12月25日の11時

 世間はクリスマス真っ只中、

 子供連れの家族や男女のカップル達が

 大通りの商店街を練り歩いていた


「どいつもコイツも浮かれやがって」


 クリスマスが嫌いな俺は

 クリスマスを純粋に楽しむ人達にすら

 嫉妬の目を向けてしまっていた、

 彼氏からのクリスマスプレゼントや

 サンタからのクリスマスプレゼントを

 楽しみにしてる子供達に

 俺はなんて事を思ってるんだ


 ・・・・・・涼白が大学を辞めた

 その事が頭から離れなかった、

 アイツが何でそんな事を・・・・・


 時間も時間だったので

 俺の腹は孤独にグゥと鳴り

 何処か1人で

 食事を出来るところを探していた、

 どこの店も賑わっているな

 それはそうか、クリスマスのこんな日だ

 何処だって賑わっているのが当たり前か...


「・・・あ」


 俺はそうだと思い

 行きつけの喫茶店に行く事にした、

 そこは俺と涼白が

 大学受験で勉強を頑張っていた場所だ


 ・・・・いや、俺がじゃなく

 俺が涼白に勉強を少し教えてただけだが

(参考書の問題を涼白に言ってただけだけど)


 そこは人通りの少ない

 商店街の端っこにあるような場所だ、

 それに そこのマスターとは顔馴染みだし

 気兼ね無く行けるような店だった


 俺はその店に着くと、思った通りだ

 誰も人が居そうに無い、

 この場所なら

 気兼ねなくクリスマスの空気を忘れて

 食事を楽しむ事が出来そうだ


 店の扉を押して開けると

 カランカランとヤケに小さい鈴の音が鳴り

 俺は店の中に入った、

 店の内装は

 カウンターのテーブル席が六つに

 客席用の小さなテーブル席が二つある

 よく見た光景の店内だった


 60を過ぎたマスターが

「いらっしゃい」と返事をすると

 俺は「どうも」っと小さく返事を返した


 何も考えず、カウンターの席に俺は座ると

 その二つ隣の席に

 若そうな女性のお客さんが座っていた、

 全く気が付かなかった

 こんな日に1人で

 こんな店に来る様な客が居たんだな


 俺は悪気のない口調で

「お客さん居たんですね」っと

 マスターに言った


 この店の客なんて

 爺さんか婆さんしか見た事がない、

 どうしてこんなクリスマスの日に

 俺と同じぐらいの女性が....


 マスターは言った

「失礼だな雄一君、

 新規のお客様の目の前で」


 悪い悪い、俺もビックリしてつい、

 俺はそう畏っていると

 女性の客は俺の顔を見て雄一?と言った


 何かを思ってるような表情で

 女性はそう言った、

 なんだ?、クリスマスの日に

 1人でこんな店に来る俺を見て

 笑おうとでも思ってるのか?


「お知り合いですか?」っと

 マスターは女性のお客さんに言うと、

 俺は えっと っとした表情で

 2人を見ていた


 女性は少し考えながら

「北神雄一 (キタガミ ユウイチ)君?」

 っと俺のフルネームを言った、

 どうして俺の名前を...

 こんな綺麗な人知らないが

 何処かで会った人なのか?


「そうだけど....貴方は?」


「やっぱりそうだったんだ!!

 中学高校と同じだった井上だよ!!」


 そう彼女が言うと

 記憶の底で何かを思い出した俺は

「井上弥淑 (イノウエ ヤヨイ)....さん」

 そう口ずさんでいた


 井上さんは久しぶりだねと席を立ち

 俺の冷たい手を握った、

 俺はタジタジとした態度で

 あぁとしか言葉が出ずにいた、

 マスターはキョトンとした顔で

 俺達二人の顔を見ていた


 俺と井上は同じ学年で

 中学高校と同じ場所に通っていた、

 そこまで仲の良かった訳では無かったが

 ある共通点だけが一緒だったのもあり

 俺達はその事で

 目を追ったりするだけの関係だった


 井上は冷たい手を離し

 俺も井上の温かい手を離し

 お互いの目を見て同時に言った

「誕生日おめでとうと」......っと

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