急に告白したくなったので勢いですることにした
新御堂
第1話 終わりの春、始まりの春
季節は高校最後となる春、
「まずいまずいまずいまずいまずいまずい」
廊下でノート片手で連呼する姿はまさに奇人だ。
しかし横を通りすぎる生徒はまた押田が変なことをやっているとスルーする。
奇行を続ける勢はぼそりと呟いた。
「もう……これはやるしかないな……」
ノートを握りしめ、勢は一人覚悟を決めた顔になる。
まさに戦う顔だ。
「おーい、押田ー授業始まるぞー」
そんな顔をしたのもつかの間、先生が教室から顔をヒョコっと出し軽く注意し、勢はそそくさと教室に入る。
「まーた押田は変なことしてんの?」
そう話しかける彼女は佐藤桃花。
この高校は校則が緩いので金髪に髪を染めていて、手足は長くてスタイルも良く目はぱっちりと二重で輪郭もシュッとしており、どこかの雑誌に載ってもおかしくない美貌を持ついわゆる陽キャのギャルだ。
佐藤は勢とたまに喋る仲である。
「ああ、俺の高校でやりたいことノートの最後の欄が埋まって無くてな」
「なにそれ、やってること小学生じゃん」
そう笑いながら二人はガラガラと椅子を引き席を立つ。
「きりーつ、礼、お願いしまーす」
日直が声を発し、それに続き教室中にお願いしますの声が響く。
「で、何をやり残したん?」
「彼女を作るが埋まってないんだ」
「ぷっ、何それそんな事も書いてるの?」
「俺が何書こうと自由だろ」
「おーいそこ、私語」
授業が始まっているのにもかかわらず、喋る二人を注意する教師の声。
『すいませーん』
俺と佐藤がハモったように謝罪をする。
「押田さぁ、さっきの話後でまた教えてよ」
「ああ」
佐藤はひそひそと話す。
そして授業が終わり小休憩時間になり、二人は少し姿勢を崩し喋る。
「それで、どうすんの?」
「なにがだ?」
「彼女!」
「あー……、そうだ!」
「げっ、まーた押田がろくでもないことを思いついたか」
いかにも嫌な顔をする佐藤、そして何かを決心したように見える勢。
しかし少しもじもじしながら口をもごもごとしている。
「押田、なんか言いたいことあんの?」
「ああ、訪ねたいことがあってな」
「んー?」
「佐藤、昼休みちょっと時間をくれないか?」
「へ? 別にいいけど」
「ありがとう佐藤」
そして授業が終わりそのまま昼休みに入り、もくもくと昼ご飯を食べ、勢は佐藤のもとに向かう。
「佐藤、ちょっといいか?」
「ん、いーよ」
二人は勢が先導するように歩き、人気のない物置部屋に移る。
そして勢が意を決した表情で口を開く。
「佐藤さん……、一日、いや一時間でもいいから彼女になって下さい!」
「はぁ!?」
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