近所のスーパーの

 レジ打ちをしていた涼白を見つけ

 俺は怒ろうとしたが、

 涼白は慌てた様子で言った


「お客さん並んでるから

 早くそれレジ通して」


「あ、あぁ」


 俺は120円の豆腐を買い

 涼白に言った

「仕事終わるまで外で待ってるからな」


 俺の怒った口調に

 ウンと元気の無い返事をしていた


 20時半

 私服に着替え仕事を終えた涼白が

 俺の前にやって来た、

 本人は俺の顔を見て

 少し申し訳無さそうにしていた

 俺が何を言うのか

 分かっていたみたいに


 手に持って居る豆腐を見て

「どうして豆腐?」っと涼白は言った


 丁度いい

 家出の事や大学を辞めた事を

 俺の部屋に居る秋姉に言ってやる、

 お前の心配して

 秋姉には言わないでおこうと思ったが

 そんな事もう関係ない


「家に秋姉が居るから、

 そこで色々話してもらうからな

 大学の事や家出の事とか」


「秋姉が!?」


 俺は走り疲れ

 引きずる足で帰って居ると、

 それを見た涼白が言った

「足...大丈夫...?」っと


 俺はまだ腹の虫が治らなかったのか

「お前のせいでな」っと言葉を返した

 涼白は下を向き

 ごめんと小さな声で謝っていた


 俺の住むアパートに着き

 自分の部屋の扉を開けると

 鍋パーティーを心待ちにしていた

 下着姿の秋姉が現れた


「遅い!!って悠伊ちゃんも?

 どしたの?

 家に帰ってて良かったんだよ?」


 俺は秋姉に言った

 涼白は大学を辞め

 家出までして居る不良娘だと、

 秋姉も一緒に

 涼白を怒ってくれると俺は思っていたが

 そうでは無かった


「知ってる」


 ・・・・・・は?知ってる?

 どう言う事だよ

 なんで秋姉が知ってんだよ!!


「まだ雄一に言って無かったの?」

「・・・・うん」


 俺の知らない事を

 この二人は知っているようだ、

 俺は秋姉に言った

 どう言う事か説明してくれと


「とにかくさ、ご飯食べよ?

 そこでゆっくり話せばいいじゃん」


 ・・・・・・

 俺の部屋で涼白と秋姉の三人で

 鍋パーティーをする事になった、

 俺は鍋をよそいながら

 二人にどう言う事なのかと質問した

 どうして秋姉が

 涼白が家出してる事や

 大学を辞めた事を知って居るんだ


 秋姉はビールを飲みながら

 涼白の顔をチラチラと見ていた、

 涼白も何かを思っていたのか

 もういいですと言っていた


 秋姉は仕方ないと溜息を吐き

「悠伊ちゃん

 やりたい事が見つかったんだって、

 それで親元を離れ

 今は私の家で居候してんの」


 は?聞いてないぞそんな事!!

 それに

 大学辞めてまでやりたい事ってなんだよ

 俺と一緒に受験勉強したあの日は

 なんだったんだよ!!

 茜さんがシングルマザーで

 夜の仕事を頑張って

 涼白を育ててくれたから

 その感謝に

 大学を出て良い会社に勤め

 人生を安泰させるって!!


「私落ちこぼれでさ、

 もう勉強とかついて行けなくなって

 大学でも友達居ないし

 皆んなから変な奴って見られてるし

 ・・・・・それで」


 俺は箸を置いた、

 グツグツと鍋が煮たたる音だけが

 俺の部屋に響いていた


「やりたい事ってなんだよ」

「・・今は秘密....」


 なんだよそれ

 ・・・でも

 涼白が無事で良かった

 今の俺はそう思う事にした

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