Uの雪 一部

深々ロア

 寒い冬のクリスマスイブ

 誰も来ない夜中のコンビニのレジで

 外の景色をボンヤリと眺めていた


「今日で29歳か....」


 ボンヤリと外の景色を眺めていたら

 12月25日を時刻は示していた


 そう、俺の誕生日は12月25日

 キリスト様と同じ誕生日だ、

 クリスマスに産まれたからと言って

 凄いとかラッキーだとかは思った事は無い..

 それどころか

 クリスマスが誕生日の俺は

 親から誕生日プレゼントは貰えず

 サンタから

 誕生日プレゼントを貰うといった

 損な幼少期を過ごしていた


 学校の同級生は、俺の誕生日より

 彼女と過ごすクリスマスや

 何か人生に爪痕を残そうと

 必死な奴ばかりで

 俺の誕生日の事なんて頭から抜けていた


 それはそうだろよ、

 こんな男の誕生日より

 世間はキリストの誕生日の方が

 大事なのだから



 だから俺は誕生日が嫌いだった、

 クリスマスも....キリストも....

 それにしても誰も客が来ないな

 ・・・クリスマスの日に

 コンビニに来る様な奴なんかいないか


 そう考えていると

「仕事中にサボリっすか〜」っと

 髪がボサボサの

 ショートパンツの女が現れた


 俺はそいつに「寒く無いのかよ」

 っと言ってやると

「自分、まだ若いですから」っと

 訳の分からん返事を自信満々に返された


 あっそ、と

 言葉をサラッと流し

 俺はボンヤリと外を眺めた


「あっ!!お客様が来てるのに

 そんな態度!!

 店長に言いつけますよ!!」


 へいへい

 どうせコイツはそんな事しないね

 もしそんな事をしたら

 俺はコイツのボサボサの髪を

 もっとボサボサにしてやる


 このめんどくさい客の名前は

 涼白 悠伊 (スズシロ ユイ)

 俺より10個も離れている、

 昔、サイクリング部に入っていた時に

 母親の姉の 友達のハトコに

 自転車の乗り方を教えてあげて欲しいと

 頼まれたのが涼白との最初の出会いだった


 母親の妹の名前は

 北神 秋葉 (キタガミ アキハ)

 俺は秋姉といつも呼んでいる


 俺は秋姉に言った

 どうしてそんな赤の他人に

 俺が自転車の乗り方を

 レクチャーしないといけないんだ?と


 秋姉は清々しい顔で

「だってチャリ部なんでしょ?

 自転車マスターなんだから

 それぐらい余裕でしょ」


 秋姉はサイクリング部を

 何だと思ってるんだ、

 とにかく俺は断ろうと思ったが

 この人は一度決めたら

 意地でも俺をそうさせる人物だった


 俺は半ば無理矢理

 自転車の乗り方をその子供に

 教える事になってしまった


「なにボーっとしてるんですか?、

 コレ!、会計してくださいよ雄一」


 俺が昔の思い出に浸っていると

 涼白はそう言って

 持ってきた商品の飲み物を

 カウンターの上に置いていた


 はいはい会計ね、

 そう俺はバーコードリーダーを手に持つと

 カウンターに置かれていた物は

 アルコールの缶ビールだった


「おい、未成年がお酒を飲む気か?」

 そう俺は

 不良大学生に注意をしようとすると

「私19歳なんで、

 未成年じゃ無いですよ〜」

 そう生意気に言ってきた


 俺からすれば19も未成年だ、

 それにお酒は20歳になってからだ、

 どうやら

 誰も客が来ないので

 俺と一緒にコンビニ裏の喫煙スペースで

 仕事サボって飲み物を飲もうとしたようだ


 ・・・・・たく、

 俺は缶ビールを1つ取り

 元の場所に戻し 炭酸水を1つ取った


 こんなガキに

 奢られるのなんてごめんだ

 俺は缶ビールと炭酸水を自分の金で買い

 涼白と2人で仕事をサボる事にした、

 こんな日だ もう誰も来ないだろ

 ただでさえ

 この場所は客数が少ない、

 客が少ない日はコンビニ裏で

 2人でサボった事は何度かあるが

 バレた事は一度も無い


 俺は凉白に

 俺が勝手やった炭酸水を渡し

 俺は自分で買った缶ビールを開け

 2人で乾杯してビールを飲んだ


 ゴクゴクと音を鳴らし

 俺の喉を麦の濃厚な味わいが流れていく、

 そんな俺の飲みっぷりを見て

 涼白は「美味し?」

 っと疑問をぶつけてきた


 あぁ美味いね

 仕事中に仕事をサボって飲むビールは

 普通の人間なら味わえ無い幸福度が増し

 更に美味しくなるね


「ひと口ちょうだい!!」

「ダメ」


 不満そうに炭酸水を飲む涼白、

 誰の金でそれを飲んでると思ってんだ

 少しは俺に感謝して欲しいね


 何かを思い出した涼白は

 ポケットから白い箱を取り出し

 中から細い棒を一本取り出した


「おい不良少女、

 そんな事してると

 学校に言いつけてやるぞ」


「いいですよ別に、それに

 私に最初にタバコ吸わせたのは

 雄一だったじゃん」


 それもそうだが....、俺が26の頃

 16の涼白に

 一本吸うか?と面白半分に

 タバコの吸いさしを手渡すと

 涼白はそれを口につけ

 ゴホゴホとむせていた、

 それを見た俺は

 ゲラゲラと笑っていたな


 涼白はタバコに火を付け、少し吸い込むと

 またゲホゲホとさせていた


「ダメだ、やっぱり吸えないね」


 涼白は

 ひと吸いしかしていないタバコの火を消し

 それを灰皿に捨てた


「一丁前に大人の真似なんてするからだ

 学生は学生らしくしておけ」


「いつか吸えるようになるよ!!、それに

 もう私...学生じゃ無いから...」


 は?、どう言う事だ?

 涼白はなんて言ったんだ今?


 聞き間違いかと思い

 俺はボーッとしていると

「私、大学辞めたんだ」っと言った


 ・・・・・え?

 どうして.....


 唖然とする俺の隙を見て

 涼白は俺の飲んでいた缶ビールを

 手に取り一口飲んだ


「あっ!こら!」

「マズ!!やっぱ私には無理だ」


 涼白は缶ビールを俺に返し

 仕事頑張ってねと言って

 何処かに行ってしまった


 ・・・・・・・・涼白が学校を辞めた...

 どうして....だってアイツは....


 深夜2時のクリスマス、

 俺の誕生日はそうして始まった

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