパワーレベリングで、ステータス不足で転職できなかった者は卒業見合わせ、慰留されてボーイスカウトの指導者として暫く残留。


 暫く死闘が続き、刃物や鈍器を持つ手がブルブル震えるほどで、力が入り過ぎたり血塗れで持ち手がズルズルしたり、血油で刃物として機能していなかったり、血を拭きとった後の雑布が地面に転がっていたり、二本目三本目の刀に持ち替えていたり、かなりの修羅場が展開されていた。



「よ~しっ、これまでっ!」


 獣除けの香が焚かれて一時中断。結果、中央への侵入は一度も許さず、オッサンが手を下すまでも無かった。


「はあっ、はあっ、はあっ」


「ゼェ、ゼェ、ゼエ……」


 震える指を刀から引き剥がし、納刀して座り込んで息を整える一同。


「よくやったっ、よくぞここまでっ」


 もうオッサンの方が涙ぐんでしまって、成長した訓練生を見渡す。


 入学時は鎧の着方すら知らず、靴を履いていない裸足の学生までいた。剣を振るうなど無理で、自分の足先を斬ってしまう様なドジっ子揃い、それがついに卒業課題をこなして、二次職に転職できる者まで出た。


 最初から戦士を目指したのではなく、適性を見て僧侶か魔法職を極めさせ、ヒットポイントも稼がせたが、青鼻垂らしていたクソガキで小僧が、一人前の戦士になってオッサンを満足させた。


 次には転職して、騎士やサムライになってオッサンを更に喜ばせるか「先生みたいになりたいです」と言ってくれた奴には、治療魔法と攻撃魔法を極めさせて、それから自分と同じニンジャかアサシンを目指す。


 普通の人間なら人生をかけてのレベル上げ作業になるが、そこはオッサン所有の魔道具で経験値倍加アイテムの数々が物を言って、ほんの数か月から一年の学習期間で済ませた。


 誰もが大してレベル上げも出来ず、元々の才能だけでツッパリ続け、粋がって奥地に行って魔物のエサになったり、手足を齧られて負傷して引退していく。


 後遺症も治せず、大病をしたのと同じく、体の負傷を癒せずに死んで行くものが多い中で、呪いも受けず毒や石化も受けず、感染症にも感染せずにここまでレベルを上げられる者は少ない。



「やった、ついに騎士になれる」


 魔法師から戦士騎士コースを選んだ者も、二次職に転職可能になって喜んでいた。


「俺もサムライに」


 まだ震える手を見つめて、僧侶職を極めてから侍職になれる者も出て、引退しても治療院で稼げるように。


 パーフェクトヒールまでは使えないが、大僧正に転職すればもっと上が目指せる。


 モンクから聖騎士(パラディン)、正教会の聖堂騎士になり、出世して十二使徒と呼ばれる神聖騎士になった者もいる。ジョブの方の神聖騎士とは違うが、一般人がなれる職業ではない。



 レベル上げしても、パワーレベリングしても、何時まで経ってもステータスが上がらないで、転職可能にならない気の毒な奴がいるが、そいつらでも「レベルを上げて物理で殴ればなんとかなる」が信条のオッサンなので、レベルを上げ続けて何とかする。


 約三か月から半年ごとに卒業イベントが開催されて、その時は来賓なども招いて、その場で転職させて二次職などに。


 聖女の上、大聖女が出た場合には治療院ではなく修道女会がスカウトに来る。同じく、大僧正が出た時も修道士会がスカウトに来る。


 騎士になれば騎士団に就職出来たり、才能があって聖騎士にまでなった者が出れば、遠く聖都からお迎えが来て、聖堂騎士への道が開ける。



 なんやかんやで卒業認定が出て、二次職に転職可能になった奴はパワーレベリング終了。後方に下がってパーティー編成しなおして、未だにステータス不足の奴が前面に出て戦う。


 ほんの1か2ストレングスや知力が足りない場合、ナンタラの実とかステータスを1上げる食い物とかを利用して、転職させる裏技も有ったりする。


「本日はここまでっ!」


 前列の疲労が大きくて、食事や休憩程度では回復できなくなったので終了。日が暮れるとさらに凶悪な魔獣が出るので、足元が明るいうちに退散する。


「兵隊さんは辛いよね~、また寝て泣くのかね~」


 軍歌と言うか隊歌と言うか、自然発生的にできた替え歌など歌いながら退却。


 こんな危険地帯だが、何故か街道のような物が出来ている。数十年パワーレベリングしているので、マシェットで切り開いたり、塩など撒いて木を枯らせたり、歩きやすいように整備調整されている。


 山登りの道のように、上下差がある所には鎖やロープが設置されていたり、簡単な階段になっていたり、獣道が簡易な道路に変身している。


 危険な道で到達した場所も危険だが、未だに死者は出ていない。試験会場や採用試験で死者など出すと責任問題で、天狗の師匠の弟子は絶対殺すマンの鬼だとか、岩に掛けてある綱を斬る修行をした兄妹は既に死んでいるんだとか、そんな壮絶な試験は行われない。



 クランハウス


「生きて帰って来れた~」


 ここには背が低いデッブデブの、漫☆画太郎先生作画のババアだけではなく、ちゃんこ番?みたいな奴らもいる。


 ドワーフ嫁とかエルフ嫁とか遊牧民嫁は、スマホ太郎か八男のパーティーみたいな「ドキッ、女だらけのキャッキャウフフ」だったが「亭主元気で留守がいい」だとか「旦那デスノート」に投稿するような奴らになってしまい、冒険者引退とかパーティー解散後に大金持って故郷に戻った。


 ジャングルの部族の少女みたいに、言語や風習の研究者の嫁にはなったが、ニューヨークなどでは決して生きて行けないので、故郷に帰った奴もいる。


 流石に瀬戸内寂聴みたいに、旦那の教え子と駆け落ちして、子供まで捨てて行くような鬼畜はいなかったが、尼僧の振りをして人生や生き方を語ったり「テメエだけには言われたくねえっ!」みたいなキチは、もしいればオッサンを崇拝する弟子に殺される。


 逆に言うと小国の姫だけが未だに家にいて、新入りの面倒を見てやったり、ちゃんこを用意してやったり「お代わりしなさい」も言う。


 モリモリ食わせてブリブリ出させないと成長しないが、たまに多く食えないし便秘でブリブリ出せない奴もいて、退所するのも出て来る。


 そういった連中は、店までは持たせて貰えないが、ちゃんこ店の店員になったり「クラーケンお代わり自由」の店になら入れる。


 日本人的に、生で食うと「寿司が無限に食える」とか、煮炊きすると再生が止まるので「再生中に絞めたクラーケンの味噌煮が上手い」だとか、一回倒すと足でも無限再生するのでお代わり自由。


 たまに肥溜めとか便壺で、ちっちゃいクラーケンが再生したりもするが、経験値的においしいので頂く。


 食えない事もないが、便器の下から出て来た、ウ〇コを元にして再生して、大小便を食って産まれた奴なので、ウ〇コを食べたいマニア以外は食べない。


 乾燥させて干物にして焙って食うと美味いらしいのだが、韓国の鍋で、エイを発酵させてアンモニア臭を鼻から出して「ムホホ~~!」とか言って泣きながら食う珍味みたいに、マニア以外は食さない。



「お代わりしなさい」


 ちゃんこ番のババアが訓練生に食わせる。「もう食べられない」と言っても、わんこ蕎麦みたいに無理やり入れて食わせる。


 アメリカ人のデブのママみたいに、ポテサラどっさり盛ってやって「モ~ア?」と聞くぐらい盛る。お婆ちゃんの実家に行ったみたいに「お腹すいてないかい?」と聞かれたら最後、スーパサイズミーされる。


 食いっぱぐれたババアの友達とかも、オッサンに雇われてちゃんこ番をして食わせる。


 卒業生だが使い物にならないメスガキとかも、暫くちゃんこ番をさせられて、どこかに就職口を探させる。


 どうせ「ネイルサロンやりたい」「ヘアカットしたい」程度のアフォの中卒程度の希望なので、経費とか支払いまでどんぶり勘定過ぎて上手くいかない。


 運動部のマネージャー的に来ている女とか、士官候補生学校の周りみたいに、チップで稼ぐしかない脳みそ空っぽの体だけみたいな女も、二次職になれた男は狙い目なので、体を使って誘惑する。


「ねえ、騎士になれたんでしょ? オメデト~」


「あ? ああ(////)」


「鍋よそってアゲル~~」


「わ、悪いな(////)」


 騎士転職決定してモテ期到来。


 オッサンも、心根が腐り果てたような浮気女とは結婚させないが、そんな奴の方が体も良くて、若い女特有の甘酸っぱい良い匂いしてるので、本誌記者もたまらず昇天。


 処女もケツや口も脇マムコの処女も、何もかも無くした阿婆擦れや出戻りは、悪所の飲み屋にでも行くが、それでも二次職になったり騎士団に就職できそうな奴は狙い目。


 たま~にペタジーニみたいに、友達のママにガチ恋して結婚までするマザコンもいて、オリックスの谷ぐらい守備範囲が広くて、女性ファンがいるのにわざわざヤワラちゃんと結婚する奴もいるので、反対はするが恋愛は自由である。


 料理しない家事しない掃除しない何もしない奴は追い出すが、最低限煮炊きは教えてクランハウスの掃除洗濯もさせる。


 そちらの女主人は、デッブデブのババアなので任せてある。



 他の就職口として、一万人に一人ぐらい人体の経穴が分かる人物もいて、どこに針を刺してどの深さまで行けるのか、経絡を断って痛みを止めたり出来る人物もいる。


 そんな奴も「儂がいつでも店持たせてやる」と言われるので安泰。


 巨人の江川選手みたいに「ここに打ったら野球生命は終わりです」と言われても痛み止めに打ってしまい、登板しても打たれて座り込んで泣いてしまい、事情を知らないアンチ記者に「傲慢な江川を討ち取ったり」などとスポーツ新聞に大書され、後から事情を聞かされても引退宣言をしても、面の皮が厚すぎて一切謝罪しなかった記者もいるらしい。


 トキみたいに経絡秘孔を突けるとか、柔道整骨が上手かったり、マッサージ系統とか足のツボが分かる奴もいるので有情拳。



 たま~に「竜と一緒に育った」「竜に育てられた」人間が入学することもあるが、そいつらは別格で、ドラゴンロアを使って竜魔術を使うので化け物。


 赤ん坊のころから竜の神気をたっぷり吸って生きて来たので、普通に不老不死だとか再生力無限。


 骨折しても痛みを感じない障害を持っている子供みたいに、腕が一本ぐらい飛んでも平気。


 普通の人体の強度なので、聖衣でも着てないと防御力は低いのだが、レベルを上げて物理で殴って装甲値を上げてどうにかしてある。


 レベルが上がると、親?から継承された12階梯魔法と、絶対防御魔法を使えるので絶対無敵。


 オッサンの家で育った子供は「竜と一緒に育った」ので無双。母親代わりの親竜が、間引いた方の子供を配達して来て『育てろ』と言って預けて行くので、人間語を覚える前に人化した兄竜と姉竜が竜語で育てて「竜に育てられた」実績も解除。


 親?から継承した魔法で、発音もネイティブなので会話も可能で、ドラグスレイブが効かないルビーアイとかの魔神相手でも有効な魔法が撃てる。


 更に「パパのおよめさんになる~」を実行した娘竜なんかもいて、ドラゴニュートも産まれて人類の中では無双。



 本日もモリモリ食ってブリブリ出したが、食事中にもオッサンの中ネタを聞かされる。


「エルフの里に行ったらよう、何でも大世界樹が代替わりするそうで、大きい方が枯れて、分株の新芽が出て来てるのを移植するんだと」


 世紀の転換期だが、その場に立ち会ったというオッサン。


「大世界樹が枯れると、世界樹から生まれた精霊とか精霊王まで全部死ぬそうでな、ジジイババアオイオイ泣いて、自分と友達の精霊とお別れしてやがるのよ。見てられなくてなあ、大世界樹の根っこの周りに竜の涙撒いてやってな、そしたら半分ぐらいで無くなっちまって」


 エリクサーに匹敵する奇跡の薬品を、地面に撒く馬鹿はいない。でもここにいた。


「足りねえから本人から取ってやれって事でな、泣ける話聞かせてやって、息子も娘も泣かしてやって、親竜もついでに泣かせて……」


 当時のグリム童話だとか、ヘンゼルとグレーテルでも、妹の体を千切って目印に置いてきたので兄は家に帰れたんだとか、シンデレラの原作でも、本当の母親を重い箱に挟んで蓋を絞めて殺してしまうだとか、フリーレンみたいに「暗いよう、狭いよう」と言わせる間もなく殺してるので、継母に虐められて灰かぶりになるのも当然で泣けない。


 苦しいのと痛いのはヌケない。


 でもオッサンは、地味に「かさじぞう」とか「ごんぎつね」とか、現地に合わせて話を変えて、感動の話に仕立て上げて竜の親子を泣かせた。


「そしたらよう、大世界樹ビカビカビカ~って光り始めて、枯れないで復活しやがったのよ」


 代替わりを妨害はしたが「大世界樹復活」と言う、世界樹の葉を使っても不可能なことをやってのけた。


 世界の理に反する行為だが、エリクサーと世界樹の葉と竜の涙の関係性、グーチョキパーのようにどれがどれに強いのを証明したような物である。


 尚、本人は何をやったのか理解していない。


「もうジジイババア喜んじゃって、次世代の分株ってのを植える役目を仰せつかってな」


 これも本人は理解していないが、分株を植えるという事は、次に生まれて来る精霊達と精霊王の親になったという事。


 亜人類でただ一人、世界樹を育てることができる聖女とか、その同類。


「前の精霊王まで出て来て礼を言われてなあ、本当は世界樹が代替わりしないで生き残るのは駄目なんだそうだけど、俺を王配にすると大丈夫だとか言って」


 掟破りの逆サソリだったが、オッサンを王配にしておくと処罰しないで済むようなので、精霊王とも結婚したオッサン。


 この精霊王の支配下と、新精霊王の支配下で、精霊と契約して魔法が使えているのはオッサンのお陰。もし逆らうと魔法使用停止。


 もう大ぼら吹くのもいい加減にしろと言う感じだったが、前のドラゴンの話でも、王家全員死ぬホラー展開以外にオチも下げも無かったので、そろそろ「本当の事言ってるんじゃあ?」と思う連中も出て来た。


 童話とか口伝とか口頭で残った言い伝えとか、微妙に内容が一致しているのも怖い。


 ただ、精霊王は両性具有だったようで、「you来ちゃいなよ(伏字)」されて、ホイホイついて行ったらバックり食われてしまって「アッーーーー!」と言わされたらしい。


 精霊王の王配になったと思ったら、相手ガチホモバリ攻めで、ガン掘りされたでゴザルの巻き。


 今回はオチが付いて、デッブデブのババアも「なにさらしとんねんっ、この泥ガメッ!」「母ちゃん堪忍」でちゃんちゃん。

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