第11話 武装>操縦技術 を証明したい男
その名を見たバラクーダ
発信者は優しい口調で、バラクーダに告げる。
「“
その正体は、バラクーダをアルティメット・カップに誘った男、
「お……オーナー!」
「まずは、君の考えを聞かせてよ。なぜ、当たらないのだと思ってる?」
「それは……“
「いいや。君が二度撃った“
「回避? バカな……雷を避けるだなんて、そんな。いや、それ以前に奴は“
「出来るさ。発動の予測も、そして、回避も」
「はぁ!?」
「正確に言えば、雷を避けるのはさすがに無理だ。だが、“雷撃”なら、避けられる」
「一体、どういう事ッスか……?」
「その前に機体をどこかへ停めなよ、井頭君。どうせ君の操縦技術じゃもう、一条には追い付けないだろう?」
「“
二度目の“
部屋で、観戦中の福馬がハシルに問うた。
「“
「知らないようだね。なら、“
ハシルは、質問に答えかねた。
なぜなら、“
使う側の都合である「仕様」など、考えた事も無かったからだ。
「“
「……つまり一条ソウは、魔力の動きで発動のタイミングを予測……いや!」
ハシルは首を横に振る。
「予測した所で、雷が避けられるとは思えない。そもそも、アイツは回避行動をしていたのか?」
「彼が回避のためにした行動は、一つだけ。魔力レーダーによる感知を回避するため、反重力エンジンを切った」
福馬は、趣味の話をする時のように、ニコニコとした顔で話す。
「エンジンを……切った?」
「重要なのは、“
「そうか……」
ハシルは、ようやく合点がいった。
「機体で魔力を発する部位は、反重力エンジン。だから、一条は“
「気付いたようだね。悪くない理解力だ」
福馬は微笑んだ。
「でも、そんなのは賭けだ。機体の操縦中にエンジンを切るなんて」
地を走るガソリンエンジンの自動車でも、運転中に突然エンジンを切るのは自殺行為だ。
速度の調節が不能になるだけでなく、パワーステアリングのハンドルは重くなり、左右の制御もままならない。
宙を飛ぶ機体の制御は尚更、困難となる。
「魔法攻撃のタイミングに合わせ、エンジンのオフとオンを挟んだ機体制御。トッププロでも難度の高い技だ。だから、最初に伝説のレーサー“
そう言って、福馬は微笑んだ。
「レーダーから機体を『消す』技術、“
「ソウは数ヶ月前に一度、“
ハシルの近くにいた青年が、言った。
「公式戦じゃない、闇レースだけどな。その時に“
「井頭君も、これくらいは知ってると思ったんだけど……二発も無駄に撃ったって事は、残念ながら、何も知らないんだろうね」
言いながら、福馬はスマートフォンを取り出し、どこかへ連絡を始めた。
「……何をしてるんですか?」
「何って、教えてあげるんだよ。井頭君に、一条攻略のヒントをね」
ハシルの質問に、福馬は不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「このままじゃ、つまらないレースになってしまうだろう?」
「さ……“
バラクーダ
――撃たれる瞬間に、エンジンを切ってレーダーの捕捉から逃れる……そんな事で、俺の“
「分かったかい? 適当なタイミングで“
「クソ、小賢しいマネを……しかし、奴に当てるにはどうすれば……」
「分からないなら、ヒントをあげよう。走行中に一瞬でも反重力エンジンを切る事は、非常に危険な行為だ。それくらい、プロの君なら分かるだろう?」
「……き、危険、ですか?」
「……」
「いや、そ、そうだ! エンジンを切っている時に魔力弾を撃たれれば、一条は回避行動ができない!」
「エンジンを切ると言っても、ほんの一瞬だ。レース開始時のように闇雲に撃っても、一条には当たらないよ?」
「つまり……“
バラクーダは、コース脇に停車した状態で深く考え、答えた。
一条が一周して再びやって来た所で、撃墜する。
このレースで勝つにはもはや、他に方法は無い。その事を、バラクーダは既に理解しているからだ。
「……出来そうな気がしてきたッス。ありがとうございます」
「タイミングはシビアだ。一条に、攻撃を喰らう隙を作らせるんだからね」
上機嫌な福馬の声が、バラクーダにとっては、挑戦状を叩きつけられているように感じられた。
「……やってみせますよ。必ず、当ててみせます」
バラクーダは、力強く返事をした。
「ああ。健闘を祈るよ」
福馬からの通信は、向こうから一方的に切られた。
――そうだ。奴に攻撃は、当たる。当たらなきゃならねぇ。
バラクーダは、自身の両頬を平手でパチンと叩き、気合いを入れ直した。
――操縦技術なんて物でレースに勝てるなんて、あっちゃならねぇ。勝つのは常に、より強い武装を持った奴なんだ!
<アルティメット・カップ 一次リーグ第1108試合 現在順位(括弧内は賭けレート)>
1位 一条ソウ(1.50倍)
2位 “四天王”バラクーダ井頭(1.50倍)
リタイア(機体破損) キソ。(20.74倍)
リタイア(機体破損) 太刀宮陽太(13.22倍)
リタイア(機体破損) ピコラータ鎖東(19.64倍)
リタイア(機体破損) 槍谷平帆(11.59倍)
リタイア(機体破損) 亀垣九郎(9.15倍)
リタイア(機体破損) 運ゲー太郎(25.12倍)
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