12月26日の朝

 俺は1つの事で悩み

 夜も寝れず過ごしていた


「涼白....」


 涼白が大学を辞めた理由、

 それだけが気になっている


 涼白が幼い時から

 俺は涼白の事を

 妹の様に思い可愛がっていた、

 涼白に悩みがあるなら

 その悩みも相談になってあげ

 高校受験も大学受験も手を貸してやった


 涼白は女で1人の母親に育てられていた

 親は仕事で忙しく いつも涼白を

 俺と秋姉が住む家に

 面倒を見て欲しいと連れて来ていた


 だから俺は

 涼白の事を大切な妹だと思っている、

 秋姉は俺達を家族だと良く言っていたな


 血も繋がっていない俺達なのに、

 公園や動物園

 遊園地に水族館とか行ってたな


「・・・・・ダメだ」


 俺は外に出て

 涼白の家に行こうと思った


 涼白は今 母親と一緒に二人で

 アパートが良くある

 集合住宅に住んで居る、

 ここからそう離れていない

 確かめるなら本人に聞くしかない


 俺は自分の家の玄関をガチャリと開けると

 目の前に見知った女性が買い物袋片手に

 俺の家の玄関前に立っていた


 ダボダボの服にヤニ臭いセーター、

 そんなだらしのない女性は俺の家の前で

 大声で喋り始めた


「オッス雄一!!誕生日おめでとう、

 コレ今晩のオカズにと買ってきたぞ〜」


 俺の誕生日は昨日なのだが、

 買い物袋を見せつけてきた女性は

 それを俺に手渡そうとしていた、

 買い物袋の中身は鍋の具材のようだ


 俺は買い物袋を受け取らず

「誕生日は昨日だよ秋姉」っと言った


 このダボダボな服に

 ヤニ臭いセーターを着た女性が秋姉、

 俺と涼白の事を

 良く可愛がってくれた人物だ


 秋姉は元気の無い俺の顔を見て

 おろ?っとさせながら言った

 買い物袋冷蔵庫入れてくるから

 どっか食べに行こっか っと


 鍋の具材が腐らないよう

 冷蔵庫に食材をしまい

 俺は秋姉の行きつけだと言うラーメン屋に

 行くことにした


 朝の9時から

 やってるラーメン屋があったんだな、

 店の雰囲気は

 お世辞にも綺麗だと言った感じは無く

 年季の入った店内だった、

 ボロボロの立札に

 醤油ラーメンとか味噌ラーメンとか

 書かれたメニューがまた味を感じさせる


 秋姉と俺はテーブル席に座り

 何を注文しようか悩んでいると、

「ビールと唐揚げ、後漬物とかある?」

 そう秋姉はいきなり言った


 ラーメン屋に来たのにツマミ系ばかり

 秋姉はこの場所に飲みに来たのか?

 そう俺は呆れていた


「たくあんならあるよ、

 そっちのお客さんは?」

 そう店員のお婆さんが言ったので

「じゃあ醤油ラーメンください」

 っと俺は急いで注文を決めた、

 本当はもう少し悩みたかったんだけど


 ハイよとお婆さんは返事をして

 厨房に居るお爺さんに大声で言った

 醤油1.唐揚げとたくあん


 夫婦なのだろうか、言葉数は少ないが

 長年一緒に働いている感じの空気感だ


 俺は店の中をジロジロと見ていると

 秋姉は言った「いいっしょ、

 朝からお酒も飲める穴場なんだ」

 っと嬉しそうに


 コレだからこの人は

 そう俺は呆れて何も言えなかった、

 日頃から飲み歩いて居るから

 こんなアングラそうな穴場も

 知っているのだろう


 お婆さんが

 ビールとたくあんをテーブルに置くと

 秋姉はすかさずビールを

 グビグビと飲み始めた


「プハ〜、生き返る〜」

 はいはい、そんなテンプレな事を


 俺はテーブルのたくあんをひと口食べると

 秋姉は心配そうに言った

「どうした、何か嫌な事あった?」


 ・・・・・俺は涼白の事を思い出し

 秋姉に相談しようかと悩んだ、

 俺と秋姉と涼白は家族見たいな関係だ

 秋姉なら涼白の事を

 真剣に考えてくれるだろう


 ・・・・・だけど、

 俺は何も言わなかった


「コンビニバイトで眠いだけだって」

「そっかそっか!!、じゃあ大丈夫ね!!

 バイト頑張れ若者〜」


 若者って....俺もう29なんだけど


 テーブルに唐揚げと醤油ラーメンが置かれ

 俺はラーメンを食べ始めた、

 秋姉はそんな俺を見て昔の話しをし始めた

 この人は酔っ払うと良く昔話を始める


「懐かしいね、子供の時の雄一は

 ラーメンも上手くすすれなくて

 フォークでラーメン食べてたっけ」


 またこの話だ、年に2、3回は

 ラーメンを食べてる時に言われる


「春姉があんたを1人残しいなくなった時は

 私どうしようか本当に悩んだんだよ、

 春姉の心配よりアンタの心配を

 真っ先に考えてたんだから」


 ・・・秋姉が言っていた春姉と言う人物、

 後藤 春華 (ゴトウ ハルカ)

 俺の実の母親だ


 俺の母親は 俺が12歳の時

 俺の目の前で首を吊ってしんでいた、

 旦那に裏切られ

 女で1人で

 俺を育てることが嫌になったんだと

 俺はそう考えている、

 本当の理由は

 もう確かめようが無い...


 それから、

 母の妹である秋姉に俺は引き取られ

 二人仲良く

 小さなマンションで暮らしていた、

 だから俺は感謝をしている

 お金に余裕がある人では無かったのに

 それでも俺の事を大切に育ててくれた

 第二の母親だから


 秋姉はビールと唐揚げを食べ

 おじさんの様に喜んでいた


「そう言えば悠伊ちゃんとは最近どうなの?

 ちょくちょく会ってるんでしょ?」


 涼白の事だ...

 俺は黙った、

 黙っていたら不自然だと直ぐに考え

 元気そうだったよっと

 当たり障りのない言葉を返した


 食事を終え俺と秋姉は店を出た、

 俺は用事があるので

 先に帰っててくれと酔っ払う秋姉に言った


 夜は鍋パーティーだから

 早く帰って来いよと秋姉は俺に言う、

 あの部屋は俺が借りてる場所なんだが


 俺は秋姉と別れ

 涼白の住む住宅団地に向かった


「確か、306号室だったな」


 この場所には久々に来る、

 最後に来たのが

 何年前だったかも思い出せない、

 確か俺が....って

 そんな事を考えてる場合じゃなかった、

 俺より涼白の事だ!!


 306号室に到着して

 家のチャイムを2回押すと

 ジリリと扉の内側から

 鈍いチャイム音が聞こえた


 ・・・・・・・・


 俺はもう一度チャイムを2回押す、

 だが

 その扉が開く事は無かった

 留守なのだろうか?


 俺は仕方なく

 アパートの階段を降りて居ると

 下から1人の女性が階段を上がってきた


 女性は俺の顔を見て

 あっとした表情になっていた、

 俺も同様にそんな顔になっていたと思う


「茜さん...」


 涼白 茜 (スズシロ アカネ)

 涼白悠伊のたった1人の親、母親だ

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