第27話 – 弱さ
軍事基地は永遠に続く灰色の朝に閉じ込められているようだった。一日はいつも同じように始まる。顔面を殴られるような鋭い警報音によって眠りから強引に引きずり出される。本当の意味でそれに慣れる者はいなかったが、やがて誰もが不満を口に出さなくなった。
弓月は警報が鳴った瞬間に飛び起き、女子宿舎の高い格子窓から冷たい夜明けの光が差し込むよりも先に動き出していた。
その朝も例外ではなかった。周囲の多くの少女たちが苦しげに起き上がるなか、彼女はすでに立ち上がっていた。かすかに愚痴を漏らす者もいれば、無言で機械的に服を着る者もいた。その中には最近弓月と親しくなり始めた祭もいた。
「今日は雨じゃなくてよかった。泥は靴の下で最悪だから」短い髪に手を通しながら祭が言った。
弓月は疲れたように微笑んだ。「それだけで他が良くなるわけじゃないけどね」
「分かってる。でも私たちに残ってるのは皮肉だけでしょ?」まもなく全員が準備を終えると、ドアの前ではいつも通り完璧に軍服を着こなした陸が待っていた。
彼はただ頷き、一行は彼に続いた。
基地の中庭は広く、草も生えず、壁は時間と武器訓練で黒ずんでいた。その奥には崩れかけた建物の裏に隠された訓練場が広がっていた。
そこはすべてが荒削りで鋭利だった。ひび割れたコンクリートブロック、風に揺れる有刺鉄線、ささくれ立った木の障害物、淀んだ水で満たされた穴。正式な施設というよりは、即席のサバイバル訓練場のようだった。陸は舌打ちした。
「今日は完全なコースを繰り返す。近道も休憩もないぞ」訓練が始まった。
弓月は集中しようとしたが、脇腹の痛みはまだ完全には消えていなかった。壁を登り、板の下を這いずり回ったが、疲労は重くのしかかり、何度も泥の中に滑り、血の滲んだ手で立ち上がった。
周囲から同情する視線や、それ以上に侮蔑する視線を浴び、陸は影のように彼女につきまとった。彼女が障害物の陰で崩れ落ちると、陸が言った。
「止まれば死ぬだけだ。軍服を着た死体など必要ない」弓月は答えず、胸にのしかかる重さを無視して必死に呼吸を整えた。
まるで空回りしているような気がしてならなかった。休憩の間、弓月は少し離れたところで立ち尽くす一人の少年に気がついた。顔色は悪く、虚空を見つめている。
彼は誰とも話そうとせず、次の訓練に加わろうともしなかった。
弓月がそっと見ていると、背後から陸が言った。
「兄弟だ」
弓月ははっとした。「兄弟?」陸は少年をじっと見つめながら頷いた。
「先日、有刺鉄線で死んだ奴の弟のほうだ」弓月は目を伏せた。
「それでも何もなかったかのように訓練させるの?」陸はため息をついた。
「戦争だからな。失敗には代償がつきものだ。弱さも同じだ。兄のようになりたくなければ、地面を眺めるのではなく、地面の一部になるしかない」弓月は不快感を露わにした。
「それはあんまりじゃない?」陸は彼女を見返した。
「外に出れば誰もあいつのことなど気にしない。マルタは情けなどかけない。痛みだけが俺たちの教師だ」弓月は再び少年を見た。
彼は唇を噛み、涙と怒りをこらえていた。陸はそれ以上何も言わなかった。
訓練が再開された。走り、飛び、重量訓練、射撃演習が続いた。
その最中、チーム演習の途中で突然、鋭く金属的な警報音が響き、全員の動きが止まった。スピーカーから機械的な声が流れる。
「警告。コードブラック発令。繰り返す、コードブラック発令。高密度のマルタの群れが首都から20キロ圏内で確認された。全ての訓練生は直ちに招集地点へ集合せよ。以上」訓練場は静まり返り、皆の顔から血の気が引いた。
それが訓練なのか、もっと深刻な事態なのか誰にも分からなかった。
弓月の胃が締め付けられた。陸は冷静に一同を振り返り、言った。
「聞いた通りだ。宿舎へ戻り、着替えろ。30分以内に各自支援部隊に配属される。馬鹿な真似をするな」そして弓月をじっと見つめながら付け加えた。
「誰が準備できているのか、誰が戦死者名簿に加わるだけなのか、それが今はっきりする」
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