第2話 終わり良ければすべて良し


「佐藤さん……、一日、いや一時間でもいいから彼女になって下さい!」

「はぁ!?」


 驚きフリーズする佐藤。


「ちょ、ちょっと色々すごい情報量で……」

「ああ、返事はゆっくりでいい」

「そうじゃなくて、まず一日、一時間彼女になるってどういうこと!?」

「言葉の通りだが」


 勢は至極当たり前のように返事をする。


「はぁー……最低」

「んなっ!」


 佐藤はため息をつきながら心底あきれた表情を見せる。


「すまん、デリカシーに欠ける発言だった、申し訳ない」

「だが彼女が欲しいんだ、頼む」


 勢は謝罪しつつ、無謀にも逆に佐藤に食い下がっていく。


「無理、ぜっ、たい絶対むーりー」

「じゃあ、友達からはどうだろうか」

「いや既に友達でしょ、何言ってんの?」

「……」

「なに照れてんの」

「嬉しくてついな……」


 佐藤は落ち着きを取り戻し人差し指を立て、ゆっくりと喋り始める。


「まずひとつ目、一日彼女、これはダメ」

「すまなかった」


 二本目の指を立てながら話を続ける。


「ふたつ目、告白する場所がなんで物置部屋なん!? そこは屋上とか裏庭とかあるでしょうが!」

「すまない。考えよりも先に好きが勝ってしまった」

「それで最後、なんでわたしに告白しようと思ったの?」


 三本目の指を立て佐藤は勢に問いかけた。

 その質問に勢はまっすぐ佐藤を見つめこう答えた。


「それは佐藤がかわいいからだ」

「んなっ! そんな見つめられて言われても恥ずかしいって」

「ん? 俺はただ事実を言っただけだが?」


 勢がさも当たり前かのように返答し、そこに追撃の一言。


「好きだ佐藤」

「だからその真っすぐな目をした顔をこっち向けんな!」


 佐藤は恥ずかしさで真っ赤になりながら勢の顔に手を添えグルンと九十度に回した。


「ぐえっ、さっ佐藤苦しいぞ」


 たまらず身体を横に向け難を逃れる勢。


「ただ間に合わせで言ってるわけじゃないんだ」

、一目見た時から好きでした、付き合ってください」


 横向きのまま再び告白の一言を放つ勢。

 それに対し桃花は―― 

 


「ま、まぁ、ちょっとぐらいなら考えてやってもいいけど?」

「ほ、本当か!? じゃあまずは一時間からよろしく頼む」


 桃花は頬を赤らめたがすぐに目を少し吊り上げながら怒気を孕んだ声色で。


「あーもう! 一時間じゃなくて一日、明日、明後日も付き合うからね!」


 桃花は勢の背中をバシッと強く叩き押し出す。

 しかしすぐに桃花が隣に並び手と手を絡ませる。


「このままの状態で帰るのか?」

「そう! このまま!」


 勢と桃花はふたり手を繋ぎながら教室へと戻っていった。


「女の子の手ってこんなに柔らかかったんだな」


 勢はそう呟いた。






―――――――――――


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急に告白したくなったので勢いですることにした 新御堂 @sinmido423

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