第5話

まばゆい光に包まれて、

また違う世界に飛ばされた。


だんだんこの仕組みがわかってきた。


俺は、冷静な対処をできるようになる。


とにかく、現状把握。


なるようになる。


目の前に起きているミッションを

こなしていく。



白い世界から、音が頭の中に送り出される。


バババババ……。


どうやら、ヘリコプターの

プロペラの音のようだ。


目を開けた瞬間。


鼻に違和感が沸く。


団子鼻の俺の鼻がワシのように高くなり、

目のホリも深くなっている。


手で自分の顔を確かめる。


全体的にホリが深く、濃い顔に。


あっさり醤油顔がソース顔に変わっていた。


髪の色も真っ黒から茶色の地毛に

なっている。


背中には大きなリュック。



同じような格好する人がもう3組ほど。


まさか。


これはスカイダイビングでも

するのだろうか。


大きなカメラを持った男性もいる。


映画の撮影か何かか。


思い出した、俺は俳優になっているんだ。


スタントなしに演じる⚪︎ム・クルーズだ!



無理無理無理。


俺にそんな大役与えるなって。


歴史変えちゃうって。


え?

待てよ、タイムスリップしてるのか。


脇役に今からチェンジできないかな。


そうこう言ってもいられないようで、

監督らしい人からゴーサインを出された。


勇気を振り絞って、

与えられたミッションをこなす。



ヘリコプターから

身を乗り出して飛び降りた。


これ、

パラシュート開かなかったら、

即死するやつ!


よくこんなこと人間はするよな。


落ちるってマジ怖い。


まだ、俺は生きたいらしい。


死にたくないって思ってる。


死にそうなくらいに

飛び降りているのに

怖いって

ビビってる。


パラシュート絶対開いてほしい。


そんな願いがずっと頭によぎる。


空中の演技をこなしては

案外楽しく空の世界を満喫した。



いざ、合図を送られて、

パラシュートを開く時、

何度も紐を引っ張るが、

なかなか開かない。



というか、こんな時にトイレに

行きたくなった。



スカイダイビング中にトイレって

マジやばい。


これ、漏らしてもいいの?


この際、もう大丈夫なのかな。


そんな変なことを考えながら、

必死で紐を引っ張るが、

パラシュートが開かない。


周りにいたスタッフも焦りを見せた。


俺、落ちて死ぬのか。


マジこれでは死にたくなかった。


あと、ギリギリの高さというところで

どうにかパラシュートが開いた。


開いたのはいいのだが、

細く綺麗に丸く開かなかった。


不運な事故で

少しだけスピードが落ちただけで

全身を強く地面に打ちつけて、

俺は、息絶えた。


もう、ぴくりとも動かない。

息もできない。


スカイダイビングは命懸けなんだと気づく。



外人であることは間違いなかったが、

主演俳優ではなく、

脇役であることがわかった。


なぜかそこでホッと安心した。


歴史変えちゃうじゃんという

よからぬことを考えている。


俺が守りたいのはそこか。


SFの映画の見過ぎか。


医者がタイプスリップする漫画を見過ぎか。


いや、これ、

タイムスリップじゃないかもしれないのに。


俺の意識はまた飛んだ。


真っ白い世界にリセットされた。



まだ生きていたいという気持ちが

あるらしい。


どうして

元々の現実世界にいるときは、

いつも死にたいと考えるのだろうか。



まだ謎が解けない。


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